紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 32 「少年」李商隠

少年
外戚平羌第一功、生年二十有重封。
外戚はその身内から皇后を出して厚遇される貴族の家柄、その上、父は羌討征に第一の勲功あった名将軍なのである、生まれたのがめぐまれた家系であった少年は何にも勲功なしで年二十歳の若さで、重ねて封禄を増される恩命を受けたのだ。
直登宣室螭頭上、横過甘泉豹尾中。
この世に恐いものなしの貴公子は、門番がいても素通りするし、遠慮も、臆面もなく天子の正室の前にも行くし、暁の彫物のある宮庭のきざはしに登る。また甘泉離宮へ行幸する豹の尾のはたを立てた天子の行列を強引に横切ったりする。
別館覚来雲雨夢、後門歸去蕙蘭叢。
その貴公子はまた妾のいる寝所にも行き、女と淫行勝手な振る舞い、眠りから醒めて夕刻、妓女の香草の叢に淫らに戯れてから帰ってゆく。
㶚陵夜猟随田竇、不識寒郊自轉蓬。

夜はまた猟をするとて、おなじ外戚の田と竇をおともにしてその文帝の陵墓で猟を楽しんでいる。(その陵墓の文帝は飛将軍が異民族からおそれられ北の守りをしていたのを評価されず不遇に終わったのだ。)めぐまれた貴公子は、才能ありながらも世に認められず、寒寒とした郊外の野原を根本からちぎれて飛ぶ転び蓬のように、独りころがってゆく者のあることなどを知っていないだろう。



外戚はその身内から皇后を出して厚遇される貴族の家柄、その上、父は羌討征に第一の勲功あった名将軍なのである、生まれたのがめぐまれた家系であった少年は何にも勲功なしで年二十歳の若さで、重ねて封禄を増される恩命を受けたのだ。
この世に恐いものなしの貴公子は、門番がいても素通りするし、遠慮も、臆面もなく天子の正室の前にも行くし、暁の彫物のある宮庭のきざはしに登る。また甘泉離宮へ行幸する豹の尾のはたを立てた天子の行列を強引に横切ったりする。
その貴公子はまた妾のいる寝所にも行き、女と淫行勝手な振る舞い、眠りから醒めて夕刻、妓女の香草の叢に淫らに戯れてから帰ってゆく。
夜はまた猟をするとて、おなじ外戚の田と竇をおともにしてその文帝の陵墓で猟を楽しんでいる。(その陵墓の文帝は飛将軍が異民族からおそれられ北の守りをしていたのを評価されず不遇に終わったのだ。)めぐまれた貴公子は、才能ありながらも世に認められず、寒寒とした郊外の野原を根本からちぎれて飛ぶ転び蓬のように、独りころがってゆく者のあることなどを知っていないだろう。


少年
外戚 完を平らぐ 第一の功、生年 二十にして重封有り。
直ちに宣窒 櫨頭の上に登り、横ままに過る甘泉 豹尾に中る。
別館に覚め来る 芸雨の夢、後門より帰り去る 薫蘭の叢。
濁陵の夜猟 田貴に随い、識らず 寒郊に自ら転蓬するを。




少年
少年の解説 この詩は漢代の貴公子の橋態の叙述に託し、唐の時代の外戚子弟のほしいままなふるまいを諷刺したものであるが、李商隠の晩唐の時期と後漢の時期の共通点に外戚がある。権力が弱くなって国をうまく抑えられなくなると力の強い豪族、諸侯に頼るというのは、法則のようなものである。日本でも古代から江戸末期まで、古今東西、この法則は当てはまる。権力という者均等化されておれば、絶対君主、絶対権力者を生むし、その権力地盤を均等にすれば長期的にその権力を維持できる。このメカニズムは権力構造における法則なのである。

 武力、資金力はあっても権威のなかった者たちに皇帝との姻戚関係ができると、この詩の貴公子の様なものが馬鹿が出るもの法則の様なものである。李商隠は、この朝廷、唐王朝の末期を悟ったのであろう。
 

