中唐詩239 征婦怨 Ⅷ 張籍<3> 紀頌之の漢詩ブログ

汴州の科挙の地方試験の試験官をしていた韓愈に世話になっている。汴州の乱の後、心配して韓愈を訪ね、一カ月も語り明かしている。乱のこと、友人のこと詩にしたものが『此日足可惜贈張籍』(此の日惜しむ可きに足る 張籍に贈る)である。
此日足可惜贈張籍 唐宋詩-207Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-7-#1


張籍は、中唐の詩人。字は文昌。和州(かしゅう)烏江(安徽省和県)の人。師友の韓愈に目をかけられ、その推薦によって、国子博士となった。楽府に長じている。賈島・孟郊などと唱和して古詩をよくし、盟友の王建とともに七言楽府に優れた作品を発表して「張王」と併称された。名詩人になろうとして、杜甫の詩集を焼いてその灰に膏蜜を混ぜて飲んだという逸話がある。表現は平易だが、世相の矛盾を指摘することは鋭く、白居易から「挙世(いまのよ)には其の倫(たぐい)少なし」と評せられ、後輩の姚合より「古風は敵手なく、新語は是れ人ぞ知る」と称えられた。中唐楽府運動の重要な担い手であり、白居易・元稹とともに「元和体」を形成した。『張司業詩集』8巻がある。


征婦怨  張籍

夫が出征して、取り残された妻の歎きの歌。

九月匈奴殺邊將,漢軍全沒遼水上。
晩秋九月になると、匈奴は辺境守備の将兵を殺して南下し、中原を目指してくる。漢の軍勢は、全て関外の遼河の湿地、平原に没してしまった。
萬里無人收白骨,家家城下招魂葬。
遥かに遠い万里の先に戦士の白骨は収める人が無いのでそのまま残されている。どこの家々でも城壁の外へ出て、死んだ兵士の衣服を振って魂を招いて葬儀をするだけなのだ。
婦人依倚子與夫,同居貧賤心亦舒。
結婚した婦人は、子と夫とに拠り所としている。貧しくつつましくいきなければいけない身分であっても、共に生活をするだけで、心は穏やかになる。
夫死戰場子在腹,妾身雖存如晝燭。

夫が戦場に死んでも、その子が我が腹の中にいる。我が身は生きながらえているといっても、昼間にともした燭のような余分なものでしかない。


征婦怨      

九月 匈奴【きょうど】邊將を殺し,漢軍 全て沒ぼっす 遼水れうすいの上ほとりに。
萬里の白骨 收【おさむ】る人無く,家家 城下に  招魂【しょうこん】して葬す。
婦人は 子と夫【おっと】とに依倚【いい】し,貧賤【ひんせん】なるも同居すれば 心も亦また 舒【の】ぶ。
夫【おっと】 戰場に死するも子 腹に在り,妾身【しょしん】 存りと雖いへども晝の燭の如し。



現代語訳と訳註
(本文) 征婦怨
九月匈奴殺邊將,漢軍全沒遼水上。
萬里無人收白骨,家家城下招魂葬。
婦人依倚子與夫,同居貧賤心亦舒。
夫死戰場子在腹,妾身雖存如晝燭。


(下し文) 征婦怨
九月 匈奴【きょうど】邊將を殺し,漢軍 全て沒ぼっす 遼水れうすいの上ほとりに。
萬里の白骨 收【おさむ】る人無く,家家 城下に  招魂【しょうこん】して葬す。
婦人は 子と夫【おっと】とに依倚【いい】し,貧賤【ひんせん】なるも同居すれば 心も亦また 舒【の】ぶ。
夫【おっと】 戰場に死するも子 腹に在り,妾身【しょしん】 存りと雖いへども晝の燭の如し。


(現代語訳)
夫が出征して、取り残された妻の歎きの歌。
晩秋九月になると、匈奴は辺境守備の将兵を殺して南下し、中原を目指してくる。漢の軍勢は、全て関外の遼河の湿地、平原に没してしまった。
遥かに遠い万里の先に戦士の白骨は収める人が無いのでそのまま残されている。どこの家々でも城壁の外へ出て、死んだ兵士の衣服を振って魂を招いて葬儀をするだけなのだ。
結婚した婦人は、子と夫とに拠り所としている。貧しくつつましくいきなければいけない身分であっても、共に生活をするだけで、心は穏やかになる。
夫が戦場に死んでも、その子が我が腹の中にいる。我が身は生きながらえているといっても、昼間にともした燭のような余分なものでしかない。


