燕臺詩四首 其四 冬#1 李商隠134 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 134-#1


其四 冬 #1
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。
天により冬を知らされ、東の空から日は昇り、西の空へとまもなく沈むように天子は歿されたのだ。后妃はひとり寂しく大空を飛ぶのであり、龍の女としての存在に連れ添う相手もいなくなった。
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
青渓の娘であった「玉環」、白石の青年「寿王」はもう向かい合うこともなく、二人の使った奥座敷はもう遠いものとなった、今度は睦まじく鳳凰が棲む蒼梧の野にかわったのだ。
凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
凍てついた壁のように何もできない、発言もできなくなった。庭の木々も霜の花をつけるように、白くなり、主張していたいろんな考えも凍ったのだ。王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も断ち切られ、その芯は死に絶えた。
浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』

みだりにお迎え舟のようにあでやかな船に乗ったとして月の世界を思っても無駄だ、月の婦蛾があの楊貴妃の美しさに及ぶものではない。
#2
楚管蠻弦愁一概,空城罷舞腰支在。
當時歡向掌中銷,桃葉桃根雙姊妹。」
破鬟倭墮淩朝寒,白玉燕釵黃金蟬。
風車雨馬不持去,蠟燭啼紅怨天曙。』
右冬

○押韻 下,寡。野。野。子。/概,在。妹。/寒,蟬。/去,曙。


其の四 冬
天の東に日出でて 天の西に下る、雌鳳(しほう)は孤り飛び 女龍(じょりょう)は寡なり。
青渓と白石と相い望まず、堂中遠きこと 蒼梧(そうご)の野より甚だし。
凍壁の霜華(そうか) 交(こも)ごも隠起す、芳根(ほうこん)は中断し香心は死す。
浪乗(ろうじょう)す 画舸(がか)にて蟾蜍(せんじょ)を憶う、月蛾 末だ 必ずしも嬋娟(せんけん)子ならず。

楚管(そかん) 蛮絃(ばんげん) 愁いは一概、空域 舞いを罷(や)めて腰支(ようし)在り。
当時の歓びは掌中に銷ゆ、桃葉(とうよう) 桃根(とうこん) 双姉妹。
破鬟(はかん)の倭墮(わだ)朝寒を淩(しの)ぐ,白玉の燕釵(えんさ)黃金の蟬。
風車雨馬 持ち去らず,蠟燭(ろうしょく) 啼紅(ていこう) 天の曙くる を 怨む。』




燕臺詩四首 其四 冬#1 現代語訳と訳註
(本文)
其四 冬
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』


(下し文) 其の四 冬
天の東に日出でて 天の西に下る、雌鳳(しほう)は孤り飛び 女龍(じょりょう)は寡なり。
青渓と白石と相い望まず、堂中遠きこと 蒼梧(そうご)の野より甚だし。
凍壁の霜華(そうか) 交(こも)ごも隠起す、芳根(ほうこん)は中断し香心は死す。
浪乗(ろうじょう)す 画舸(がか)にりて蟾蜍(せんじょ)を憶う、月蛾末だ必ずしも嬋娟(せんけん)子ならず。


(現代語訳) 冬 #1
天により冬を知らされ、東の空から日は昇り、西の空へとまもなく沈むように天子は歿されたのだ。后妃はひとり寂しく大空を飛ぶのであり、龍の女としての存在に連れ添う相手もいなくなった。
青渓の娘であった「玉環」、白石の青年「寿王」はもう向かい合うこともなく、二人の使った奥座敷はもう遠いものとなった、今度は睦まじく鳳凰が棲む蒼梧の野にかわったのだ。
凍てついた壁のように何もできない、発言もできなくなった。庭の木々も霜の花をつけるように、白くなり、主張していたいろんな考えも凍ったのだ。王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も断ち切られ、その芯は死に絶えた。
みだりにお迎え舟のようにあでやかな船に乗ったとして月の世界を思っても無駄だ、月の婦蛾があの楊貴妃の美しさに及ぶものではない。


