「幽居冬暮」 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集31

幽居冬暮
羽翼嶊残日、郊圃寂寞時。
大空翔て天にも昇れると頼りにしていた羽が、損いくだけ、官を退いて幽居する冬の一日。郊外の田畑には人の気配なく寂寞としている。
暁鶏驚樹雪、寒鶩守冰他。
暁の時をつげる鶏は昨夜降りしきった雪が樹々を白く染め、景色が変わったのに驚いて鳴き、寒の家鴨は、氷の張りつめた池を守るかのように動かない。
急景忽云暮、頽年寝己哀。
時の移ろいはとても速く、年の暮になってしまった。寄る年波は、だんだんに私の体力と気力をくじき、私を衰弱させていく。
如何匡国分、不興夙心期。

それにしても一体、どうしたというのだろう。国のために役立つ士人の本分と、かつてそれを志した私の希望とが、こんなにもくい違ってしまったというのは。


大空翔て天にも昇れると頼りにしていた羽が、損いくだけ、官を退いて幽居する冬の一日。郊外の田畑には人の気配なく寂寞としている。
暁の時をつげる鶏は昨夜降りしきった雪が樹々を白く染め、景色が変わったのに驚いて鳴き、寒の家鴨は、氷の張りつめた池を守るかのように動かない。
時の移ろいはとても速く、年の暮になってしまった。寄る年波は、だんだんに私の体力と気力をくじき、私を衰弱させていく。
それにしても一体、どうしたというのだろう。国のために役立つ士人の本分と、かつてそれを志した私の希望とが、こんなにもくい違ってしまったというのは。

居 冬の暮
羽巽 嶊残する日、郊園 寂寞の時。
暁鶏は樹雪に驚き、寒鶩は冰池を守る。
急景 忽ちに云に暮れ、頽年 寝く己に哀う。
如何ぞ 国を匡すの分、夙心と与に期せざるや。

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幽居冬暮
幽居 人知らぬしずかなすまい。郊外の竹林の奥まったところ、隠遁生活を連想させる。
詩の内容からすると李商隠が晩年に故郷で病にふせた頃の作であろう。母の喪を30歳過ぎに3年余り、故郷で過ごした時の作品という説が多いが、李商隠30代の作品とは全く違って、隠遁者になっている。


羽翼嶊残日、郊圃寂寞時。
大空翔て天にも昇れると頼りにしていた羽が、損いくだけ、官を退いて幽居する冬の一日。郊外の田畑には人の気配なく寂寞としている。
羽翼 はね。往往援助するものの意に用いられ、ここも多少そのニュアンスを含ませていると思われる。
この時代役人は守旧派と改革派のどちらかに属していないとやっていけなかった。その頼りにしていた人物が失脚したことを意味する。○嶊残 くだけそこなう。



暁鶏驚樹雪、寒鶩守冰他。
暁の時をつげる鶏は昨夜降りしきった雪が樹々を白く染め、景色が変わったのに驚いて鳴き、寒の家鴨は、氷の張りつめた池を守るかのように動かない。
寒驚 驚はあひる。家鴨。



急景忽云暮、頽年寖己哀。
時の移ろいはとても速く、年の暮になってしまった。寄る年波は、だんだんに私の体力と気力をくじき、私を衰弱させていく。
急景 すみやかに経過する時間。貴は日のひかり。忽の字は、歳の字に作るテキストもあるが、対句としてそれはおかしい。○云暮 一年の時間が末に近づくこと。云はここに。「詩経」小雅小明に「歳費に云に暮れん」。陶淵明「桃花源詩」などにも「云~」ここにと使う。○頽年 よる年波。○ 次第に。



如何匡国分、不興夙心期。
それにしても一体、どうしたというのだろう。国のために役立つ士人の本分と、かつてそれを志した私の希望とが、こんなにもくい違ってしまったというのは。
匡国分 分はつとめ、職責。○夙心 宿志、以前からいだいていた志。○ あう。予め取決めた時にあう。


 李商隠は文人である。したがって、、自分では何もできない。これは、六朝期を以降、武人とまったく剣を持たない、戦場に行かない詩人がでている。多くの詩人がそうなっていったのである。戦場に送り出す「檄文」を軍人たる詩人が詠ったのである。多くは軍事参謀でもあった。兵法、と文学が一体化していた。
 時代を経て、李商隠は、誰かに頼らないとできない。やる気はいくらでもある。それをどこで生かせばいいのか、ともどかしさを訴えているのだ。