驕兒詩 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 120


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#1
袞師我驕兒,美秀乃無匹。文葆未周晬,固已知六七。
四歲知名姓,眼不視梨栗。交朋頗窺觀,謂是丹穴物。
前朝尚器貌,流品方第一。不然神仙姿,不爾燕鶴骨。
#2
安得此相謂,欲慰衰朽質。
いくら可愛いとはいえ、どうしてこれほどまでに誉めてもらえるのだろうか。それは、友人等が、衰朽の材とでもいうべきこの親として私の性の拙なさを憐み、児を誉めることによって、私を慰めようとするのだろう。
青春妍和月,朋戲渾甥侄。
春の中の春、万物が成長をはじめ、自然が美しくなるうららかな日である、わが子はいとこたちに混じって遊びまわっている。
繞堂複穿林,沸若金鼎溢。
奥座敷まで広間を駆けめぐったかと思うと、林の中へ突きぬけて進んでいる。まるで金の鼎(かなえ)が沸騰するかの大騒ぎである。
門有長者來,造次請先出。
門からはいったところでお客人が見えれば、すぐさま「ぼくが出迎えていいか」と請けて迎えに走る。
客前問所須,含意下吐實。
お客の前で「ほしいものいいなさい」と聞かれると、羞らって思う本当のことが言われない。
歸來學客面,闡敗秉爺笏。
お客が帰ってしまえばお客さんの顔つきのまねをする、しかも門からぶつかるような勢いで入ってきてこの私の笏を取り、まねをするのだ。
#3
或謔張飛胡,或笑鄧艾吃。豪鷹毛崱屴,猛馬氣佶傈。
截得青筼簹,騎走恣唐突。忽複學參軍,按聲喚蒼鶻。
又複紗燈旁,稽首禮夜佛。仰鞭罥蛛網,俯首飲花蜜。


#1
袞師は我が騎児、美秀 乃ち匹(たぐい) 無(なし)。
文葆(ぶんぽう) 末だ 周晬(しゅうさい)ならざるに、固(もと)より巳に六七を知る。
四歳にして姓名を知り、眼には梨と栗とを視ず。
交朋 頗(すこぶ)る 窺(うかが)い観て、謂う是(これ)丹穴の物ならんと。
前朝 器貌(きぼう)を尚(とうと)ぶ、流品 万(まさ)しく第一ならん。
然らずんば 神仙の姿、爾(しからずんば) 燕鶴(えんかく)の骨(かたち)なり。

#2
安んぞ此(かく)相(あい) 謂(いう)を得ん、衰朽(すいきゅう)の質を慰めんと欲すればなり。
青春 妍和(けんわ)の月、朋戯(ほうぎ)は甥姪(せいてつ)に渾(まじ)る。
堂を繰り復(また) 林を穿(くぐ)り、沸として金鼎(きんてい)の溢(あふる)るが 若(ごとし)。
門に長者の来たる有れば、造次(ぞうじ)に請(こ)い 先に出る。
客前に須(ほしい)所(もの)を問えば、意を含(ふく)みて実(じつ)を吐かず。
帰り来たれは客の面(めん)を学(ま)ね、闡敗(ぜんはい)して爺(ちち)の笏(こつ)を秉(と)る。
#3
或いは張飛(ちょうひ)の胡を語れ、或いは鄧艾(とうがい)の吃(きつ)を笑う。
豪鷹(ごうよう) 毛 崱屴(しょくりょく)たり、猛馬 気 佶傈(きつりつ)たり。
青き筼簹(うんとう)を截り得て、騎走 窓に唐突 す。
忽(たちまち)復(また)参軍を学ね、声を按(おさ)えて蒼鶻(そうこつ)を喚(よぶ)。
又復(またまた)紗燈(さとう)の旁(かたわら)に、稽首(けいしゅ)して夜仏に礼をする。
鞭を仰げて蛛(くも)の網を罥(か)け、首を俯(ふ)して花の蜜を飲む。


