紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 44 「涼思」李商隠
847年36歳。桂林に来て少し落ち着いたのか、杜甫の、「江村」「水檻遣心二首」などの心境であったのか。


涼思  李商隠44
客去波平檻、蝉休露満枝。
波立つ水は欄干のもとまで漲っている。先刻まで鳴きしきっていた蝉の声はピタッとやみ、樹々の枝には露がいっぱいにひかり始めた。
永懐當此節、倚立自移時。
久しく続いた憂鬱は、悲愁の季節にあって一層深まり、私は大樹に一人凭(もた)れて、なんとなく時を過してしまうのである。
北斗兼春遠、南陵寓使遅。
北斗七星は過ぎ去った春とともにはるかになんもかんも遠のき、この南陵へ手紙のことづけられるのも、じれったく遅くなったようだ。
天涯占夢数、疑誤有新知。

この南の地の果てで、私は何度も夢占いをしてみたのだ、たわむれの占いを信じものである。吉とでて、新たに私の考えを認知してくれそうな気がしてくるのだ。



波立つ水は欄干のもとまで漲っている。先刻まで鳴きしきっていた蝉の声はピタッとやみ、樹々の枝には露がいっぱいにひかり始めた。
久しく続いた憂鬱は、悲愁の季節にあって一層深まり、私は大樹に一人凭(もた)れて、なんとなく時を過してしまうのである。
北斗七星は過ぎ去った春とともにはるかになんもかんも遠のき、この南陵へ手紙のことづけられるのも、じれったく遅くなったようだ。
この南の地の果てで、私は何度も夢占いをしてみたのだ、たわむれの占いを信じものである。吉とでて、新たに私の考えを認知してくれそうな気がしてくるのだ。



涼恩
客去って波は檻と平しく、蝉休みて露は枝に満つ。
永懐 此の節に当り、倚立 自ら時を移す。
北斗は春と兼に遠く、南陵に使いを寓すること遅し。
天涯 占夢数々(しばしば)なり、疑誤す 新知有りやを。




涼思 涼しき夕べの思い。
江村     杜甫
淸江一曲抱村流,長夏江村事事幽。
自去自來梁上燕,相親相近水中鴎。
老妻畫紙爲棊局,稚子敲針作釣鈎。
多病所須唯藥物,微躯此外更何求。


客去波平檻、蝉休露満枝。
いままで話し合っていた客人も帰り、水ぎわの座敷で、波立つ水は欄干のもとまで漲っている。先刻まで鳴きしきっていた蝉の声はピタッとやみ、樹々の枝には露がいっぱいにひかり始めた。
波平檻 水が満ちて来て波が檻の高さと等しくなる。○ 欄干。○ 成虫になった蝉は、夜露だけを食べるとされる。漢詩ブログ李商隠29「蝉」参照

永懐當此節、倚立自移時。
久しく続いた憂鬱は、悲愁の季節にあって一層深まり、私は大樹に一人凭(もた)れて、なんとなく時を過してしまうのである
永懐 ずっと続いて来た、そしてこれからも続くであろうもの思い。党派に別れての政争と宦官による陰湿な朝廷支配のことを言う。〇倚立 倚はもたれかかる。



北斗兼春遠、南陵寓使遅。
北斗七星は過ぎ去った春とともにはるかになんもかんも遠のき、この南陵へ手紙のことづけられるのも、じれったく遅くなったようだ。
北斗 北斗七星によって季節、月日、時を知らせる星である。○ 何何とともに。接続の辞。○南陵 地名、今の安徽省燕湖の附近。○寓使 寓は寄せると同じ、手紙をよせる。



天涯占夢数、疑誤有新知。
この南の地の果てで、私は何度も夢占いをしてみたのだ、たわむれの占いを信じものである。吉とでて、新たに私の考えを認知してくれそうな気がしてくるのだ。
占夢数 占夢はゆめうらない。数はしばしば。○疑誤 まどわせ誤らす。劉未の蒋嘩の「後漢書」察邑伝に「俗儒は穿馨しで後学を疑誤す。」と見える。ここは占いが自分をまどわすという意味。○新知 新たな知己。自分を認知してくれる