河内詩二首其二(湖中) 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 127


この詩は、捨てられた芸妓のやるせなさを詠う、その裏に、843~844年天子に反旗を翻した劉稹、この詩では「淥菱」により連想される を詠っている。その有力潘鎮の叛乱に対し、討伐軍を率いて平定した英雄が出身身分が低いために正当な評価を受けなかったのだ。それが石雄である。地方の低い武官から身を起こしたものだった。この詩を恋歌とだけで理解しようと思うとまったくわけのわからない詩となってしまう。


其二
閶門日下呉歌遠、陂路淥菱香満満。
蘇州の閶闔門出て舟は進む、日はおちかかってきた、呉の国の民謡の詩が遠く変え阿聞こえてくる。歌声の先には女が土手に植わる縁菱をつみとっている、あたりにその香りは満ちあふれている。
後渓暗起鯉魚風、船旗閃断芙蓉幹。』
はるか向こうの渓谷からはそっと鯉魚の風のように反旗をたてものがいる、船の旗がはためきせん光が走った枯れた芙蓉の葉のように揺れ、枯れた茎が折れるように王朝は揺れたのだ。』
傾身奉君畏身軽、雙橈兩漿樽酒清。
わが全身全霊を捧げて天子にお仕えするには、その身が低かったである。一組の橈、一対の漿櫓、そして清らかなお酒のようにこの地を鎮めた。
莫因風雨罷團扇、此曲断腸唯北聲。』
秋の冷たい風雨がおさまるように叛乱、謀反を一人の副将軍配によってもたらされたがそれによる論功がなされない。この「愁扇」の曲、身を切るほど切ないのは、まさに北の副将の声なのだ。』
低樓小徑城南道、猶自金鞍封芳草。』
そんな出来事がありながら、小さな楼から小路をたどって城南の道に来てみたら、そこには今も遊び呆けている貴族らの黄金の鞍をつけた馬が、芳草を食んでいました。』
右一曲 湖中

この詩は、舟に乗っておきに出て詠ったものである。


其の二
閶門 日下り 呉歌遠し、陂路の縁菱 香り満満。
後渓暗に起つ 鯉魚の風、船旗閃断す 芙蓉の幹。』
身を傾けて君に奉ずるも 身の軽き を 畏る、雙橈 両漿 樽酒清し。
風雨にて団扇を罷くることに因る莫かれ、此の曲 断腸するは 唯 北声。』
低楼 小径 城南の道、猶に自(より) 金鞍 芳草に対す。』

右一曲 湖中


河内詩二首其二(湖中) 現代語訳と訳註
(本文) 其二

閶門日下呉歌遠、陂路淥菱香満満。
後渓暗起鯉魚風、船旗閃断芙蓉幹。』
傾身奉君畏身軽、雙橈兩漿樽酒清。
莫因風雨罷團扇、此曲断腸唯北聲。』
低樓小徑城南道、猶自金鞍封芳草。』


遠、満。幹。/軽、清。聲。』/道、草。


(下し文) 其の二
閶門 日下り 呉歌遠し、陂路の縁菱 香り満満。
後渓暗に起つ 鯉魚の風、船旗閃断す 芙蓉の幹。』
身を傾けて君に奉ずるも 身の軽き を 畏る、雙橈 両漿 樽酒清し。
風雨にて団扇を罷くることに因る莫かれ、此の曲 断腸するは 唯 北声。』
低楼 小径 城南の道、猶に自(より) 金鞍 芳草に対す。』
右一曲 湖中


(現代語訳)
蘇州の閶闔門出て舟は進む、日はおちかかってきた、呉の国の民謡の詩が遠く変え阿聞こえてくる。歌声の先には女が土手に植わる縁菱をつみとっている、あたりにその香りは満ちあふれている。
はるか向こうの渓谷からはそっと鯉魚の風のように反旗をたてものがいる、船の旗がはためきせん光が走った枯れた芙蓉の葉のように揺れ、枯れた茎が折れるように王朝は揺れたのだ。』
わが全身全霊を捧げて天子にお仕えするには、その身が低かったである。一組の橈、一対の漿櫓、そして清らかなお酒のようにこの地を鎮めた。
秋の冷たい風雨がおさまるように叛乱、謀反を一人の副将軍配によってもたらされたがそれによる論功がなされない。この「愁扇」の曲、身を切るほど切ないのは、まさに北の副将の声なのだ。』
そんな出来事がありながら、小さな楼から小路をたどって城南の道に来てみたら、そこには今も遊び呆けている貴族らの黄金の鞍をつけた馬が、芳草を食んでいました。』
この詩は、舟に乗っておきに出て詠ったものである。


