此日足可惜贈張籍 唐宋詩-215Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-16-#9


(此の日惜しむ可きに足る 張籍に贈る 韓愈)
門人の張籍も無事で、訪ねて来てくれた。韓愈もようやく心の落ち着きを取りもどしたらしい。張籍の去るにあたって、彼は次の詩を贈った。
長い詩であるが、汴州の乱について韓愈の抱いた思いと彼の行動がよくみえる。またこのころには、愈の周囲に孟郊・張籍・李翺・ (賈島)などの人々が集まり、韓門が形成されていたようだ。

この頃の韓愈、孟郊、張籍の年譜。
796年 董晋の招きで宣武軍節度使の幕府に入る。
797年 病気のため一時求職。
    孟郊が来る。
798年 同所で進士科の予備試験員。
    張籍、この試験合格者の中に有る。
799年 董晋歿す。汴州の乱。
    徐州武寧軍節度使 張建封の幕府に入る。
    韓愈、命受けて長安へ。孟郊、呉、越を遊覧。

#8まで
さいわい、韓愈の妻子は無事であった。反乱の知らせに続いて東から来た人があって、その話によって事情はかなり明瞭になったのだが、それによると、韓愈の一家は無事ではあったものの、汴州にいたのでは危険なので、舟で脱出し、韓愈とは逆方向の東へと逃げ、徐州(江蘇省)に落ち着いているという。これを聞いた韓愈は、いちおう葬列を洛陽まで送って行ってから、単身で東へと引き返した。
通行の許可をもらって盟津(孟津に同じ)を経由し、見え隠れしながら谷や岡を越えて行くのだった。
そして日が西に傾いたころ河陽節度使(本拠地は河南省孟県の西)の門を入ったとき、韓愈の馬が疲れはて、物につまずいて倒れてしまった。


此日足可惜贈張籍(愈時在徐籍往謁之辭去作是詩以送)
#8
俄有東來說,我家免罹殃。乘船下汴水,東去趨彭城。
從喪朝至洛,還走不及停。假道經盟津,出入行澗岡。
日西入軍門,羸馬顛且僵。」8
#9
主人願少留,延入陳壺觴。
幕府の主人である節度使の李元はもうしばらく滞留してほしいといってくれた、そして私を幕府の官廷に招き入れて酒と料理とを出してくれた。
卑賤不敢辭,忽忽心如狂。
今や仕えるところも何もない卑賎の身になってしまったということであえて遠慮もなく頂戴した、心はなぜかふらふらして狂っているよ うだった。
飲食豈知味,絲竹徒轟轟。
飲んだり食べたりしても味などわかるものではなく、宴席の琴や笙の音楽もただうるさいばかりであった。
平明脱身去,決若驚鳧翔。
夜明けに幕府の官舎からぬけ出たが、それはここを思いきりよくマガモの飛び立つようなものだった。
黄昏次汜水,欲過無舟航。」9

夕方には氾水に到着した、そこで黄河の流れに乗って旅立とうと思ったのに舟がなかったのだ。
#10
號呼久乃至,夜濟十里黄。中流上灘潬,沙水不可詳。
驚波暗合遝,星宿爭翻芒。轅馬蹢躅鳴,左右泣僕童。
甲午憩時門,臨泉窺鬥龍。」10


俄(にわ)かに東來の説有り、我が家は殃(おう)に罹(かか)るを免る。
船に乗って汴水を下り東に去って彭城に趨(はし)ると。
喪(そう)に従って朝に洛に至り、還走(かんそう)して停(とど)まるに及ばず。 道を仮りて盟津(もうしん)を経(へ)、 出入して澗岡(かんこう)を行く。
日西にして軍門を入れば、羸馬(るいば)顛(つまづ)きて且つ僵(たお)る
9
主人少(しばら)く留まらんことを願い、延(ひ)き入れて壺觴(こしょう)を陳(つら)ぬ。
卑賤(ひせん) 敢て辞せず、忽忽として心狂えるが如し。
飲食 豈味わいを知らんや、 糸竹 徒(いたず)らに轟轟たるのみ。
平明 身を脱して去る、決として驚鳧(きょうふ)の翔るが若し。
黄昏 汜水(しすい)に次(やど)り 過ぎんと欲するに舟航無し。

