落花 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-92


落花 
高閣客竟去、小園花亂飛。
高楼から花を眺めていた男女はそれぞれのところへと去っていく、庭には着飾った妓女が花のように舞い乱れている。
参差連曲陌、迢遞送斜暉。
もつれあいは小道を曲がらせていくようにつながっている。高い所で照らして影になっていたが日が傾いてきたら影になって見えなかったところをてらしていったのだ。
腸斷未忍掃、眼穿仍欲稀。
見ているだけの自分は腸が絶たれる気分であり、我慢して掃き捨てることもできないでいる。この状態では目を凝らして探しだせることはまずできないことなのだろう。
芳心向春盡、所得是沾衣。

美人の心は限りないほどこの春性の期待に向かわせた、しかし、得たものといえばこんなことでころもをぬらしたことだ。


高閣 客 竟に去る、小園 花 亂飛す。

参差として 曲陌に連なり、迢遞として斜暉を送る。

腸斷れて未だ掃うに忍ばず、眼穿てば 仍 稀ならんと欲す。

芳心 春盡くるに向かい、得る所は 是れ 衣を沾すのみ。





落花 訳註と解説


(本文)
高閣客竟去、小園花亂飛。
参差連曲陌、迢遞送斜暉。
腸斷未忍掃、眼穿仍欲稀。
芳心向春盡、所得是沾衣。


(下し文)
高閣 客 竟に去る、小園 花 亂飛す。
参差(しんし)として 曲陌に連なり、迢遞として斜暉を送る。
腸斷れて未だ掃うに忍ばず、眼穿てば 仍 稀ならんと欲す。
芳心 春盡くるに向かい、得る所は 是れ 衣を沾すのみ。

(現代語訳)
高楼から花を眺めていた男女はそれぞれのところへと去っていく、庭には着飾った妓女が花のように舞い乱れている。
もつれあいは小道を曲がらせていくようにつながっている。高い所で照らして影になっていたが日が傾いてきたら影になって見えなかったところをてらしていったのだ。
見ているだけの自分は腸が絶たれる気分であり、我慢して掃き捨てることもできないでいる。この状態では目を凝らして探しだせることはまずできないことなのだろう。
美人の心は限りないほどこの春性の期待に向かわせた、しかし、得たものといえばこんなことでころもをぬらしたことだ。


(語訳と訳註)

高閣客竟去、小園花亂飛。
高楼から花を眺めていた男女はそれぞれのところへと去っていく、庭には着飾った妓女が花のように舞い乱れている。
小園 中庭、農作のはたけ。



参差連曲陌、迢遞送斜暉。
もつれあいは小道を曲がらせていくようにつながっている。高い所で照らして影になっていたが日が傾いてきたら影になって見えなかったところをてらしていったのだ。
参差 長短のふぞろいなさま。ここでは落花が相前後しながら舞っている状態を指しながら、男女の絡み合いを言う。○曲陌 曲がりくねった小道。○迢遞  高いさま。遠くへ隔だたるさまをいう。○斜暉 夕日。斜めの光は奥の方まで照らす。木の葉影で見えにくかったところが横からの光に照らし出される様子を言う。



腸斷未忍掃、眼穿仍欲稀。
見ているだけの自分は腸が絶たれる気分であり、我慢して掃き捨てることもできないでいる。この状態では目を凝らして探しだせることはまずできないことなのだろう。
腸斷 セックスに満たされぬ思いを言う場合に断腸という語になる。心に思うことは別の語。○未忍掃 自慰行為を指すものもまだできない。○眼穿 穴のあくほど見つめる。



芳心向春盡、所得是沾衣。
美人の心は限りないほどこの春性の期待に向かわせた、しかし、得たものといえばこんなことでころもをぬらしたことだ。
芳心 春を楽しむ気持ち。芳は花の芳香。美人の心。妓女の心持。○沾衣 本来ならば情交、性交によって潤う湿り気を指す。貴公子や、富豪の者たちに好き勝手にされ、待ち続けてもなかなか自分のところに来てくれない。悔し涙で着衣をぬらすととることは無理がある語である。やるせない思いはなみだにならない。


○詩型 五言律詩。
○押韻 飛、曝、稀、衣。



(解説)
上巳の節句頃(3月3日)、行楽といって、野山で幔幕をはって、酒を飲み、情交、陰姦が行われた。娼屋では、中庭、近隣の畑などでも繰り広げられた。
 李商隠の得意とする、春の行楽の詩。李商隠はなじみの妓女がなかなか見つからない、一人寂しく眺めているというパターンは多い。
 下級官僚や金のないものは相手にされないのは何時の時代もあることである。