異俗二首其二 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-74
847年36歳 桂林。


其 二
戸盡懸秦網、家多事越巫。
家々は秦の法、税と兵役の網がかかっているのだが、本当の網は異民族の巫女の祈祷を信じている。
末曾容獺祭、只是縦猪都。
取った魚を獺の祭壇に祭ることもしないで、いきなり食べる、猪八戒の集まりで示しがついていない。
點封連鼇餌、捜求縛虎符。
あちらでは大亀を捕まえるための餌の数を点検して数えなおしている。こちらでは、トラを捕縛する符があるらしくそれを大探ししている
賈生兼事鬼、不信有洪爐。
あの文人の賈生も兼ねて鬼神に仕えていたというが、万物は大宇宙からなるすべての法則、自然の法則によって動かされているということを信じる事など考えに及ばないのであろう。


家々は秦の法、税と兵役の網がかかっているのだが、本当の網は異民族の巫女の祈祷を信じている。
取った魚を獺の祭壇に祭ることもしないで、いきなり食べる、猪八戒の集まりで示しがついていない。
あちらでは大亀を捕まえるための餌の数を点検して数えなおしている。こちらでは、トラを捕縛する符があるらしくそれを大探ししている
あの文人の賈生も兼ねて鬼神に仕えていたというが、万物は大宇宙からなるすべての法則、自然の法則によって動かされているということを信じる事など考えに及ばないのであろう。



其の二
戸は尽く秦網(しんもう)を 懸け、家は多く越巫(えつふ)に事う。
未だ曾て 獺祭(だつさい)を容れず、ただ是 猪都(ちょと)を縦いままになす。
点対す 鼇(ごう)を連ぬる餌、捜求す虎を縛る符。
賈生兼ねて鬼に事え、洪爐(きょうろ)有るを信ぜず。




戸盡懸秦網、家多事越巫。
家々は秦の法、税と兵役の網がかかっているのだが、本当の網は異民族の巫女の祈祷を信じている。
秦網 戸ごとに漁網を掛けていくように、全土を覆った秦の苛酷な法網をいう「秦網」という語を用いて「越巫」と対にしたもの。同時に中原の支配がこの地までは及んでいないことも暗示する。○越巫 「越」は長江の南の異民族及びその地域。広西、広東まで含み、百越と総称される。『史記』孝武本紀に「越人の俗は鬼を后ず」(封禅書にも同じ記事が見える)。


末曾容獺祭、只是縦猪都。
取った魚を獺の祭壇に祭ることもしないで、いきなり食べる、猪八戒の集まりで示しがついていない。
獺祭 かわうそが取った魚を祭るかのように並らべること。『礼記』王制に「瀬は魚を祭りて然る後に虞人(山沢監督の役人)沢梁に入る」。また月令にも「孟春の月、:…・瀬は魚を祭る」。王制では自然の恵みを大切にする教えをいうが、この地の人々はかわうそが魚を陳列する間もなく食べてしまうの意。ちなみに典故を多用する李商隠の手法は瀬祭魚と称された。○猪都 いのししに似た怪物。『酉陽雑狙』諾単記下に見える。○点対 程夢星の注では「検点」を意味する方言かと推測する。ならば「点検」の意。



點封連鼇餌、捜求縛虎符。
あちらでは大亀を捕まえるための餌の数を点検して数えなおしている。こちらでは、トラを捕縛する符があるらしくそれを大探ししている
達篭 「竃」はおおがめ。『列子』湯間に「龍伯の国に大人有り、……一たび釣りて六竃を連ぬ」。○虎符 虎よけのためのおふだ。



賈生兼事鬼、不信有洪爐。
あの文人の賈生も兼ねて鬼神に仕えていたというが、万物は大宇宙からなるすべての法則、自然の法則によって動かされているということを信じる事など考えに及ばないのであろう。
賈生兼事鬼、不信有洪爐 「漢の孝文帝劉恒(紀元前202-157年)に仕えた文人賈誼(紀元前201―169年)のこと。洛陽の人。諸吉家の説に通じ、二十歳で博士となった。一年後、太中大夫すなわち内閣建議官となり、法律の改革にのりだして寵任されたが、若輩にして高官についたことを重臣たちに嫉まれ、長沙王の傅に左遷された。のち呼び戻され、孝文帝の鬼神の事に関する質問に答え、弁説して夜にまで及び、孝文帝は坐席をのりだして聴き入ったと伝えられる。その後、孝文帝の少子である梁の懐王の傅となり、まもなく三十三歳を以て死んだ。屈原を弔う文及び鵩(みみずく)の賦が有名。賈誼が長沙にいた時、「目鳥 其の承塵に集まる」。目鳥はふくろうに似た鳥というが、詩文のなかのみにあらわれ、その家の主人の死を予兆する不吉な鳥とされる。賈誼はその出現におびえ、「鵩鳥の賦」(『文選』巻一三)を著した
政治上の意見よりも怪奇辞を聞こうとして御前に呼び出されたことに同情している。
洪爐 大きな溶鉱炉。世界全体を比喩する。天地を大きな火床に喩えた、《荘子、大宗師第六》「今一以天地為大爐,以造化為大冶,惡乎往而不可哉!。」(今、一たび天地を以て大爐(爐は罏に同じ)と為し、造化を以て大冶と為さば、惡【いずく】にか往くとして可ならざらん」“今、天地をおおきな火床に考え、造物主を立派な鍛冶師とみたてたならば、(つまり、造物主に思いを任せて)何に生れ変わっても良いではないか”に基づく。 
賈誼「鵬鳥の賦」(『文選』巻一三)に「且つ夫れ天地を鐘と為し造化を工と為す」。二句は世界の運行には法則があることなど無視して、超自然にのめり込んでいるの意。


○詩型 五言律詩。
・押韻 巫・都・符・墟。


其の一 尾聯で「鳥言成諜訴、多是恨彤襜。」(鳥言 諜訴(ちょうそ)を成す、多くは是れ 彤襜(とうせん)を恨む。
)は、其の二の戸「盡懸秦網、家多事越巫。」(戸は尽く秦網(しんもう)を 懸け、家は多く越巫(えつふ)に事う。
)と位置を受けているのである。とおして読んでいくと地方長官の原住民に対する過酷な税、労役について、私腹を肥やしていることを感じさせるものとなっている。
李商隠はある時は芸妓、恋歌、エロを用いて、また、故事、祭事、この詩のように異民族の生活の描写を利用して、政府批判をしたのだ。