10
号呼 久しゅうして乃ち至り 夜 十里の黄を済る
中流 灘澤に上るに 沙水 詳らかにす可からず 驚波 暗くして合沓たり 星宿 争って空を翻す 種馬 鏑燭として鳴き 左右 僕童泣く
甲午 時門に憩い、泉に臨んで闘竜を窺うかがう。

宮島(6)

現代語訳と訳註
(本文) #9

主人願少留,延入陳壺觴。
卑賤不敢辭,忽忽心如狂。
飲食豈知味,絲竹徒轟轟。
平明脱身去,決若驚鳧翔。
黄昏次汜水,欲過無舟航。」9


(下し文) #9
主人少(しばら)く留まらんことを願い、延(ひ)き入れて壺觴(こしょう)を陳(つら)ぬ。
卑賤(ひせん) 敢て辞せず、忽忽として心狂えるが如し。
飲食 豈味わいを知らんや、 糸竹 徒(いたず)らに轟轟たるのみ。
平明 身を脱して去る、決として驚鳧(きょうふ)の翔るが若し。
黄昏 汜水(しすい)に次(やど)り 過ぎんと欲するに舟航無し。


(現代語訳)
幕府の主人である節度使の李元はもうしばらく滞留してほしいといってくれた、そして私を幕府の官廷に招き入れて酒と料理とを出してくれた。
今や仕えるところも何もない卑賎の身になってしまったということであえて遠慮もなく頂戴した、心はなぜかふらふらして狂っているよ うだった。
飲んだり食べたりしても味などわかるものではなく、宴席の琴や笙の音楽もただうるさいばかりであった。 夜明けに幕府の官舎からぬけ出たが、それはここを思いきりよくマガモの飛び立つようなものだった。
夕方には氾水に到着した、そこで黄河の流れに乗って旅立とうと思ったのに舟がなかったのだ。

2012new01

(訳注)#9
主人願少留,延入陳壺觴。
主人少(しばら)く留まらんことを願い、延(ひ)き入れて壺觴(こしょう)を陳(つら)ぬ。

幕府の主人である節度使の李元はもうしばらく滞留してほしいといってくれた、そして私を幕府の官廷に招き入れて酒と料理とを出してくれた。
主人 汁州(河南省開封市)に本拠を置く宣武軍節度使の幕府には李元が任命され、赴任していた。○壺觴 酒つぼと、さかずき。
 
卑賤不敢辭,忽忽心如狂。
卑賤(ひせん) 敢て辞せず、忽忽として心狂えるが如し。
今や仕えるところも何もない卑賎の身になってしまったということであえて遠慮もなく頂戴した、心はなぜかふらふらして狂っているよ うだった。
忽忽 速やかなさま。たちまち変わるさま。心がうつろなさま。我を忘れて、うっとりしているさま。  


飲食豈知味,絲竹徒轟轟。
飲食 豈味わいを知らんや、 糸竹 徒(いたず)らに轟轟たるのみ。
飲んだり食べたりしても味などわかるものではなく、宴席の琴や笙の音楽もただうるさいばかりであった。
 ○絲竹 琴と笙の笛。宴席における音楽。


平明脱身去,決若驚鳧翔。
平明 身を脱して去る、決として驚鳧(きょうふ)の翔るが若し。
夜明けに幕府の官舎からぬけ出たが、それはここを思いきりよくマガモの飛び立つようなものだった。
平明 夜明け。明け方。わかりやすくはっきりしていること。また、そのさま。○鳧翔 まがも。互いにくっついて群れをなし、雄は灰色で頭から首にかけて緑色。あひるの原種で、形は、あひるによく似ている。 けり。水鳥の名。形はしぎに似ていて、湖沼などの水辺にすむ。 けり。物事の結着。きまり。 過去の助動詞「けり」にあてて用いられる。「鳧をつける」。
  
黄昏次汜水,欲過無舟航。」9
黄昏 汜水(しすい)に次(やど)り 過ぎんと欲するに舟航無し。
夕方には氾水に到着した、そこで黄河の流れに乗って旅立とうと思ったのに舟がなかったのだ。
 すぎる。駐屯する。宿泊する。星座。至る。到着する。つぎ。まげ、かつら。○汜水 河南省成皐県洛陽の東の防衛線にあたるところ。汜水関。

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