破鏡 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-93


破れた鏡、鏡は古くより男女の情交を示唆するものである。壊れた鏡の右と左、男と女なのである。また、満月があり、半月があるように詩の中で男女の情愛を詠うものであった、男女の意志で割ったもの、割られたもの、無理やりに引きはがされたもの、その鏡にはいろんなものがある。ここでは、山鶏と鸞鳳、牛李の党争、あるいは、賈誼と守旧派・宦官勢力、劉蕡と守旧派、を比喩として詠いあげる。

破鏡
玉匣清光不復持、菱花散亂月輪虧。
宝玉飾られた箱の中に、清らかな光を秘めている、その輝きが蘇ることは二度とないのだ。泥の中から菱の花を咲かせるように、守旧派の闇の中で輝きを持っていた花も乱れ散ったのだ、月輪のような正論を輝かせたのも影で欠けてしまった。
秦臺一照山鶏後、便是孤鸞罷舞時。

うぬぼれ者の山鶏が秦の朝廷という鏡に姿を映してからは、孤独な実力のある鸞は鏡の前で舞うのを止めされられた。


破 鏡
玉匣の清光 復た持せず、菱花散乱して月輪 虧(かける)
秦台一たび山鶏を照らして後、便ち是れ孤鸞 舞いを罷むるの時。


破鏡 訳註と解説

(本文)
破鏡
玉匣清光不復持、菱花散亂月輪虧。
秦臺一照山鶏後、便是孤鸞罷舞時。

(下し文)
玉匣の清光 復た持せず、菱花散乱して月輪 虧(かける)
秦台一たび山鶏を照らして後、便ち是れ孤鸞 舞いを罷むるの時。

(現代語訳)
宝玉飾られた箱の中に、清らかな光を秘めている、その輝きが蘇ることは二度とないのだ。泥の中から菱の花を咲かせるように、守旧派の闇の中で輝きを持っていた花も乱れ散ったのだ、月輪のような正論を輝かせたのも影で欠けてしまった。
ぅぬぼれ者の山鶏が秦の朝廷という鏡に姿を映してからは、孤独な実力のある鸞は鏡の前で舞うのを止めされられた。


破鏡
○破鏡 割れた鏡、半月を示す。男女の離別を意味するのは、
①『神異経』(『太平御覧』巻七一七)に見える故事による。ある夫婦が別々に住む際、鏡を二つに割って半分ずつをもち、愛情のあかしとした。のちに妻が他の男と通じた時、鏡は鵜となって夫のもとへ飛び、夫は何が起こったかを知った。以来、鏡の背面に鵜の模様を施すことになった、と。
②また『芸文類架』巻五六で、「藁砧詩」、
③『王台新詠』では「古絶句四首」其一藁砧今何在と題する詩では、(外に出ていった夫はどこにいるのか、帰ってくるのはいつだろう、、「破鏡飛上天」(破鏡飛んで天に上る)の句で結ばれる。欠けた月が空に上がるとは、十五日を過ぎて帰ってくる、という謎解き。そこでは「破鏡」は残月を意味するものの、やはり男女の離合に関わっている。


 
玉匣清光不復持、菱花散亂月輪虧。
宝玉飾られた箱の中に、清らかな光を秘めている、その輝きが蘇ることは二度とないのだ。泥の中から菱の花を咲かせるように、守旧派の闇の中で輝きを持っていた花も乱れ散ったのだ、月輪のような正論を輝かせたのも影で欠けてしまった。
玉匣 鏡を入れる箱。○不復持 もはや保ち続けられない。○菱花 蓮と菱はともに水草であり、娼屋の妓女の別名である。また語の通り、鏡の裏の絵柄が菱の花であること、鏡で日光を反射させると壁に菱の花模様が浮かぶとする。庚信「鏡の賦」に「目に照らせば則ち壁上に菱生ず」。〇月輪 古くから鏡を月にたとえる。同じく庚信「鏡の賦」に「水に臨めば則ち地中に月出ず」。満月の団円は男女和合の象徴でもある。 



秦臺一照山鶏後、便是孤鸞罷舞時。
うぬぼれ者の山鶏が秦の朝廷という鏡に姿を映してからは、孤独な実力のある鸞は鏡の前で舞うのを止めされられた。
秦台 秦の朝廷。○山鶏 華美な羽をもった鳥。真に実力を備えて鳥の鸞鳳に対する実力のない空威張りの鳥である。南朝宋・劉敬叔『異苑』に、山鶏は自分の美しい羽を愛し、水に映った姿に見とれて舞う習性があり、魏の武帝(曹操)の時に南方から献じられた山鶏の前に鏡を置くと、舞い続けて死んだという。李商隠「鸞鳳」詩では鳳に似て非なる鳥として対比されている。宦官を示す○孤鸞 鏡の前に置いた鸞は映った姿を見て鳴き続け、絶命したという故事にもと、づく。「陳の後宮」詩では、昔、罽賓の国の王が一羽の鸞を捕えたが、鳴かない。夫人が鸞は仲間を見ると鳴くといいますから鏡を置いたらどうでしょぅと言った」皆は鏡のなかの姿を見ると、悲痛な声を発して鳴き続け、夜中に身を震わせるとそのまま息絶えた、という。李商隠頻用の故事。白居易「太行路」にもみえる。ここでは鑾鏡(鸞の模様が刻まれている鏡)を指す。「鸞開鏡」は「開攣鏡」を倒置したもの。劉蕡など正論を唱える人物をしめす。



○詩型 七言絶句。 
○押韻 持、虧、時。



(解説)
割れたのか、割られたのか、あるいは引き裂かれたのか、いろんな「破れた鏡」がある。この時代、鏡を持てたものは一定以上の身分の人か、芸妓である。
 いかにも芸妓の艶歌の装を凝らしながら、朝廷内で裏で画策し、貶めていく宦官勢力は鳳凰のような能力を持った人物を葬ってきた。

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