外戚平羌第一功、生年二十有重封。
外戚はその身内から皇后を出して厚遇される貴族の家柄、その上、父は羌討征に第一の勲功あった名将軍なのである、生まれたのがめぐまれた家系であった少年は何にも勲功なしで年二十歳の若さで、重ねて封禄を増される恩命を受けたのだ。
外戚 皇后の親族。○平羌第一功 後漢の時代の有力な外戚馬援(紀元前一四-紀元四九年)の子、馬防を指。 防は革帝の建初四年(七九年)蘇陽侯に封ぜられ、西荒を平定した功を以て、邑一千三百五十戸を増された。○重封 食呂の戸数を増されること。

直登宣室螭頭上、横過甘泉豹尾中。
この世に恐いものなしの貴公子は、門番がいても素通りするし、遠慮も、臆面もなく天子の正室の前にも行くし、暁の彫物のある宮庭のきざはしに登る。また甘泉離宮へ行幸する豹の尾のはたを立てた天子の行列を強引に横切ったりする。
直登 挨拶ぬきでただちに挙る。○宣室 漢朝の未央宮前殿の天子の正室。○螭頭上 宮殿の赤くぬりこめられた庭、丹斑の上階を螭頭という。螭は額に角を持たない龍のことを言う。龍から角を取った感じだ。山や沢に棲む小さな龍で、色は赤や白、あるいは蒼色のものがいる。螭はとりわけ岩や木陰などの湿った場所を好むという。恐らくその階段の手摺に螭の彫物がしてあったのだろう。○横過 きまりを無視して横暴に通り過ぎる。○甘泉 漢の離宮の名。○豹尾 天子行幸の時、その属事の最後尾の事に、豹の尾のはたを飾る。そこから前は通行止めであるというしるし。

別館覚来雲雨夢、後門歸去蕙蘭叢。
その貴公子はまた妾のいる寝所にも行き、女と淫行勝手な振る舞い、眠りから醒めて夕刻、妓女の香草の叢に淫らに戯れてから帰ってゆく。
別館 妾のいる寝所。○覚来 覚はひとねむりすることであり、また夢から醒めることでもある。○帰去 かえる。○雲雨夢 男女の愛のまじわりを意味する。○蕙蘭叢 蕙も蘭も共に香草で、美女の喩えとなる。美女の叢という表現は裸体を意味する。



㶚陵夜猟随田竇、不識寒郊自轉蓬。
夜はまた猟をするとて、おなじ外戚の田と竇をおともにしてその文帝の陵墓で猟を楽しんでいる。(その陵墓の文帝は飛将軍が異民族からおそれられ北の守りをしていたのを評価されず不遇に終わったのだ。)めぐまれた貴公子は、才能ありながらも世に認められず、寒寒とした郊外の野原を根本からちぎれて飛ぶ転び蓬のように、独りころがってゆく者のあることなどを知っていないだろう。
㶚陵 漢の文帝劉恆(紀元前203-前157年)陵墓。長安の東南にある。〇夜猟 㶚陵夜猟 漢の「飛」将軍が、夜、山中に射猟して文帝に「君が高祖の時代に生まれていればなあ」と不遇なままで終わったことさす。満陵の尉に叱責された故事をふまえる。〇田竇 漢の武安侯田蚡(未詳-紀元前31年)と魏其侯竇嬰(未詳-紀元前131年)のこと。前者は孝景皇后の弟。後者は孝文后の従兄の子。共に漢代の有力な外戚貴族である。○轉蓬 風にころがって行く野草。魏の曹植(192-232年)の雑詩其二に「転蓬は本根を離れ、諷颻として長風に随う。」と。杜甫の野人送朱桜「この日 新しきを嘗めて転蓬にまかす。」など。


少年  李商隠
七言律詩
○韻 功、封、中、叢、蓬。