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可歎 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-96


 李商隠の詩の語訳には、誤訳が多い。李商隠の詩の背景を無視し、語句だけを訳すからとんでもない詩になってしまう。李商隠は、パズルゲームをするように故事を並べ、総括して題を付けている。唐王朝のみならず、どの王朝も頽廃、不義密通、媚薬、中毒、豪奢、横暴、数々の道義、礼節、にかけることばかり、李商隠の詩は、一詩を見ると恋歌、艶歌、閨情詩であるが、その時期の数種数十首を集めて読んでいくと、社会批判の内容なのだ。そういう1から100を、全体から個を見る視点が必要である。
さて、この「嘆くべし」には、八つの嘆きが詠われている。私のこの詩題は「八歎詩」である。
*答えはやくちゅうをよめばわかるが、解説の末尾にも示す。


可歎
歎きなさい
幸會東城宴末廻、年華憂共水相催。
春の長安の宴の席で幸運にも出会ったので、宴を抜けてでも私のもとに帰ってきてほしいと思っているのにまだ帰らない。若くて盛んなころと違い歳を重ねてきた今は時間は流れる水とせき立て合うように過ぎてゆくのが歎きなのだ
梁家宅裏秦宮入、趙后樓中赤鳳來。
梁冀の邸内ではその妻のもとに下僕の秦官が入り込み密通した、趙飛燕の楼には召使いの赤鳳が出入りし私通した。(趙飛燕自体も妹の行為に嘆いた。)
冰簟且眠金鏤枕、瓊筵不酔玉交杯。
涼やかな敷布に金細工の枕でただ眠るだけの嘆きがある、瓊の玉の筵、敷物に宝玉の杯を手にとめどなく飲み続けても何事もうまくいかないので歎きながら飲む酒は酔わないものなのだ。
宓妃愁坐芝田館、用盡陳王八斗才。

洛水の女神宓妃は崑崙山の芝田の館にただ一人愁いをもって待っている。すべての才一石のうち、八斗の才と称された詩才あふれる陳王曹植が、その才を尽くして描いた恋もうまくいかなかった。

歎くべし

幸いに東城に会い宴より未だ廻らず、年華 水と相い催すを憂う。

梁家の宅裏に秦宮入り、趙后の楼中に赤鳳来たる。

氷簟 且く眠る 金鏤の枕、瓊筵 酔わず 玉交の杯。

妃は愁い坐す 芝田の館、用い尽くす 陳王八斗の才。




可歎  語訳語註と解説
(本文)
幸會東城宴末廻、年華憂共水相催。
梁家宅裏秦宮入、趙后樓中赤鳳來。
冰簟且眠金鏤枕、瓊筵不酔玉交杯。
宓妃愁坐芝田館、用盡陳王八斗才。

(下し文)
幸いに東城に会い宴より未だ廻らず、年華 水と相い催すを憂う。
梁家の宅裏に秦宮入り、趙后の楼中に赤鳳来たる。
氷簟 且く眠る 金鏤の枕、瓊筵 酔わず 玉交の杯。
宓妃は愁い坐す 芝田の館、用い尽くす 陳王八斗の才。


(現代語訳)
春の長安の宴の席で幸運にも出会ったので、宴を抜けてでも私のもとに帰ってきてほしいと思っているのにまだ帰らない。若くて盛んなころと違い歳を重ねてきた今は時間は流れる水とせき立て合うように過ぎてゆくのが歎きなのだ
梁冀の邸内ではその妻のもとに下僕の秦官が入り込み密通した、趙飛燕の楼には召使いの赤鳳が出入りし私通した。(趙飛燕自体も妹の行為に嘆いた。)
涼やかな敷布に金細工の枕でただ眠るだけの嘆きがある、瓊の玉の筵、敷物に宝玉の杯を手にとめどなく飲み続けても何事もうまくいかないので歎きながら飲む酒は酔わないものなのだ。
洛水の女神宓妃は崑崙山の芝田の館にただ一人愁いをもって待っている。すべての才一石のうち、八斗の才と称された詩才あふれる陳王曹植が、その才を尽くして描いた恋もうまくいかなかった。


(訳註)

可歎
歎きなさい


幸會東城宴未廻、年華憂共水相催。
春の長安の宴の席で幸運にも出会ったので、宴を抜けてでも私のもとに帰ってきてほしいと思っているのにまだ帰らない。若くて盛んなころと違い歳を重ねてきた今は時間は流れる水とせき立て合うように過ぎてゆくのが歎きなのだ。
幸會 無題の詩に見える、惚れて通ってくれた人が全く来なくなった。手紙を出そうにもどこにだしたらよいのかわからない。妓女は探して歩くわけにいかないのだ。ところが、幸いに宴の席で見かけたという意味。○東城 東は春を意味する。春の長安。無題(來是空言去絶蹤) 李商隠 19  宴未廻 宴を抜けてでも私のもとに帰ってきてほしいという意味。〇年華 時間、歳月、わかさ。○共水相催 孔子の川上の歎以来、水の流れは時の推移の比喩。「催」はせきたてる。陶淵明「雑詩」其の七に「日月貰えて遅たず、四時相い催し迫る」。

