「秋日晩思」 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 28


秋日晩思
桐槿日零落、雨餘方寂蓼。
一葉揺落し秋を知らせる桐の樹、一朝花をつける桂の樹が、日、一日と葉を落す秋の夕暮れ。秋の雨が降りやんだあとにはただ寂蓼がひろがっていた。
枕寒荘蝶去、囱冷胤螢鎖。
うたたねの床は枕もひえびえとして、むかし夢に荘子が見て楽しんだという春の蝶はもう消えていない、目醒めたのでは書を見ようとしてみるのだが、窓はつめたく、晋時代の勤勉の士、車胤が明りにした螢をあつめようにも、もう飛んでいない。
取適琴將酒、忘名牧與樵。
官職を離れていて田舎のわび住いに次第にあってきた。そこに琴と酒でもって心を養われるようであることは、悠々自適の生活を我がものにできている。羊を牧畜している村の童と、山で樵りして野犬たちがあたえてくれた、俗世間のこと、名誉心や野心から脱することができそうだ。
平生有遊舊、一一在烟霄。

ひごろ付き合っていた旧知の友人達は、ひとりびとり、時流に乗ってめぐまれ、栄達していて、いまかすめる空にある人となってはいる。



一葉揺落し秋を知らせる桐の樹、一朝花をつける桂の樹が、日、一日と葉を落す秋の夕暮れ。秋の雨が降りやんだあとにはただ寂蓼がひろがっていた。
うたたねの床は枕もひえびえとして、むかし夢に荘子が見て楽しんだという春の蝶はもう消えていない、目醒めたのでは書を見ようとしてみるのだが、窓はつめたく、晋時代の勤勉の士、車胤が明りにした螢をあつめようにも、もう飛んでいない。
官職を離れていて田舎のわび住いに次第にあってきた。そこに琴と酒でもって心を養われるようであることは、悠々自適の生活を我がものにできている。羊を牧畜している村の童と、山で樵りして野犬たちがあたえてくれた、俗世間のこと、名誉心や野心から脱することができそうだ。
ひごろ付き合っていた旧知の友人達は、ひとりびとり、時流に乗ってめぐまれ、栄達していて、いまかすめる空にある人となってはいる。


秋日晩思
桐槿 日びに零落し、雨余 方に寂蓼たり。
枕は寒くして荘蝶去り、窓は冷くして胤螢鎖ゆ。
適を取る 琴と酒、名を忘る 牧と樵。
平生 遊旧有りしも、一一 煩霄に在り

 


桐槿日零落、雨餘方寂蓼。
一葉揺落し秋を知らせる桐の樹、一朝花をつける桂の樹が、日、一日と葉を落す秋の夕暮れ。秋の雨が降りやんだあとにはただ寂蓼がひろがっていた。
○桐 きりとむくげ。ともに季節の変化に敏感な落葉喬木。○零落 草木の枯れおちること。〇雨余 雨のあと。〇方 ちょうどいま。


枕寒荘蝶去、囱冷胤螢鎖。
うたたねの床は枕もひえびえとして、むかし夢に荘子が見て楽しんだという春の蝶はもう消えていない、目醒めたのでは書を見ようとしてみるのだが、窓はつめたく、晋時代の勤勉の士、車胤が明りにした螢をあつめようにも、もう飛んでいない。
荘蝶 荘子が夢に煤となってたのしんだという故事にもとづく。
李商隠『錦瑟』「莊生曉夢迷蝴蝶、望帝春心托杜鵑。」
( 昔、荘子がで、蝶になった夢をみて、その自由さに暁の夢が覚めてのち、自分の夢か、蝶の夢かとと疑ったという。蝶のように華麗で自由にあなたのもとに飛んでいければいいのに。また、昔の望帝はその身が朽ちて果ててもの春目くその思いを、杜鵑(ホトトギス)に托したという。愛への思い焦がれる執着心はそのように、昼も夜も四六時中、哀鳴するものなのだ。。
 ○莊生 荘周。荘子。 ○ 自分が夢で蝶になっているのか、蝶が夢で自分になっているのかということで迷う。 ○蝴蝶 荘周が夢の中で蝶になり、夢からさめた後、荘周が夢を見て蝶になっているのか、蝶が夢を見て荘周になっているのか、一体どちらなのか迷った。 ○望帝 蜀の望帝。蜀の開国伝説によると、周の末に蜀王の杜宇が帝位に即き、望帝と称した。望帝は部下のものに治水を命じておきながら、その妻と姦通し、その後その罪を恥じて隠遁した。旧暦二月、望帝が世を去ったとき、杜鵑(ホトトギス)が、哀鳴した。  ○春心 春を思う心。相手と結ばれたいとを思う心。 ○春心托杜鵑 相手と結ばれたいとを思う心は、血を吐きながら悲しげに鳴く杜鵑(ホトトギス)に托す。 ・杜鵑:〔とけん〕ほととぎす。血を吐きながら悲しげに鳴くという。)
胤螢 東晋の学者車胤あざなは武子の故事。彼は少年時代、豪が貧しく常には油を得る
ことができなかったので、夏には練嚢に数十の螢火を盛って照明とし、勉学にいそしんだという(「晋書」車胤伝)。東晋の孫康が雪のあかりで勉強した故事と共に名高い。


取適琴將酒、忘名牧與樵。
官職を離れていて田舎のわび住いに次第にあってきた。そこに琴と酒でもって心を養われるようであることは、悠々自適の生活を我がものにできている。羊を牧畜している村の童と、山で樵りして野犬たちがあたえてくれた、俗世間のこと、名誉心や野心から脱することができそうだ。
取適 取は資料とする、というぐらいの意味。適は自由。○忘名 北魂の顔之推の「顔氏家訓」に「上土は名を忘れ、中士は名を立て、下士は名を窃む。」と見える。忘名は、名誉心から超脱することをいう。


平生有遊舊、一一在烟霄。
ひごろ付き合っていた旧知の友人達は、ひとりびとり、時流に乗ってめぐまれ、栄達していて、いまかすめる空にある人となってはいる。
〇一一 どれもこれも。○烟霄 かすめる空。朝廷乃至は高き地位のたとえである。