井泥四十韻 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 142

李商隠の詩のなかでもとりわけ長い作品の一つ、八十句にのぼる。地中から運び出された泥が美しい庭園に身を置く境遇の変化をうたいながら、そこに寓意をこめる。発言が生かされない地位や、若い時期での失敗に、「羹に懲りて」いるため、難解な詩となっている。

第二場面


井泥四十韻 李商隠(第2場面)

皇都依仁里,西北有高齋。
昨日主人氏,治井堂西陲。」
工人三五輩,輦出土與泥。
到水不數尺,積共庭樹齊。」
他日井甃畢,用土益作堤。
曲隨林掩映,繚以池周回。」
下去冥寞穴,上承雨露滋。
寄辭别地脈,因言謝泉扉。』-#1
升騰不自意,疇昔忽已乖。
まさか地上に飛び上がってくるとは自分の思いにはなかった。昔とはまるで別の世界にいきなり来たようだ。
伊餘掉行鞅,行行來自西。」
さて、私は馬に腹帯を締めてあげ旅の支度をととのえ、西方からずっと旅を続けてくるべくしてやってきた。
一日下馬到,此時芳草萋。
それはある日、到着して馬を下りた、そこにはちょうど春の草が青々と茂っていた。
四面多好樹,旦暮雲霞姿。」
あたり一面、美しい樹木に恵まれていた、朝から夕方まで雲やかすみは鮮やかに照り映えていた。
晚落花滿地,幽鳥鳴何枝。
日暮れに夕映えにかがやく花が池を満たしていた、奥深い所で鳴き声だけ聞こえる烏がどこかの枝で鳴いていた。
蘿幄既已薦,山樽亦可開。」
つたの幌幕も用意がととのいこもむしろも敷かれた、粗末な樽でいいからここで開けるのだ。
待得孤月上,如與佳人來。
もの寂しげな月があがってくるのを待っていると、美しい人と一緒に出てくるような気持ちだった。
因茲感物理,惻愴平生懷。』-
#2
これに触発されて万物を支配する根本原理が感得され、常日頃の思いが刺すように胸を痛めている。
茫茫此群品,不定輪與蹄。
喜得舜可禪,不以瞽瞍疑。」
禹竟代舜立,其父籲咈哉。
嬴氏並六合,所來因不韋。」
漢祖把左契,自言一布衣。
當塗佩國璽,本乃黄門擕。」
長戟亂中原,何妨起戎氐。
不獨帝王耳,臣下亦如斯。』-#3
伊尹佐興王,不藉漢父資。
磻溪老釣叟,坐爲周之師。」
屠狗與販繒,突起定傾危。
長沙啟封土,豈是出程姬。」
帝問主人翁,有自賣珠兒。
武昌昔男子,老苦爲人妻。」
蜀王有遺魄,今在林中啼。
淮南雞舐藥,翻向雲中飛。』-#4
大鈞運群有,難以一理推。
顧於冥冥内,爲問秉者誰。」
我恐更萬世,此事愈云爲
猛虎與雙翅,更以角副之。」
鳳凰不五色,聯翼上雞棲。
我欲秉鈞者,朅來與我偕。」
浮雲不相顧,寥泬誰爲梯。
悒怏夜將半,但歌井中泥。』-#5


井泥四十韻
皇都 依仁里、西北に高斎有り。
昨日 主人氏、井を治む 堂の西陸。
工人 三五輩、肇び出だす 土と泥と。
水に到るに数尺ならざるに、積めば庭樹と斉し。

他日 井禁 畢らば、土を用いて益に堤を作らん。
曲がるに林の掩映するに随い、練るに池の周廻するを以てす。
下は冥実の穴を去り、上は雨露の滋いを承く。
詞を寄せて地脈に別れ、困りて言いて泉扉に謝す。
昇騰 自ら意とせず、疇昔 忽(いささか)巳(すで)に乖(そむ)くと。


現代語訳と訳註
(本文)

升騰不自意,疇昔忽已乖。
伊餘掉行鞅,行行來自西。」
一日下馬到,此時芳草萋。
四面多好樹,旦暮雲霞姿。」
晚落花滿地,幽鳥鳴何枝。
蘿幄既已薦,山樽亦可開。」
待得孤月上,如與佳人來。
因茲感物理,惻愴平生懷。』-#2

(下し文)
昇騰 自ら意とせず、疇昔 忽(いささか)巳(すで)に乖(そむ)くと。
伊(これ) 餘(よ)は 行鞅(こうおう)を掉(ただ)し,行き行きて 自ら西に來たる。」
一日 下馬し到れば,此の時 芳草 萋たり。
四面 好樹 多く,旦暮 雲霞の姿。」

