井泥四十韻 第五場面 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 145

李商隠の詩のなかでもとりわけ長い作品の一つ、八十句にのぼる。地中から運び出された泥が美しい庭園に身を置く境遇の変化をうたいながら、そこに寓意をこめる。発言が生かされない地位や、若い時期での失敗に、「羹に懲りて」いるため、難解な詩となっている。


第五場面

皇都依仁里,西北有高齋。
昨日主人氏,治井堂西陲。」
工人三五輩,輦出土與泥。
到水不數尺,積共庭樹齊。」
他日井甃畢,用土益作堤。
曲隨林掩映,繚以池周回。」
下去冥寞穴,上承雨露滋。
寄辭别地脈,因言謝泉扉。』-#1
升騰不自意,疇昔忽已乖。
伊餘掉行鞅,行行來自西。」
一日下馬到,此時芳草萋。
四面多好樹,旦暮雲霞姿。」
晚落花滿地,幽鳥鳴何枝。
蘿幄既已薦,山樽亦可開。」
待得孤月上,如與佳人來。
因茲感物理,惻愴平生懷。』-#2
茫茫此群品,不定輪與蹄。
喜得舜可禪,不以瞽瞍疑。」
禹竟代舜立,其父籲咈哉。
嬴氏並六合,所來因不韋。」
漢祖把左契,自言一布衣。
當塗佩國璽,本乃黄門擕。」
長戟亂中原,何妨起戎氐。
不獨帝王耳,臣下亦如斯。』-#3
伊尹佐興王,不藉漢父資。
磻溪老釣叟,坐爲周之師。」
屠狗與販繒,突起定傾危。
長沙啟封土,豈是出程姬。」
帝問主人翁,有自賣珠兒。
武昌昔男子,老苦爲人妻。」
蜀王有遺魄,今在林中啼。
淮南雞舐藥,翻向雲中飛。』-#4
大鈞運群有,難以一理推。
天下の公平なかで万物がうごめいている。それをただ一つの物差しで推し量るのは難しい。
顧於冥冥内,爲問秉者誰。」
深遠な宇宙のそのなかを考えてみると、それでこれを主宰しているのは誰なのかと尋ねてみたくなる。
我恐更萬世,此事愈云爲。
私がおそれていることは、これから万世が経たとしてのち、世界の変転がここに示す通り、いよいよさまざまな現象を生じることなのだ。
猛虎與雙翅,更以角副之。」
獰猛な虎に二枚の羽を付け加える、そのうえ更に角までそえてあげるようなこと。それは宦官を重臣にして軍隊を任せそのうえ、総大将、宰相にまですることのように絶対権力を与えてしまうような事象。
鳳凰不五色,聯翼上雞棲。
梧桐の葉が茂るところにしか棲まない鳳凰も五色の羽を失ってしまうこと。翼を連ねて鶏小屋にのぼっているように皇帝の地位はあっても実質的に宦官に全権を奪われるような事象。
我欲秉鈞者,朅來與我偕。」
私は、天下国家の公平な施政、公平な采配をするものの出現を願います、そのような人物の到来することは世界の誰もが願っていることなのだ。
浮雲不相顧,寥泬誰爲梯。
ところが天下を見下ろしているはずの浮き雲はまるで振り返えらないのだ。雲が湧き出る巌谷がからっぽで大空に梯子をかけられることを誰ができるのだ。天下国家を思う指導者がいないのだ。
悒怏夜將半,但歌井中泥。』-
#5
憂鬱で不安な気持ちがたまっていくまま夜も半ばを過ぎた。できるのはただ漢の皇帝や、泥のように消えていったものの「井中の泥」の歌を歌うことだけなのだ。

大鈞 群有を運(めぐ)らす、一理を以て推し難し。
冥冥の内を顧(かえり)みて、問いを為す 秉る者は誰ぞと。
我れは恐る 万世を更(へ)て、此の事 愈(いよ)いよ 云為(うんい)せんを。
猛虎 双翅を与えられ、更に角を以て之に副う。
鳳凰は五色とせず、翼を聯ねて雞棲に上らん。
我れは欲す 鈞を秉る者、朅来して我れと偕にするを
浮雲 相い顧みず、寥泬 誰か梯を爲さん。
悒怏として 夜 將に 半、但 歌う 井中の泥。



井泥四十韻 第五場面 現代語訳と訳註
(本文) -#5

大鈞運群有,難以一理推。
顧於冥冥内,爲問秉者誰。」
我恐更萬世,此事愈雲爲。
猛虎與雙翅,更以角副之。」
鳳凰不五色,聯翼上雞棲。
我欲秉鈞者,朅來與我偕。」
浮雲不相顧,寥泬誰爲梯。
悒怏夜將半,但歌井中泥。』

