聖女詞 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 99



聖女詞
松篁臺殿蕙香幃、龍護瑤窗鳳掩扉。
松と竹に囲まれた台殿のやしろが蕙香の香りと格調高いとばりにかこまれている。かがやく宝玉で飾った拝殿の窓には守護するように龍が彫られ、扉には鳳凰が一面に刻まれている。
無質易迷三里霧、不寒長著五銖衣。
どれほどのものが証というのか自分には差し出すものがないので連れ添ってくれないから迷ってしまう三里先が見えない霧の中にいるようだ、寒くはない、長い間肌をあらわにしたままで五銖の銭で服をぬいで交わった。
人閒定有崔羅什、天上應無劉武威。
人の世には女性と楽しく過ごすことは当たり前のようにある、ましてや崔羅什のような体験もあるのだ。天上世界においては劉武威のような凛々しい武将であっても女性と楽しく過ごせることなどありはしないのだ。
寄問釵頭雙白燕、毎朝珠館幾時歸。

教えてほしい、簪で綺麗に着飾った二人より沿う白燕の彼女たち、。その御殿にいつも参内されている聖女は、いつここへ帰って来られるのか。(国教である道教がこんなことでよいのか)

聖女詞

松篁の台殿 蕙香の幃、龍は瑤窗を護り 鳳は扉を掩う。

質無くして迷い易し 三里の霧、寒からずして長に著る 五銖の衣。

人間 定めて有り 崔羅什、天上 応に無かるべし 劉武威。

問いを寄す 釵頭の双白燕、毎に珠館に朝して幾時か帰る。



聖女詞  現代語訳と訳註、解説
(本文)

松篁臺殿蕙香幃、龍護瑤窗鳳掩扉。
無質易迷三里霧、不寒長著五銖衣。
人閒定有崔羅什、天上應無劉武威。
寄問釵頭雙白燕、毎朝珠館幾時歸。


(下し文)
松篁の台殿 蕙香の幃、龍は瑤窗を護り 鳳は扉を掩う。
質無くして迷い易し 三里の霧、寒からずして長に著る 五銖の衣。
人間 定めて有り 崔羅什、天上 応に無かるべし 劉武威。
問いを寄す 釵頭の双白燕、毎に珠館に朝して幾時か帰る。


(現代語訳)
松と竹に囲まれた台殿のやしろが蕙香の香りと格調高いとばりにかこまれている。かがやく宝玉で飾った拝殿の窓には守護するように龍が彫られ、扉には鳳凰が一面に刻まれている。
どれほどのものが証というのか自分には差し出すものがないので連れ添ってくれないから迷ってしまう三里先が見えない霧の中にいるようだ、寒くはない、長い間肌をあらわにしたままで五銖の銭で服をぬいで交わった。
人の世には女性と楽しく過ごすことは当たり前のようにある、ましてや崔羅什のような体験もあるのだ。天上世界においては劉武威のような凛々しい武将であっても女性と楽しく過ごせることなどありはしないのだ。

(訳註)
聖女詞

聖女詞 道教の神女を祀ったほこら。

李商隠 6 重過聖女詞
鳳州(陝西省鳳翔)の秦岡山の懸崖の側、列壁の上にある祠。その神体は女性で上が赤く下が白く塗られているという。(856年45歳のころ、東川の幕府からか、陝西省南鄭県)興元の方面から長安に帰る途中か、あるいは向かう折かの作と推定されている。

唐代の道教のやしろ、或いはそれに類するいわゆる淫祠の女冠は多分に売春、娼妓的性格をもっていた。それを考え併せてこの詩を読まないとわからない。


松篁臺殿蕙香幃、龍護瑤窗鳳掩扉。
松と竹に囲まれた台殿のやしろが蕙香の香りと格調高いとばりにかこまれている。かがやく宝玉で飾った拝殿の窓には守護するように龍が彫られ、扉には鳳凰が一面に刻まれている。
松篁「篁」は竹林、竹であるが、道沿いに整然と見え、鬱蒼としている状況でないもの。○蕙香幃「蕙」は香草の名。「幃」はとばり。○龍護瑤窗鳳掩扉 祠の窓、扉に龍や鳳凰が刻まれている壮麗さをいう。「瑤窓」は宝玉で飾った窓。日の光を浴びで神秘的に光るイメージを言う。


無質易迷三里霧、不寒長著五銖衣。
どれほどのものが証というのか自分には差し出すものがないので連れ添ってくれないから迷ってしまう三里先が見えない霧の中にいるようだ、寒くはない、長い間肌をあらわにしたままで五銖の銭で服をぬいで交わった。
無質 さし出すもの。真。約束。〇三里霧 いわゆる五里霧中の状態。暗い中での男女の交わりをあらわす。○長著 あらわれる。服を脱ぐ。〇五銖衣 銖は重さの単位ごくわずかの単位で五銖ほどの軽さという意味。五銖で娼妓を買うという意味であろう。


人閒定有崔羅什、天上應無劉武威。
人の世には女性と楽しく過ごすことは当たり前のようにある、ましてや崔羅什のような体験もあるのだ。天上世界においては劉武威のような凛々しい武将であっても女性と楽しく過ごせることなどありはしないのだ。
人閒 人の世の中。○崔羅什 墳墓のなかの女性に歓待された男の話。段成式『酉陽雑姐』冥跡に見える。北魏の時、崔羅什が長白山のふもとにさしかかった時、ふいに豪壮な邸宅があらわれた。中に招かれて女主人と歓談したのち、十年後にまた会うことを約して辞し、振り返ってみるとそこには大きな墳墓があるだけだった。〇劉武威 仙女との交歓を語る武将の物語にもとづくであろう。


寄問釵頭雙白燕、毎朝珠館幾時歸。
教えてほしい、簪で綺麗に着飾った二人より沿う白燕の彼女たち、。その御殿にいつも参内されている聖女は、いつここへ帰って来られるのか。(国教である道教がこんなことでよいのか)
欽頭双白燕 かんざしにつけたつがいの白いツバメ、この祠にいるおしろいをつけた娼妓のこと。今全員に客がついている。○珠舘 仙界の建物。祠近くにある娼屋を意味する。


○詩型 七言律詩。
○押韻 幃、扉、衣、威、帰。



道教の老荘思想について李商隠は学びもし、評価もしているが、道教の道士の唐王朝に対する媚と金丹による中毒、あるいは道教と宦官の関係に対して憤りを覚えていたのである。道教の女神をまつった祠にしても、何らかの罪を犯してきた女性等を贖罪のためか生活のためか住まわしていた。何らかの形で性と結びついている道教について批判的であると感じる。