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即日 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-89

856年 45歳 長安

即 日
即日にもいろいろある。
一歳林花即日休、江閒亭下悵淹留。
一年思い続けていた、数いる妓女の一人に思いを寄せていたがきょうやっと喜びを感じる日となるのだ。滻水と㶚水の間にある亭にとまって長らく滞在することはがっかりしていたのだ。
重吟細把眞無奈、已落猶開未放愁。
なんども恋歌を吟じ、細腰をだいたのだが、でも本当のところどうしようもないのだ。恋する気持ちは消沈したり、やはりまだ恋しいと花開く気分になる、愁いの気持ちを放つことができないでいるのだ
山色正來銜小苑、春陰只欲傍高樓。
山の緑も本格的なものになり、人の気持ちもその気になって亭の中庭の木々草木の中に男女が横たわっている。ただ男女の情交がしたいと思いつつ高楼の傍らにたたずんでいる。
金鞍忽散銀壷滴、更醉誰家白玉鉤。

黄金の鞍をきらめかせて貴公子や、富豪たちは事を済ませて消えていく、後に残るのは銀の漏刻の水音だけ聞こえてくる。でも、外に出ると次はどこの女のところで酔うことにするかとしている、白玉、宝玉をちらつかせてものにして行くのだ。


即 日

一歳の林花即日に休む、江間 亭下 淹留 悵とす。

重ねて吟じ細を把るも真に奈ともする無く、己に落ち猶お開きて末だ愁いを放たず。

山色 正に来たりて小苑を街み、春陰 只だ高楼に傍わんと欲す。

金鞍 忽ち散じて銀壷滴る、更に誰が家の白玉をして鉤に酔わん。




訳註と解説

(本文)
即 日
一歳林花即日休、江閒亭下悵淹留。
重吟細把眞無奈、已落猶開未放愁。
山色正來銜小苑、春陰只欲傍高樓。
金鞍忽散銀壷滴、更醉誰家白玉鉤。

(下し文)
一歳の林花即日に休む、江間 亭下 淹留 悵とす。
重ねて吟じ細を把るも真に奈ともする無く、己に落ち猶お開きて末だ愁いを放たず。
山色 正に来たりて小苑を街み、春陰 只だ高楼に傍わんと欲す。
金鞍 忽ち散じて銀壷滴る、更に誰が家の白玉をして鉤に酔わん。

(現代語訳)
一年思い続けていた、数いる妓女の一人に思いを寄せていたがきょうやっと喜びを感じる日となるのだ。滻水と㶚水の間にある亭にとまって長らく滞在することはがっかりしていたのだ。
なんども恋歌を吟じ、細腰をだいたのだが、でも本当のところどうしようもないのだ。恋する気持ちは消沈したり、やはりまだ恋しいと花開く気分になる、愁いの気持ちを放つことができないでいるのだ
山の緑も本格的なものになり、人の気持ちもその気になって亭の中庭の木々草木の中に男女が横たわっている。ただ男女の情交がしたいと思いつつ高楼の傍らにたたずんでいる。
黄金の鞍をきらめかせて貴公子や、富豪たちは事を済ませて消えていく、後に残るのは銀の漏刻の水音だけ聞こえてくる。でも、外に出ると次はどこの女のところで酔うことにするかとしている、白玉、宝玉をちらつかせてものにして行くのだ。



(訳註・解説)

即日 高級官僚や富豪はたとえ人妻であろうが何であってもそ日のうちにものにしてしまうが、私は一年かけて思い続けている女さえものにできないという世相批判の詩である。




一歳林花即日休、江閒亭下悵淹留。
一年思い続けていた、数いる妓女の一人に思いを寄せていたがきょうやっと喜びを感じる日となるのだ。滻水と㶚水の間にある亭にとまって長らく滞在することはがっかりしていたのだ。
(一年かかって開いた花もその日のうちに散ってしまう。もの悲しくたたずむ川沿いの亭。)
林花 たくさん生えている花。ここでは妓女がたくさんいること。 ○即日休 当日、その日の内。そのうち、近いうち。休む。止める。良い、美しい。よろこび、幸い。 ○江閒 滻水と㶚水の間の㶚陵亭と考えるとわかりやすい。 ○亭下 亭にいる。 ○ 恨めしい。がっかりする。 ○淹留 長らく滞在する。立ち去りがたくその場に居続ける。

重吟細把眞無奈、已落猶開未放愁。
なんども恋歌を吟じ、細腰をだいたでも本当のところどうしようもないのだ。恋する気持ちは消沈したり、やはりまだ恋しと花開く気分になる、愁いの気持ちを放つことができないでいるのだ
(繰り返し詩を口ずさみ、そっと花を手にしても、やるかたない。はや散った花、まだ咲きのこる花、悲しみは尽きることはない。)
重吟 なんども恋歌を吟じた。○細把 腰の細い部分をつかむ。○眞無奈 ほんとうにどうしようもない。「無奈何」「無可奈何」と同じ。○已落 恋する気持ちは消沈したり、○猶開 やはりまだ恋しい○未放愁 胸中の愁いを外に向かって放つ。



山色正來銜小苑、春陰只欲傍高樓。
山の緑も本格的なものになり、人の気持ちもその気になって亭の中庭の木々草木の中に男女が横たわっている。ただ男女の情交がしたいと思いつつ高楼の傍らにたたずんでいる。
(山の縁は御苑を包みこまんほどに拡がり、春の雲は高楼に寄り添わんかに漂う。)
○銜小苑 亭の中庭に草木が植えられ入っていくと姿が見えないようなところ。木々草木の中に人が横たわると口にくわえられたように見える。○春陰 男女のいとなみ。



金鞍忽散銀壷滴、更醉誰家白玉鉤。
黄金の鞍をきらめかせて貴公子や、富豪たちは事を済ませて消えていく、後に残るのは銀の漏刻の水音だけ聞こえてくる。でも、外に出ると次はどこの女のところで酔うことにするかとしている、白玉、宝玉をちらつかせてものにして行くのだ。
(黄金の鞍をきらめかせて遊客たちはたちまち消え、聞こえるのは銀の漏刻の水音だけ。
さて、これからいずこで今ひとたびの酔いを重ねよう 、白玉の鉤をつけたとばりのもとで。)
金鞍 家書な馬具。富貴の遊客をいう。○銀壷 水時計。○白玉鉤 白玉、宝玉で女をつりあげること。酒家、妓楼の女を金によってものにして行くこと。強姦、暴行ということもある。この時代、行楽というのは、青草踏ということであり、いわゆる野姦をしめす。


○詩型 七言律詩。
○押韻 休・留・愁・楼・鉤。




解説
 いままで、李商隠の詩を紹介するにあたって、川合康三 李商隠選集(岩波文庫)を参考に掲載してきた。かならずしも、そのとおりの順序ではないが、比較しやすいようにしてきた。李商隠は他の作者と違い景色を眺めてそれを詩にしていない。この「即日」についての語訳は特にひどいので明確に指摘しておく。現代語訳のところに()内に同氏の意味不明の語訳をそのまま掲載した。


自分の一年もかかってやっとその日を迎えた「即日」。でも、それをお金に飽かせて横取りしていく、王の王朝は上から下まで、横暴がまかり通っていることを詠っている。李商隠には、根底に権力の横暴に足しての怒りがわいている。しかし、どこに、目があり、耳があるかわからないのである。性の表現でカムフラージュしたのである。
どんな時代でもエロス、頽廃文化は時の権力者に対する批判をあらわすものである。