(下し文)
大鈞 群有を運(めぐ)らす、一理を以て推し難し。
冥冥の内を顧(かえり)みて、問いを為す 秉る者は誰ぞと。
我れは恐る 万世を更(へ)て、此の事 愈(いよ)いよ 云為(うんい)せんを。
猛虎 双翅を与えられ、更に角を以て之に副う。
鳳凰は五色とせず、翼を聯ねて雞棲に上らん。
我れは欲す 鈞を秉る者、朅来して我れと偕にするを
浮雲 相い顧みず、寥泬 誰か梯を爲さん。
悒怏として 夜將に半、但 歌う 井中の泥。

(現代語訳)
天下の公平なかで万物がうごめいている。それをただ一つの物差しで推し量るのは難しい。
深遠な宇宙のそのなかを考えてみると、それでこれを主宰しているのは誰なのかと尋ねてみたくなる。
私がおそれていることは、これから万世が経たとしてのち、世界の変転がここに示す通り、いよいよさまざまな現象を生じることなのだ。
獰猛な虎に二枚の羽を付け加える、そのうえ更に角までそえてあげるようなこと。それは宦官を重臣にして軍隊を任せそのうえ、総大将、宰相にまですることのように絶対権力を与えてしまうような事象。
梧桐の葉が茂るところにしか棲まない鳳凰も五色の羽を失ってしまうこと。翼を連ねて鶏小屋にのぼっているように皇帝の地位はあっても実質的に宦官に全権を奪われるような事象。
私は、天下国家の公平な施政、公平な采配をするものの出現を願います、そのような人物の到来することは世界の誰もが願っていることなのだ。
ところが天下を見下ろしているはずの浮き雲はまるで振り返えらないのだ。雲が湧き出る巌谷がからっぽで大空に梯子をかけられることを誰ができるのだ。天下国家を思う指導者がいないのだ。
憂鬱で不安な気持ちがたまっていくまま夜も半ばを過ぎた。できるのはただ漢の皇帝や、泥のように消えていったものの「井中の泥」の歌を歌うことだけなのだ。


(訳注)
大鈞運群有,難以一理推。
天下の公平なかで万物がうごめいている。それをただ一つの物差しで推し量るのは難しい。
大鈞 鈞衡、天下の公平。おおきな天。杜甫「奉贈鮮於京兆二十韻」○群有 万物。


顧於冥冥内,爲問秉者誰。」
深遠な宇宙のそのなかを考えてみると、それでこれを主宰しているのは誰なのかと尋ねてみたくなる。
冥冥 深遠な宇宙。


我恐更萬世,此事愈云爲。
私がおそれていることは、これから万世が経たとしてのち、世界の変転がここに示す通り、いよいよさまざまな現象を生じることなのだ。
此事 ここに示す通り。この句から後に示す事象のこと。○云為 言動。雲の動きのように定めのない運動、現象。ここでは、世界が変化し続けていって、さまざまな奇異な現象を生じること。


猛虎與雙翅,更以角副之。」
獰猛な虎に二枚の羽を付け加える、そのうえ更に角までそえてあげるようなこと。それは宦官を重臣にして軍隊を任せそのうえ、総大将、宰相にまですることのように絶対権力を与えてしまうような事象。
猛虎 もともと弊猛な虎に翼や角が加わってさらに弊猛になる変化。さまざまなことで力を持ってきた宦官に地位や権限まで与えていることを示している。


鳳凰不五色,聯翼上雞棲。
梧桐の葉が茂るところにしか棲まない鳳凰も五色の羽を失ってしまうこと。翼を連ねて鶏小屋にのぼっているように皇帝の地位はあっても実質的に宦官に全権を奪われるような事象。
○鳳凰 神聖な鳳凰が凡庸な鳥になってしまう変化。


我欲秉鈞者,朅來與我偕。」
私は、天下国家の公平な施政、公平な采配をするものの出現を願います、そのような人物の到来することは世界の誰もが願っていることなのだ。
秉鈞者 造物主。○朅來 去来する。ここでは来の意味。天下国家の公平な施政。


浮雲不相顧,寥泬誰爲梯。
ところが天下を見下ろしているはずの浮き雲はまるで振り返えらないのだ。雲が湧き出る巌谷がからっぽで大空に梯子をかけられることを誰ができるのだ。天下国家を思う指導者がいないのだ。
蓼訳 からっぽでひっそりしているありさま。


悒怏夜將半,但歌井中泥。』-#5
憂鬱で不安な気持ちがたまっていくまま夜も半ばを過ぎた。できるのはただ漢の皇帝や、泥のように消えていったものの「井中の泥」の歌を歌うことだけなのだ。
悒怏 憂鬱で不安な気持ちがたまっていくさま。悶々としたさまをいう。○夜將半 夜の半は。 


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