(訳注)
閶門日下呉歌遠、陂路淥菱香満満。
蘇州の閶闔門出て舟は進む、日はおちかかってきた、呉の国の民謡の詩が遠く変え阿聞こえてくる。歌声の先には女が土手に植わる縁菱をつみとっている、あたりにその香りは満ちあふれている。
閶門 閶門は蘇州城(呉城)の西北門で、「閶闔門」(しょうこうもん)が正式の名。この門は運河を舟で来た人が蘇州に入る場合の正門で、城楼から城内を見わたすと、眼下に蘇州一の賑やかな街並みが見下ろせる。門外は渡津になっており、運河を航行してきた舟がひしめき合って停泊する。呉の都の門陳後宮 李商隠:kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 53詩参照。○日下 太陽が沈みかけてきたことしめす。 ○呉歌 南朝の時、長江下流地域でうたわれた民間歌謡。長江中流域の西曲と並んで恋の歌が多いがこの頃は、夫を徴兵で送り出した妻たちの哀調の詩であったが、蘇州という地では、商人の夫が旅立った時の詩である。○陂路 堤の上の道。○緑菱 菱は江南の地の歌謡に菱摘みをうたう情歌が多い。上の句の呉歌がかかってくる。天子に反旗を立てた潘鎮の劉稹を連想させる。○香満満 菱の香りがいっぱいにあふれる。摘み取っているので、その香が充満している。
 
後渓暗起鯉魚風、船旗閃断芙蓉幹。』
はるか向こうの渓谷からはそっと鯉魚の風のように反旗をたてものがいる、船の旗がはためきせん光が走った枯れた芙蓉の葉のように揺れ、枯れた茎が折れるように王朝は揺れたのだ。』
鯉魚風 九月の風を指す。李賀「江楼曲」に「楼前流水 江陵の道、鯉魚の風起こりて芙蓉老ゆ」。○船旗閃断 蓮の葉が風に揺れる。強大で有力藩鎭の劉稹の反旗を示す。王朝に激震が走ったが、だれも制圧できなかった。


傾身奉君畏身軽、雙橈兩漿樽酒清。
わが全身全霊を捧げて天子にお仕えするには、その身が低かったである。一組の橈、一対の漿櫓、そして清らかなお酒のようにこの地を鎮めた。
傾身 全身全霊をかたむける。○身軽 身分が低いことをいう。石雄は地方の低い武官から身を起こし、叛乱を平定している。○雙橈兩漿 橈も漿も舟を漕ぐ道具。討伐軍を整え、平定したことを示す。


莫因風雨罷團扇、此曲断腸唯北聲。』
秋の冷たい風雨がおさまるように叛乱、謀反を一人の副将軍配によってもたらされたがそれによる論功がなされない。この「愁扇」の曲、身を切るほど切ないのは、まさに北の副将の声なのだ。』
団扇 軍配。○此曲 秋の扇をうたった「怨歌行」を指す。○北声 李商隠「漫成五章 其四 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 107」この詩の題材 石雄は唐王朝を救った英雄なのに代北偏師でしかなかった。貴族社会であり、門閥社会であったため、出身身分が低かったため正当な評価をされなかった。


低樓小徑城南道、猶自金鞍封芳草。』
そんな出来事がありながら、小さな楼から小路をたどって城南の道に来てみたら、そこには今も遊び呆けている貴族らの黄金の鞍をつけた馬が、芳草を食んでいました。』
金鞍 戦となったらなんにもできないが豪華な鞍をつけている。女遊びは超一流の貴族たち、馬だけが芳草を食んでいることによって、富貴の男の女遊びを連想させる。「無題(鳳尾香羅薄幾重) 李商隠 20」詩にも「斑騅只繋垂楊岸」(斑騅は只繋ぐ 垂楊の岸)という。
 
右一曲 湖中
この詩は、舟に乗っておきに出て詠ったものである。


(解説)
○詩型 七言古詩。
○押韻 遠、満。幹。/軽、清。聲。』/道、草。



「楼上曲は仙界の女を慕う男」を装った、王朝、宦官による皇帝毒殺事件をうたい。「湖中曲は貴顕の男に棄てられた女、男女双方の立場から恋の苦しさを歌行のかたちを借りてうたうこと」を装い、出身身分の低い英雄が正当な評価を得られなかったことを詠うものだ。

 どちらも腐りきった唐王朝を批判するもので、自分のみを投じてやる価値も何もないということ、貴族門閥社会の問題点を指摘している。晩唐期には宦官の勢いは凄まじいものがあったということなのだ。