(訳注) 其四 冬 #1
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。

天により冬を知らされ、東の空から日は昇り、西の空へとまもなく沈むように天子は歿されたのだ。后妃はひとり寂しく大空を飛ぶのであり、龍の女としての存在に連れ添う相手もいなくなった。
天東日出 太陽が東から昇ったと思えばすぐ・天西下 西に下る。冬の日の短さをいう。○雌鳳孤飛  雌鳳は后妃、お相手の天子が死んだことを意味するもの。・女龍寡 英雄を相手に不義をしていた后妃が天子の詩に伴って、不義の相手と会えなくなったことを示す。寡は女性が連れ合いの存在がなくなったこと。 燕臺詩四首 其一 春#1 では「雄龍雌鳳」身分の違う男女交際を詠ったことが関連している。
 
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
青渓の娘であった「玉環、白石の青年「寿王」はもう向かい合うこともなく、二人の使った奥座敷はもう遠いものとなった、今度は睦まじく鳳凰が棲む蒼梧の野にかわったのだ。
青溪 南朝の「楽府神絃歌の青渓小姑曲のことで、ここでは梁の呉均の「続斉諧記」に出てくる齢若い仙女を指す。会稽の超文韶なる者と、つかのまの歌合せをして消え去ったという。○ 思いをやるきみ。女性が男性を呼ぶ親称。
無題(垂幡深く下ろす)
重幃深下莫愁堂、臥後清宵細細長。
紳女生涯原是夢、小姑居処本無郎。
風波不信菱枝弱、月露誰敦桂葉香。
直道相思了無益、未妨啁悵是清狂。

李商隠 10 無題(重幃深下莫愁堂) 題をつけられない詩。

(莫愁のことを詠う。)其二夏篇も参照燕臺詩四首 其二 夏#1 

白石 「白石即の曲」がある。それに借りて玄宗の子の寿王とその妃の楊環をしめす。○不相望 玄宗に見初められ女道士とならせ、太真と呼んだ。逢うことはできなくなった。○堂上遠甚 大切な座敷を意味する。○蒼梧野 仙界の蒼梧桐は鳳凰の食べ物でこれがないと住まない。玄宗と楊貴妃の愛の巢をしめす。


凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
凍てついた壁のように何もできない、発言もできなくなった。庭の木々も霜の花をつけるように、白くなり、主張していたいろんな考えも凍ったのだ。王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も断ち切られ、その芯は死に絶えた。
凍壁 壁まで凍り付いて身動きが取れないさまを比喩として言う。○霜華 庭の常緑の葉に霜の花。○交隠起 くぼんだり盛り上がったり。○芳根 王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も枯れる。

浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』
みだりにお迎え舟のようにあでやかな船に乗ったとして月の世界を思っても無駄だ、月の婦蛾があの楊貴妃の美しさに及ぶものではない。
浪乗 浪+動詞 浪費はみだりに~を費やす。ここではみだりに舟に乗ること。○畫舸 彩色を施した船。○蟾蜍 月を指す。河内詩二首 其一 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 126
鼉鼓沈沈虬水咽、秦絲不上蠻絃絶。
常蛾衣薄不禁寒、蟾蜍夜艶秋河月。』
碧城冷落空豪煙、簾輕幕重金鉤欄。
霊香不下兩皇子、孤星直上相風竿。』
八桂林邊九芝草、短襟小鬢相逢道。
入門暗數一千春、願去閏年留月小。』
梔子交加香蓼繁、停辛佇苦留待君。』
(薬を飲んで帰られなくなった嫦娥は薄いころもをまとった月の女神となり寒さに震えている。月は蟾蜍に食べられた三日月になってはつややかに美しい、銀河と月が輝く秋の夜のできごとだ。)
〇月蛾 月のなかに住む嫦娥。李商隠 12 嫦娥詩参照。〇嬋娟 美しいこと。・嬋娟子で美女。月まで婦娥、嫦娥を連れて帰ったとしても楊貴妃の美しさと比べることさえできない。