晚落ち 花は 地に滿ち,幽鳥 鳴くは 何れの枝。
蘿幄 既に 薦しき已き,山樽 亦 開く可し。」
孤月の上るを 待ち得て,佳人の來るが如き與(くみ)する。
茲(これ)に因りて物理に感ず,惻愴 平生の懷い。』-#2

(現代語訳)
まさか地上に飛び上がってくるとは自分の思いにはなかった。昔とはまるで別の世界にいきなり来たようだ。
さて、私は馬に腹帯を締めてあげ旅の支度をととのえ、西方からずっと旅を続けてくるべくしてやってきた。
それはある日、到着して馬を下りた、そこにはちょうど春の草が青々と茂っていた。
あたり一面、美しい樹木に恵まれていた、朝から夕方まで雲やかすみは鮮やかに照り映えていた。
日暮れに夕映えにかがやく花が池を満たしていた、奥深い所で鳴き声だけ聞こえる烏がどこかの枝で鳴いていた。
つたの幌幕も用意がととのいこもむしろも敷かれた、粗末な樽でいいからここで開けるのだ。
もの寂しげな月があがってくるのを待っていると、美しい人と一緒に出てくるような気持ちだった。
これに触発されて万物を支配する根本原理が感得され、常日頃の思いが刺すように胸を痛めている。


(訳注)
升騰不自意,疇昔忽已乖。

まさか地上に飛び上がってくるとは自分の思いにはなかった。昔とはまるで別の世界にいきなり来たようだ。
昇騰 上昇する。地下から地上にあがったことをいう。〇疇昔〔「疇」は以前、先に、の意〕過去のある日。昔。また、昨日。○忽已乖 以前とは全く違っているさまをいう。

伊餘掉行鞅,行行來自西。」
さて、私は馬に腹帯を締めてあげ旅の支度をととのえ、西方からずっと旅を続けてくるべくしてやってきた。
 さて、てなことで。○掉行鞅 馬の支度をする。・はむながい馬の胸から鞍につけるひも。はらおび。束縛。「掉」はふる、うごかす。「行」は旅行く意を添えて「鞅」を二字にしたもの。○ 卓が青々と茂っているさま。
 
一日下馬到,此時芳草萋。
それはある日、到着して馬を下りた、そこにはちょうど春の草が青々と茂っていた。

四面多好樹,旦暮雲霞姿。」
あたり一面、美しい樹木に恵まれていた、朝から夕方まで雲やかすみは鮮やかに照り映えていた。
旦暮 朝と日暮れ。○雲霞 朝焼け、夕焼けで色鮮やかに染められた雲と霞。

晚落花滿池,幽鳥鳴何枝。
日暮れに夕映えにかがやく花が池を満たしていた、奥深い所で鳴き声だけ聞こえる烏がどこかの枝で鳴いていた。
幽鳥 奥深い所で鳴き声だけ聞こえる烏。

蘿幄既已薦,山樽亦可開。」
つたの幌幕も用意がととのいこもむしろも敷かれた、粗末な樽でいいからここで開けるのだ。
薙幌 「薙」はつた。「幌」はとばりの幔幕。つたが一面に垂れ下がるのをとばりに見立てる。○ 1 マコモを粗く編んだむしろ。現在は多く、わらを用いる。こもむしろ。「荷車に―を掛ける」 2 「薦被(こもかぶ)り2」の略。おこも。 3 (「虚無」とも書く)「薦僧(こもそう)」の略。 4 マコモの古名。 ○山樽 木でこしらえた粗末な樽。豪華な金色などとは逆に、野趣に富む酒器。李白に「山樽を詠ず」二首がある。

待得孤月上,如與佳人來。
もの寂しげな月があがってくるのを待っていると、美しい人と一緒に出てくるような気持ちだった。
孤月 もの寂しげな月。○佳人 美人。いいひと。
 
因茲感物理,惻愴平生懷。』
これに触発されて万物を支配する根本原理が感得され、常日頃の思いが刺すように胸を痛めている。
物理 万物を支配する根本原理。杜甫の
曲江二首 其一
一片花飛減却春、風飄万点正愁人。
且看欲尽花経眼、莫厭傷多酒入唇。
江上小堂巣翡翠、苑辺高塚臥麒麟。
細推物理須行楽、何用浮名絆此身。
曲江 二首  其の一
一片  花飛んで  春を減却(げんきゃく)し
風は万点を飄(ひるが)えして  正に人を愁えしむ
且つ看ん尽きんと欲する花の眼(まなこ)を経(ふ)るを
厭う莫れ 多きを傷(そし)らるる酒の唇に入るを
江上(こうじょう)の小堂に翡翠(ひすい)巣(すく)い
苑辺(えんへん)の高塚(こうちょう)に麒麟臥(ふ)す
細かに物理(ぶつり)を推(お)すに 須らく行楽すべし
何ぞ用いん 浮名もて此の身を絆(ほだ)すことを。○惻愴 悲痛な思いをあらわす。


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