驕兒詩 現代語訳と訳註
(本文) #2

安得此相謂,欲慰衰朽質。
青春妍和月,朋戲渾甥侄。
繞堂複穿林,沸若金鼎溢。
門有長者來,造次請先出。
客前問所須,含意下吐實。
歸來學客面,闡敗秉爺笏。


(下し文)
安んぞ此(かく)相(あい) 謂(いう)を得ん、衰朽(すいきゅう)の質を慰めんと欲すればなり。
青春 妍和(けんわ)の月、朋戯(ほうぎ)は甥姪(せいてつ)に渾(まじ)る。
堂を繰り復(また) 林を穿(くぐ)り、沸として金鼎(きんてい)の溢(あふる)るが 若(ごとし)。
門に長者の来たる有れば、造次(ぞうじ)に請(こ)い 先に出る。
客前に須(ほしい)所(もの)を問えば、意を含(ふく)みて実(じつ)を吐かず。
帰り来たれは客の面(めん)を学(ま)ね、闡敗(ぜんはい)して爺(ちち)の笏(こつ)を秉(と)る。


(現代語訳)
いくら可愛いとはいえ、どうしてこれほどまでに誉めてもらえるのだろうか。それは、友人等が、衰朽の材とでもいうべきこの親として私の性の拙なさを憐み、児を誉めることによって、私を慰めようとするのだろう。
春の中の春、万物が成長をはじめ、自然が美しくなるうららかな日である、わが子はいとこたちに混じって遊びまわっている。
奥座敷まで広間を駆けめぐったかと思うと、林の中へ突きぬけて進んでいる。まるで金の鼎(かなえ)が沸騰するかの大騒ぎである。
門からはいったところでお客人が見えれば、すぐさま「ぼくが出迎えていいか」と請けて迎えに走る。
お客の前で「ほしいものいいなさい」と聞かれると、羞らって思う本当のことが言われない。
お客が帰ってしまえばお客さんの顔つきのまねをする、しかも門からぶつかるような勢いで入ってきてこの私の笏を取り、まねをするのだ。


(訳注)
安得此相謂,欲慰衰朽質。

いくら可愛いとはいえ、どうしてこれほどまでに誉めてもらえるのだろうか。それは、友人等が、衰朽の材とでもいうべきこの親として私の性の拙なさを憐み、児を誉めることによって、私を慰めようとするのだろう。
○安得 どうして何何する事ができようか、という反語。○衰朽質 活力を失いつつある人間の形体。


青春妍和月,朋戲渾甥侄。
春の中の春、万物が成長をはじめ、自然が美しくなるうららかな日である、わが子はいとこたちに混じって遊びまわっている。
○青春 春。五行説では季節の春と色の青が対応するので「青春」という。又東も青である。○妍和 美しくおだやか。○朋戯 友達と一緒に遊ぶ。○ 混じって一体となる。○甥侄 姉妹の子を甥といい、兄弟の子を姪という。日本語のそれとは意味がちがう。


繞堂複穿林,沸若金鼎溢。
奥座敷まで広間を駆けめぐったかと思うと、林の中へ突きぬけて進んでいる。まるで金の鼎(かなえ)が沸騰するかの大騒ぎである。
 家の中心となる部屋。奥座敷。○穿 通り抜ける。○沸若金鼎溢 「沸」は湯が沸騰したさま。「金鼎」は黄金あるいは金属製の鼎。三権鼎立の状態から、沸騰することから戦争を始めるような大騒ぎという意味。


門有長者來,造次請先出。
門からはいったところでお客人が見えれば、すぐさま「ぼくが出迎えていいか」と請けて迎えに走る。
○長者 年長者の称。また貴顕の者の称。○造次 わずかの間。この言葉は「論語」の里仁清から出る。


客前問所須,含意下吐實。
お客の前で「ほしいものいいなさい」と聞かれると、羞らって思う本当のことが言われない。
 必要とする。需と通ずる。○含意 合は内に籠める。羞らって思うことが言われないこと。


歸來學客面,闡敗秉爺笏。
お客が帰ってしまえばお客さんの顔つきのまねをする、しかも門からぶつかるような勢いで入ってきてこの私の笏を取り、まねをするのだ。
闡敗 闡は門を開く、敗は壊す。門を打ち破って入ることと。ぶつかるような勢いをいう。○爺笏 爺は父を意味する。笏は官人が手にする笏(しゃく)。「帰来」以下の四句は客人が去ったあとの悪ふざけを並べるので、父の笏を取るのは「客の面を学」ねるため。


○押韻 質。質。溢。出。實。笏。