爲有 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-95


爲有
爲有雲屏無限嬬、鳳城寒盡怕春宵。
有るがためにおこった事というのは、ないようなものの雲母の雲のように包まれるほれた女性の色香は愛らしさは無限のものがある。美人のいる奥座敷、冬の寒さは終わり、心ときめく春の宵時間が次第に短くなっていくのがこわいのだ。
無端嫁得金龜婿、辜負香衾事早朝。
理由もないのにおこった事というのは金と地位によって嫁を得たものにおこるのだ、家で一緒に夜を過ごそうとしても閨には寄り付かず、夜明け前から朝廷に参じてしまうというものだ。


有るが為に

雲屏有るが為に無限の嬌あり、鳳城 寒尽きて春宵を怕る

端無くも金亀の婿に嫁ぎ得て、香衾に辜負して早朝に事む。






有るが為に  訳註と現代語訳、解説

(本分)
爲有雲屏無限嬬、鳳城寒盡怕春宵。
無端嫁得金龜婿、辜負香衾事早朝。

(下し文)
雲屏有るが為に無限の嬌あり、鳳城 寒尽きて春宵を怕る
端無くも金亀の婿に嫁ぎ得て、香衾に辜負して早朝に事む。

 (現代語訳)
有るがためにおこった事というのは、ないようなものの雲母の雲のように包まれるほれた女性の色香は愛らしさは無限のものがある。美人のいる奥座敷、冬の寒さは終わり、心ときめく春の宵時間が次第に短くなっていくのがこわいのだ。
理由もないのにおこった事というのは金と地位によって嫁を得たものにおこるのだ、家で一緒に夜を過ごそうとしても閨には寄り付かず、夜明け前から朝廷に参じてしまうというものだ。


 (訳註)
爲有雲屏無限嬬、鳳城寒盡怕春宵。
有るがためにおこった事というのは、ないようなものの雲母の雲のように包まれるほれた女性の色香は愛らしさは無限のものがある。美人のいる奥座敷、冬の寒さは終わり、心ときめく春の宵時間が次第に短くなっていくのがこわいのだ。
為有 詩の最初の二字を取り出して題としたもの。○雲屏 雲母でこしらえた屏風、豪奮な調度品、ということも言えるが、同時に、雲を男性と考え、屏は包まれ隠されるという意味。ここでは男性の腕の中にいることを示す○ ほれた女性の色香は愛らしい。○鳳城 鳳凰の棲む仙界。ここでは美人のいる奥座敷。○怕春宵 冬の長い夜が春になると短くなっていく。惚れた女との時間が短じかくなるのをおそれるという意味。白居易「長恨歌」に「春宵苦だ短く日高くして起き、此れより君主 早朝せず」。



無端嫁得金龜婿、辜負香衾事早朝。
理由もないのにおこった事というのは金と地位によって嫁を得たものにおこるのだ、家で一緒に夜を過ごそうとしても閨には寄り付かず、夜明け前から朝廷に参じてしまうというものだ。
無端 これといったわけもなく。○金亀婿 位階の高い婿。「金亀」は高官が身につける割り符。唐代の官員は魚をかたどった割り符(魚符)を袋にいれて登庁の際に身につけた(魚袋)。三品以上の魚符は金、五品以上は銀。武則天の一時期、魚でなく亀が用いられたことがあり、ここではそれを用いる。○辜負 そむく。背を向ける。○香衾 香り高い夜具。○早朝 朝早くの朝見。夜明けが仕事始めを守って早めに出勤する。「早朝」の「朝」はあさではなく朝廷。官人は夜明けとともに参内した。「無題(昨夜の星辰)」詩の「聴鼓」「応官」の注参照。また上の「春宵」の注に引く「長恨歌」にも皇帝の立場からする「早朝」が見える。「五更」という表現もある。



(解説)

○詩型 七言絶句。
○押韻 嬬・宵・朝。



有るがためにおこった事、それは形のないもの愛情いっぱいの生活。
理由もないのにおこった事、地位や金があるのものに起こる愛情のない生活。
この詩は李商隠はしてやったりとほほえみを浮かべながら詠ったと思う。多くの詩は貴公子や富豪による理不尽や横暴を指摘していたが、ここでは地位や金があって奪ったような女性が温かく包んでくれるようなことはない。そういう交わりは女性も金目当てで、お互い嫌気がして、生活が空虚なものになる。