梁家宅裏秦宮入、趙后樓中赤鳳來。
梁冀の邸内ではその妻のもとに下僕の秦官が入り込み密通した、趙飛燕の楼には召使いの赤鳳が出入りし私通した。(趙飛燕自体も妹の行為に嘆いた。)
梁家一句 後漢・梁巽の妻の故事を用いる。梁巽は監奴(下僕の長)の秦宮をかわいがっていたが、梁巽の妻の孫寿のもとに出入りするうちに孫寿に気に入られ、密通した。『後漢書』梁巽伝にも見える。○趙后一句 漢・成帝の皇后超飛燕とその妹の故事を用いる。趨飛燕は寵愛されて皇后になり、妹も昭俵に取り立てられた。趙飛燕が私通していた下僕の赤鳳は昭俵とも通じていて、姉妹のいさかいを招いた(『趙飛燕外伝』)。


冰簟且眠金鏤枕、瓊筵不酔玉交杯。
涼やかな敷布に金細工の枕でただ眠るだけの嘆きがある、瓊の玉の筵、敷物に宝玉の杯を手にとめどなく飲み続けても何事もうまくいかないので歎きながら飲む酒は酔わないものなのだ。
氷簟 水のように冷たいたかむしろ。「簟」は涼を取るための敷物。○金鏤枕 黄金をちりばめた枕。曹植「洛神の賦」(『文選』巻一九)の李善の注が引く「記」 に、「東阿王(曹植)朝に入り、帝(文帝=曹丕)は植に甄后の玉銭金帯枕を示す」。○瓊筵の句 瓊筵 は仙人や天子の使う玉でこしらえた豪華な敷物をさすが、李白「春夜桃李園宴序」 にある聯に基づいていている。
開瓊筵以坐華, 飛羽觴而醉月。(瓊筵を開きて以て華に坐し,羽觴を飛ばして月に醉(よ)ふ。)
美しい玉で飾った敷物を花咲くもとで広げて座った、羽をひろげた形をした杯を飛んでいるような形で酌み交わし、月明かりに酒に酔う。(何もかもうまくいくから酔うということ)これに対して思いが通らないので○不酔 いくら杯を重ねても酔うことなく飲み続ける。○玉交杯 李白の詩では、雀の羽型の盃だけどこの詩では、いくつかの種類の玉の盃、豪華な盃。

宓妃愁坐芝田館、用盡陳王八斗才。
洛水の女神宓妃は崑崙山の芝田の館にただ一人愁いをもって待っている。すべての才一石のうち、八斗の才と称された詩才あふれる陳王曹植が、その才を尽くして描いた恋もうまくいかなかった。
宓妃 曹植「洛神の賦」 に登場する洛水の女神。怒妃は実は曹垂の妻甑后であり、二人は密かに愛し合っていたものの結ばれなかった。李商隠 7 無題(颯颯東風細雨來)
芝田 崑崙山にある農地の名。『拾遺記』崑崙山に「第九層……下に芝田・蕙圃有り。皆な数百頃。群仙種耨す(耕作する)」。○陳王八斗才「陳王」は陳思王曹植。天下のすべての才を一石とすれば曹植が八斗を占めるという謝霊運のことばが古くから伝えられた。この二句は、曹植が「洛神の賦」で文才を駆使して宓妃(=甑后)を描出しても、二人の恋は実ることなく、怒妃は仙女となって孤独に沈むはかなかったことをいう。



(解説)

○詩型 七言律詩。
○押韻 廻、催、来、杯、才。



この詩のもとになる詩は、あるいは参考とする詩は李商隠「無題」とする詩である。
約束の日にもかない、待ち続けて、捜すにもさがせない身の妓女がたまたま宴席で出会った。その日は来てくれると思った儺来ないので歎く①
歳を重ね日増しに呼ばれることがなくなってくる妓女は嘆くべし。②
密通したためにおとがめを受けた秦の宮廷宦官の孫寿は嘆くべし。③
妹に寝取られた趙飛燕は嘆くべし④、趙飛燕に私通した下僕赤鳳もおとがめを受けた、これも歎くべし⑤。
富豪のもとで囲われている芸妓が毎夜一人寝している。嘆くべし。⑥ 玉の筵、宝玉の杯で飲んでも詩をうまく作れない。嘆くべし。⑦
死んだ後、仙女になっても思い続けているだけの宓妃、
詩文に比類ない才能を発揮したが、生涯兄嫁甑后の宓妃を慕い続けたが、兄嫁に振り向かれることがなかった、これも嘆くべし。⑧