陸游 麗わしの人、唐琬。(7)春草

84歳、春の行楽に出かけ、沈園を訪れて感傷にふける。

[結婚期間]  21-22歳
1. 釵頭鳳  33歳 偶然の再開
2. 絶句二首其一 63歳 菊採り枕嚢を縫い、
3. 絶句二首其二 63歳 「凄然」とした詩
4. 七言律詩 68歳 妄想はのぞき消しつくそう
5. 沈園 二首其一 75歳 春波綠
6. 沈園 二首其二 75歳 柳老不吹綿

(夢を見ての作)
7. 十二月二日夜夢沈氏遊園亭 二首 其一84歳
      緑は寺の橋を帯して 春水生ず
8. 十二月二日夜夢沈氏遊園亭 二首 其二84歳
      墨痕は猶お壁間の塵に鎖さる
9. 禹寺   是れ古人なるかと
10春草   幽夢の太だしく勿勿たるに


「春草」四首の四
沈家園裏花如錦、半是常年識放翁。
沈家の庭園には、花が錦織のように色とりどりである、その花のうち半分はいつもの年にみかける花だから陸放翁を識っている
也信美人終作土、不堪幽夢太勿勿。

もしかすると 美人もついに土になっていることだろう、寂しい夢を見ることがはなはだしく絶えず我慢しなければならないのだ

沈家の庭園には、花が錦織のように色とりどりである、その花のうち半分はいつもの年にみかける花だから陸放翁を識っている
もしかすると 美人もついに土になっていることだろう、寂しい夢を見ることがはなはだしく絶えず我慢しなければならないのだ


春草
沈家の園の裏に花は錦の如く
半ばは走れ当の年に放翁を識りしならん
也また信なり 美人も終に土と作ること
堪えず 幽夢の太だしく勿勿たるに


(「春草」四首の四)
沈家園裏花如錦、半是常年識放翁

沈家の庭園には、花が錦織のように色とりどりである、その花のうち半分はいつもの年にみかける花だから陸放翁を識っている
常年 いつもの年。毎年。○放翁 晩年陸游は陸放翁と呼ばれていた。

也信美人終作土、不堪幽夢太勿勿
もしかすると 美人もついに土になっていることだろう、寂しい夢を見ることがはなはだしく絶えず我慢しなければならないのだ
○也信 もしかすると・・・・・・だろう。○勿勿 あわただしいこと。絶えず努力をする。



 陸游、歿する1年前の作で八十四歳の老人の作とは思えないみずみずしさである。若き日の回想が感覚を若返らせるのであろうか。六十年以上も前に、いったんは結ばれながら心ならずも別れ、その後ふと出逢いながらことばを交わすこともなく、それが永久の別れとなった。その胸のいたみを詞に詠じたのももう半世紀以上も前のことになる。その間ずっと忘れることなく、おりにふれて回想し、夢にみ、そして詩に詠ずる。いやな思いも、苦しい思いもすべてが夢の中のことになってしまった。