(訳注)
征婦怨

夫が出征して、取り残された妻の歎きの歌。
征婦 出征兵士の妻。出征兵士の妻の歎き。


九月匈奴殺邊將、漢軍全沒遼水上。
晩秋九月になると、匈奴は辺境守備の将兵を殺して南下し、中原を目指してくる。漢の軍勢は、全て関外の遼河の湿地、平原に没してしまった。
九月 秋は7,8,9月で9月は晩秋。天高く馬肥ゆる秋(匈奴の軍馬の体調ができあがり、中原進出に最適な気候の晴れわたった秋)のことをいう。○匈奴 西北方の強大な遊牧・騎馬民族で、伝統的に駿馬を生産した。紀元前五世紀から紀元五世紀にかけて活躍し、首長を単于と称する。フン族。○邊將 国境を守る将軍。○漢軍 漢民族の軍隊。また、漢の帝室の軍隊。ここでの「漢」は前出「匈奴」に対して使われ、西北の強大な民族・「匈奴」と、それに対抗する中国の「漢民族」の意で使われている。○沒 このあたりは平原で大きな湿地があり、その場所にしずむ。水中に入りきりになる。おぼれる。○遼水【りょうすい】遼河【りょうが】のことで渤海国と国境線を画す位置付けにあった。回紇東部と渤海国西部の平野を貫いて流れる大河で河口は唐の領域で三か国にまたがる川であった。現在では内モンゴル自治区に源を発し、遼寧省を南西に流れて現遼東湾に注ぐ。拘柳河ともいう。地図に示す通り河北道に位置する。○上 ほとり。
王建『渡遼水』
渡遼水,此去咸陽五千里。
來時父母知隔生,重著衣裳如送死。
亦有白骨歸咸陽,營家各與題本鄕。
身在應無回渡日,駐馬相看遼水傍。 

8世紀唐と周辺国00

萬里無人收白骨、家家城下招魂葬。
遥かに遠い万里の先に戦士の白骨は収める人が無いのでそのまま残されている。どこの家々でも城壁の外へ出て、死んだ兵士の衣服を振って魂を招いて葬儀をするだけなのだ。
○萬里 広大な範囲を形容する。 ○無人 …をする人がいない。 ○ しまう。おさめる。 ○白骨 風雨に晒(さら)されて白くなった骨。李白『戰城南』
去年戰桑乾源,今年戰葱河道。
洗兵條支海上波,放馬天山雪中草。
萬里長征戰,三軍盡衰老。
匈奴以殺戮爲耕作,古來唯見白骨黄沙田。
秦家築城備胡處,漢家還有烽火然。
烽火然不息,征戰無已時。
野戰格鬪死,敗馬號鳴向天悲。
烏鳶啄人腸,銜飛上挂枯樹枝。
士卒塗草莽,將軍空爾爲。
乃知兵者是凶器,聖人不得已而用之。
戦城南 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白175

家家 どこの家も。家ごとに。○城下 城の下。城の周辺。城壁の外。○招魂 死者の魂を呼びかえす。北方に向かって死者の衣を振り、三度その名を呼んで魂を招いた。死者を弔う。


婦人依倚子與夫、同居貧賤心亦舒。
結婚した婦人は、子と夫とに拠り所としている。貧しくつつましくいきなければいけない身分であっても、共に生活をするだけで、心は穏やかになる。 
○婦人 嫁入りした女。士の妻。○依倚 よりかかる。たよる。たよりにする。○同居 一つの家族がいっしょに住む。○貧賤 貧しいと身分が卑しいと。貧しく卑しい。○【じょ】 おだやか。のんびり。ゆっくり。また、のべる。ここは、おだやかの意。


夫死戰場子在腹、妾身雖存如晝燭。
夫が戦場に死んでも、その子が我が腹の中にいる。我が身は生きながらえているといっても、昼間にともした燭のような余分なものでしかない。
子在腹 子どもが腹の中にいる。○妾身 わたし(女性自身)の体。○雖存 生きながらえているものの。○晝燭 余計な物、余分な物の譬喩。役に立たない物の譬喩。
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