異俗二首其一 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-73
847年36歳 桂林。


異俗二首 (時従事嶺南) 其一
鬼瘧朝朝避、春寒夜夜添。
毎朝、朝の行事としておこりを呪いで封じ込めるというこの地、夜ごとのこととして男女の情欲については余寒が身にしみている。
未驚雷破柱、不報水齊簷。
雷が落ちて大柱を裂いたが慣れっこになっているのか驚かない、大水になり水が欄干の軒端まで達しても知らぬ顔をしている。
虎箭侵膚毒、魚鉤刺骨銛。
ここの虎を射る矢は肌を侵しただけで毒がまわる、魚が大きくても捕る釣針はもりのようで骨まで突き通す。
鳥言成諜訴、多是恨彤襜。
鳥が鳴いて騒がしいのかと思うと、ここの異民族の住民が訴えをしている声なのだ、それも大勢が地方長官への恨みを好き勝手に言ってくるのだ。


毎朝、朝の行事としておこりを呪いで封じ込めるというこの地、夜ごとのこととして男女の情欲については余寒が身にしみている。
雷が落ちて大柱を裂いたが慣れっこになっているのか驚かない、大水になり水が欄干の軒端まで達しても知らぬ顔をしている。
ここの虎を射る矢は肌を侵しただけで毒がまわる、魚が大きくても捕る釣針はもりのようで骨まで突き通す。
鳥が鳴いて騒がしいのかと思うと、ここの異民族の住民が訴えをしている声なのだ、それも大勢が地方長官への恨みを好き勝手に言ってくるのだ。



其の一
鬼瘧(きぎゃく) 朝朝避け、春寒 夜夜添う。
未だ雷の柱を破るに驚かず、水の軒に斉しきを報ぜず。
虎箭(こせん) 膚を侵す毒、魚鉤(ぎょこう) 骨を刺す銛(もり)。
鳥言 諜訴(ちょうそ)を成す、多くは是れ 彤襜(とうせん)を恨む。




異俗二首 (時従事嶺南)  其一
嶺南 南嶺山脈は歴史的に天然の障壁となっており、嶺南(広東省および広西チワン族自治区)と中原の間の交通の妨げであった。嶺南には中原の政治的支配や文化が十分に及ばない時期もあり、華北の人間は嶺南を「蛮夷の地」と呼んできた。唐朝の宰相・張九齢が大庾嶺を切り開いて「梅関古道」を築いて以後、嶺南地区の開発がようやく進んできた。唐代には嶺南道が置かれていた。題下の自注にいうように、李商隠は桂管観察使の鄭亜に招かれ、その掌書記として847年大中元年五月、桂林(広西壮族自治区桂林市)に赴任、翌年二月まで勤めた。自注の下に更に「偶たま昭州に客す」四字がある本に従えば、桂林在任中に昭州(広西壮族自治区平楽県)に出張した折の作である。


鬼瘧朝朝避、春寒夜夜添。
毎朝、朝の行事としておこりを呪いで封じ込めるというこの地、夜ごとのこととして男女の情欲については余寒が身にしみている。
鬼瘧 南方の風土病、瘴癘、マラリア。古代の帝王栃項氏の子が死んで「瘧鬼」になったという伝説がある(『後漢書』礼儀志の注などが引く『漢旧儀』)。鬼瘧を避けるとは、病気よけの呪術をすること。一定の時間をおいて発熱と悪寒を繰り返すので祈祷により抑えるといわれた。



未驚雷破柱、不報水齊簷。
雷が落ちて大柱を裂いたが慣れっこになっているのか驚かない、大水になり水が欄干の軒端まで達しても知らぬ顔をしている。
未驚一句 雷が柱に落ち衣冠が焦げたが、平然として書き続けたという話が見える。○不報一句 「簷」は「楣」に同じで軒下でなく、欄干などの飛び出した部分の軒端下をさす。杜甫「江漲る」詩に
江漲柴門外,兒童報急流。
下牀高數尺,倚杖沒中洲。
細動迎風燕,輕搖逐浪鷗。
漁人縈小楫,容易拔船頭。
「江は漲る柴門の外、児童 急流を報ず。林を下れば高さ数尺、杖に倚れば中洲を役す」。二句は桂州の異様な気候風土、それに平然としている人々に対する奇異の念をいう。



虎箭侵膚毒、魚鉤刺骨銛。
ここの虎を射る矢は肌を侵しただけで毒がまわる、魚が大きくても捕る釣針はもりのようで骨まで突き通す。
虎箭 箭は矢。望蛮という種族は矢に毒薬を塗り、人に当たればたちどころに死ぬという。○魚鉤 魚鉤は釣り針。「鈷」はもり、またもりのように鋭いもの。



鳥言成諜訴、多是恨彤襜。
鳥が鳴いて騒がしいのかと思うと、ここの異民族の住民が訴えをしている声なのだ、それも大勢が地方長官への恨みを好き勝手に言ってくるのだ。
鳥言 異民族の話すことばを鳥にたとえる。韓愈「区冊を送る序」に陽山(広東省陽山県)に左遷された時のことを「小吏十余家、皆な鳥言東面。始めて至るときは言語通ぜず、地に画きて字を為す」。古くは『孟子』膝文公篇上に「今や南蛮駿舌の人、先王の道を非とす」と、南方方言をモズの声にたとえる。○諜訴 「訴」の字、底本は「詐」に作るが諸本によって改める。「諜」は「牒」に通じ、訴状をいう。南斉・孔椎珪「北山移文」(『文選』巻四三)に「牒訴陛像として其の懐いを装む」。○彤襜 地方長官の車を覆う赤いとばり。そこから地方長官を指す。仕事の大部分は税の取り立てであるため、生活習慣が違うので従わない様子をあらわしている。
 


○詩型 五言律詩。
○押韻 添、箸・錨・裾。