平淮西碑 (韓碑)#4 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 138


平淮西碑 (韓碑)#4
表日臣愈昧死上、詠神聖功書之碑。
かくて官府に奉る上奏文を韓愈はかきあげた、それは、「臣韓愈、昧死して上る次第であります」から始まり、「このたびの戦勝の功、即ち天子有徳の証拠である功績を、かくの如く碑文に詠いあげる。」と献上したのであった。
碑高三丈字如斗、負以霊鼇蟠以螭。
碑石の高さは三丈もあり、その字はまた斗の如く大きなものだった。礎石には神秘な巨亀のかたちが刻まれ、また書に威厳をそえる模様とし周囲にみずちをめぐらしていた。
句奇語重喩者少、讒之天子言其私。
その一句一句は、常識を超えた独特の表現であり、一語一語がおごそかで重く、そのため、その卓越した表現力を理解できるものが少なかったのだ。特に、李愬の一族は不満をもったようで、よく理解ができないのに、その文章が高が文人ごときの私情にかたよっていると天子に讒言を申しでた。
長縄百尺拽碑倒、麤砂大石相磨治。
立されていた百尺もある碑石は長い縄でしばられ倒されてしまったのだった。その上にあらい磨き砂をまいて、碑文を磨滅させてしまい、別の文章をはりなおすということになったのである。



表に 日く 臣愈 昧死して上(たてまつ)る、神聖の功を詠じ之を碑に書せりと。
碑の高さ三丈 字は斗の如く、負わすに霊鼇(れいごう)を以てし 蟠(めぐら)すに 螭(ち)を以てす。
句は奇 語は重 喩(さと)る 者少なし、之を天子に讒(そし)るあり 其の私を言うと。
長縄(ちょうじょう)百尺 碑を拽きて倒し、麤砂(そさ)と大石(たいせき) 相い 磨治(まち)す




平淮西碑 (韓碑)#4 現代語訳と訳註
(本文)

表日臣愈昧死上、詠神聖功書之碑。
碑高三丈字如斗、負以霊鼇蟠以螭。
句奇語重喩者少、讒之天子言其私。
長縄百尺拽碑倒、麤砂大石相磨治。

(下し文)
表に 日く 臣愈 昧死して上(たてまつ)る、神聖の功を詠じ之を碑に書せりと。
碑の高さ三丈 字は斗の如く、負わすに霊鼇(れいごう)を以てし 蟠(めぐら)すに 螭(ち)を以てす。
句は奇 語は重 喩(さと)る 者少なし、之を天子に讒(そし)るあり 其の私を言うと。
長縄(ちょうじょう)百尺 碑を拽きて倒し、麤砂(そさ)と大石(たいせき) 相い 磨治(まち)す


(現代語訳)
かくて官府に奉る上奏文を韓愈はかきあげた、それは、「臣韓愈、昧死して上る次第であります」から始まり、「このたびの戦勝の功、即ち天子有徳の証拠である功績を、かくの如く碑文に詠いあげる。」と献上したのであった。
碑石の高さは三丈もあり、その字はまた斗の如く大きなものだった。礎石には神秘な巨亀のかたちが刻まれ、また書に威厳をそえる模様とし周囲にみずちをめぐらしていた。
その一句一句は、常識を超えた独特の表現であり、一語一語がおごそかで重く、そのため、その卓越した表現力を理解できるものが少なかったのだ。特に、李愬の一族は不満をもったようで、よく理解ができないのに、その文章が高が文人ごときの私情にかたよっていると天子に讒言を申しでた。
立されていた百尺もある碑石は長い縄でしばられ倒されてしまったのだった。その上にあらい磨き砂をまいて、碑文を磨滅させてしまい、別の文章をはりなおすということになったのである。

(訳注)
表日臣愈昧死上、詠神聖功書之碑。

かくて官府に奉る上奏文を韓愈はかきあげた、それは、「臣韓愈、昧死して上る次第であります」から始まり、「このたびの戦勝の功、即ち天子有徳の証拠である功績を、かくの如く碑文に詠いあげる。」と献上したのであった。
 君主または官府に奉る書状、及びその文体を表という。
昧死 上書の冒頭に用いる言葉。昧は冒昧。次の言葉がもし不当ならば死をかけてあやまる、という意味である。
神聖功 神聖は天子に関する事柄につける形容、淮西の賊(呉元済―#1と#2参照)を平げた戦勝を、天子有徳のしるしとして韓愈がのべた事をいうもの。


碑高三丈字如斗、負以霊鼇蟠以螭。
碑石の高さは三丈もあり、その字はまた斗の如く大きなものだった。礎石には神秘な巨亀のかたちが刻まれ、また書に威厳をそえる模様とし周囲にみずちをめぐらしていた。
 十升を斗というが、その量るますのように器が方形であることに借りて、碑文の字体の大きさの喩えとした。○負以霊鼇 霊鼇は神秘的な大がめ。碑石をその大亀をかたどった彫石の甲の上に建てたことをいう。
蟠以螭 螭はみずち。想像上の神獣で竜の角のないものを螭という。碑石の周囲に螭模様の飾りを彫りつけたことをいう。


句奇語重喩者少、讒之天子言其私。
その一句一句は、常識を超えた独特の表現であり、一語一語がおごそかで重く、そのため、その卓越した表現力を理解できるものが少なかったのだ。特に、李愬の一族は不満をもったようで、よく理解ができないのに、その文章が高が文人ごときの私情にかたよっていると天子に讒言を申しでた。
句奇 奇は独特の、或いは独自なという意味し
語重 おごそかな言葉の重重しいこと。重厚な表現。
 理解する。
言其私 「旧唐書」韓愈伝に「碑辞多く装度の事を叙ぶ。時に蔡に入りて呉元済を捕えしは李愬の功第一なり。愬は之を不平とす。愬の妻(唐安公主の女)は禁中に出入し、因りて碑辞は実ならずと訴う。詔して愈の文を磨去せしめ、翰林学士段文員(773―835年)に命じて重ねて文を撰せしめて石に刻めり。」とある。南宋の葛立方の 「韻語陽秋」には、それを訴えたのは李愬の子であったと考証する。


長縄百尺拽碑倒、麤砂大石相磨治。
建立されていた百尺もある碑石は長い縄でしばられ倒されてしまったのだった。その上にあらい磨き砂をまいて、碑文を磨滅させてしまい、別の文章をはりなおすということになったのである。
靡砂 あらい砂。
 
この章の解説。
皇帝の諫言には耳を貸さない正当な人を貶める讒言には簡単に耳を貸すばかりか、さらに推し進めることをやっている。正当な賢臣を消していく、宦官のやり口にのってしまったのである。同じころ元稹も宦官の諫言で通州司馬に左遷される。