kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 40 「哭劉司戸二首其二」李商隠 812~858



哭劉司戸二首 其二
有美扶皇運、無誰薦直言。
世の中広いが道端であったであって心通じた人なんてあるものではないが、勇気をもって正しいことを主張できる人に、皇帝の命運を支えることだできる唯ひとりの人だ、だが直言して推挙する人物は誰もいなかった。
己爲秦逐客、復作楚冤魂。
秦の追放令を食らって長安を追われたうえに、濡れ衣を着せられて死んだ屈原は、楚の地に非業の死を遂げたと同じようなことになってしまった。
湓浦應分振、荊江有會源。
湓浦では長江はいくつにも分かれているように官僚が党派により争っている。上流の荊江では多くの水流が一つに集まっているように宦官に対して結集しないといけないのだ。
併將添恨涙、一酒問乾坤。
せめて長江の水に恨みのこの涙を添え、そのすべてを地に洗い流して天と地に是非を問いただそう。


世の中広いが道端であったであって心通じた人なんてあるものではないが、勇気をもって正しいことを主張できる人に、皇帝の命運を支えることだできる唯ひとりの人だ、だが直言して推挙する人物は誰もいなかった。
秦の追放令を食らって長安を追われたうえに、濡れ衣を着せられて死んだ屈原は、楚の地に非業の死を遂げたと同じようなことになってしまった。
湓浦では長江はいくつにも分かれているように官僚が党派により争っている。上流の荊江では多くの水流が一つに集まっているように宦官に対して結集しないといけないのだ。
せめて長江の水に恨みのこの涙を添え、そのすべてを地に洗い流して天と地に是非を問いただそう。
 


其の二
有美は皇運を扶するも、誰の直言を薦むるも無し。
己に秦の逐客と為り、復た楚の冤魂と作る。
湓浦 応に派を分かつべし、荊江 源を会する有り。
併せて将て恨涙を添え、一たび洒ぎて乾坤に間わん。



有美扶皇運、無誰薦直言。
 世の中広いが道端であったであって心通じた人なんてあるものではないが、勇気をもって正しいことを主張できる人に、皇帝の命運を支えることだできる唯ひとりの人だ、だが直言して推挙する人物は誰もいなかった。
有美 『詩経』鄭風・野右曼草に
野右曼草   零露溥兮
有美一人   清揚婉兮
邂逅相遇   適我願兮
「美なる一人有り、清揚にして婉たり」とある。道で出会った恋の嬉しさを詠うものである。これも男の洒落であろう。「有美一人」の最初の二字を取った語。人格、能力を備えた人をいう。○皇運 皇帝の命運。○直言 諌言を呈する臣。一句は劉責が賢良方正能直言極諌科に落第させられたことをいう。


 
己爲秦逐客、復作楚冤魂。
秦の追放令を食らって長安を追われたうえに、濡れ衣を着せられて死んだ屈原は、楚の地に非業の死を遂げたと同じようなことになってしまった。
秦逐客 秦の始皇帝がまだ秦王であった紀元前237年、嫪毐(ロウアイ)の乱各地から秦に入っていた遊説の士を捜索して追放したことがあった。のちに丞相となる李斯は自分も楚の人であったので、上書して人材は広く集めるべきであると論じ、そこで「逐客令」は廃止された(『史記』秦始皇本紀)。ここでは秦の地である長安と結びつけて、劉蕡が長安から追われたことと重ねている。○楚冤魂 楚の屈原は冤罪を着せられて楚の国から追放され、汨羅に身を投じた。
天末懷李白
涼風起天末,君子意如何?
鴻雁幾時到,江湖秋水多。
文章憎命達,魑魅喜人過。
應共冤魂語,投詩贈汨羅。
杜甫「天末に李白を懐う」詩に李白がすでに死んだかと思い、「応に冤魂と共に語るべし、詩を投じて汨羅に贈らん」、黄泉の国で屈原と語り合っていることだろうという。ここでは劉蕡が都を遠く離れた南方の地で無実のまま死んだことと重ねる。



湓浦應分振、荊江有會源。
湓浦では長江はいくつにも分かれているように官僚が党派により争っている。上流の荊江では多くの水流が一つに集まっているように宦官に対して結集しないといけないのだ。
湓浦 江州薄陽(江西省九江市)の地名。塩水が長江に合流するあたり。「劉蕡を哭す」詩に「漁浦より書来たりて秋雨翻る」とあるのを劉蕡の訃報とし、湓浦で歿したとする説がある。とすれば柳州から召還されて都に戻る途上で死んだことになる。○分振 振は支流。長江は薄陽に至って九つの流れに分かれる(『漢書』地理志)。○荊江 江州より上流の荊州(湖北省荊州市)付近を流れる長江の称。○会源 長江は荊州のあたりで洞庭湖からの流れ込みをはじめとして、湖南省を流れてきた諸川が合流する。この二句は、劉蕡のまわりに集まっていた人々が次第に遠ざかっていくことをいうのと宦官に向かうべき恨みを官僚の派閥争いをしていることを示している。どうして、官僚が一致団結しないのか、と訴えている。



併將添恨涙、一洒問乾坤。
せめて長江の水に恨みのこの涙を添え、そのすべてを地に洗い流して天と地に是非を問いただそう。
併将一句 幾つもの流れが一つに合わさったり、また分流しながら流れゆく長江の水に、劉蕡の死を悼む涙を添えようの意もある。李商隠「涙」紀頌之漢詩ブログ李商隠33にいくつものの涙を詠っている。「哭劉司戸二首其二」では正論主張を中央の朝廷の中で、少数派になっていることの悔し涙か。○乾坤 天地。「乾坤に問う」とは、劉蕡が正しいのかどうかを問うとしながら、天は味方しないのかを問うの意。



○詩型・押韻 五言律詩。言、源、魂、坤。