中唐詩241 節婦吟 寄東平李司空師道 Ⅷ 張籍<4> 紀頌之の漢詩ブログ

汴州の科挙の地方試験の試験官をしていた韓愈に世話になっている。汴州の乱の後、心配して韓愈を訪ね、一カ月も語り明かしている。乱のこと、友人のこと詩にしたものが『此日足可惜贈張籍』(此の日惜しむ可きに足る 張籍に贈る)である。
此日足可惜贈張籍 唐宋詩-207Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-7-#1


張籍は、中唐の詩人。字は文昌。和州(かしゅう)烏江(安徽省和県)の人。師友の韓愈に目をかけられ、その推薦によって、国子博士となった。楽府に長じている。賈島・孟郊などと唱和して古詩をよくし、盟友の王建とともに七言楽府に優れた作品を発表して「張王」と併称された。名詩人になろうとして、杜甫の詩集を焼いてその灰に膏蜜を混ぜて飲んだという逸話がある。表現は平易だが、世相の矛盾を指摘することは鋭く、白居易から「挙世(いまのよ)には其の倫(たぐい)少なし」と評せられ、後輩の姚合より「古風は敵手なく、新語は是れ人ぞ知る」と称えられた。中唐楽府運動の重要な担い手であり、白居易・元稹とともに「元和体」を形成した。『張司業詩集』8巻がある。


節婦吟 寄東平李司空師道  張籍
君知妾有夫,贈妾雙明珠。
あなたは、わたしに、夫(おっと)がいることを知りながらつきあいました。わたしに一対の輝き光る真珠を贈くってくれました。
感君纏綿意,繋在紅羅襦。
あなたの思いが深く離れがたく心にまとわりついているのに感じているのですね、その思いはこころにきざみ、そして紅(くれない)の薄絹の短い肌着につなぎとめておきます。
妾家高樓連苑起,良人執戟明光裏。
わたしの家の高楼は、苑(にわ)に連(つら)なって起(た)っており、良人(おっと)は、戟(ほこ)を持って皇宮に勤めにあがっています。
知君用心如日月,事夫誓擬同生死。
あなたのお心づかいは、明瞭に分かりましたが、わたしは夫(おっと)につかえて、誓って生死を共にしたいと思っております。
還君明珠雙涙垂,何不相逢未嫁時。

あなたに真珠をお返し致しますが、両目から涙が流れてまいります。恨めしいのは、まだ嫁(とつ)いでいない時にお逢(あ)いできなかったことです。
 

(節婦吟 東平の李司空師道に寄す)   
君 知る 妾【しょう】に 夫と有るを,妾に贈る雙明珠【そうめいしゅ】。
君が纏綿【てんめん】の意に 感じ,繋げて紅の羅襦【らじゅ】に在り。
妾家の高樓 苑に連って起る,良人の執戟【しつげき】 明光の裏【うち】。
知る君 心 用るは 日月の如し,夫に事【つか】へて 誓って生死を同じうせんと擬【ぎ】す。
君に明珠を還【かえ】して 雙涙【そうるい】垂る,何ぞ未だ嫁せざる時に相逢わざる。



現代語訳と訳註
(本文)
節婦吟 寄東平李司空師道  張籍
君知妾有夫,贈妾雙明珠。
感君纏綿意,繋在紅羅襦。
妾家高樓連苑起,良人執戟明光裏。
知君用心如日月,事夫誓擬同生死。
還君明珠雙涙垂,何不相逢未嫁時。


(下し文) (節婦吟 東平の李司空師道に寄す)   
君 知る 妾【しょう】に 夫と有るを,妾に贈る雙明珠【そうめいしゅ】。
君が纏綿【てんめん】の意に 感じ,繋げて紅の羅襦【らじゅ】に在り。
妾家の高樓 苑に連って起る,良人の執戟【しつげき】 明光の裏【うち】。
知る君 心 用るは 日月の如し,夫に事【つか】へて 誓って生死を同じうせんと擬【ぎ】す。
君に明珠を還【かえ】して 雙涙【そうるい】垂る,何ぞ未だ嫁せざる時に相逢わざる。


(現代語訳)
あなたは、わたしに、夫(おっと)がいることを知りながらつきあいました。わたしに一対の輝き光る真珠を贈くってくれました。
あなたの思いが深く離れがたく心にまとわりついているのに感じているのですね、その思いはこころにきざみ、そして紅(くれない)の薄絹の短い肌着につなぎとめておきます。
わたしの家の高楼は、苑(にわ)に連(つら)なって起(た)っており、良人(おっと)は、戟(ほこ)を持って皇宮に勤めにあがっています。
あなたのお心づかいは、明瞭に分かりましたが、わたしは夫(おっと)につかえて、誓って生死を共にしたいと思っております。
あなたに真珠をお返し致しますが、両目から涙が流れてまいります。恨めしいのは、まだ嫁(とつ)いでいない時にお逢(あ)いできなかったことです。


(訳注)
節婦吟 寄東平李司空師道
東平にいる司空の官である李師道に寄せる節婦の詩。 
○男女の不倫問題を詠った詩だが、政治的な批判を男女に置き換えている。反対党から裏工作をされたのであろう、厚遇に感謝しつつも、節義を貫きたい、という。不倫に置き換えるのが分かりやすいことである。○節婦 囲われている女性(民妓)だが、節操の正しい婦人。貞節な女性。貴族は側室として芸妓を迎え入れている。○吟 うた。古詩や楽府題の末尾に用いて『……吟』とする。『白頭吟』など。○ 手紙で詩を送る。○東平 地名。現・山東省鄲県の東にある隋の郡名。現・山東省東平県の東にある漢の東平国、南朝・宋の郡名。○ 真珠を渡してきた男性・李師道の姓。○司空 官名。周代の官名。土地、人民をつかさどる。漢代の御史大夫。○師道 男性の名。李師道とは、平盧淄青節度使。


君知妾有夫、贈妾雙明珠。
あなたは、わたしに、夫(おっと)がいることを知りながらつきあいました。わたしに一対の輝き光る真珠を贈くってくれました。
 相手の男性を指す。○ 分かっている。○ わたくしめ。謙譲の意を込めた女性の一人称。○有夫 おっとがいる(既婚女性)。○ ふたつの。一対の。○明珠 輝き光る玉。


感君纏綿意、繋在紅羅襦。
あなたの思いが深く離れがたく心にまとわりついているのに感じているのですね、その思いはこころにきざみ、そして紅(くれない)の薄絹の短い肌着につなぎとめておきます。
纏綿【てんめん】心がまつわりついて離れないさま。情緒の深いさま。○ 思い。○繋在 …につなぎとめる。○【けい】つなぎとめる。○ …に(…する)。○ 薄絹。○【じゅ】短い上着。短い下着。肌着のこと

 
妾家高樓連苑起、良人執戟明光裏。
わたしの家の高楼は、苑(にわ)に連(つら)なって起(た)っており、良人(おっと)は、戟(ほこ)を持って皇宮に勤めにあがっています。
高樓 たかどの。「高楼」と「庭」「起」は艶歌(性)の常套用語で、下句の「良人」「明光裏」で、思わせぶりな表現としている。○連 つらなる。○ 庭。○ たつ。○良人 おっと。○ (物をかたく)とる。○戟【げき】(枝刃のある)ほこ。○明光 明光殿のことで、皇宮を指す。明光殿は漢の宮殿名で、未央宮の西にあり、金玉珠璣を以て簾箔となし、昼夜光明あったという。また、明光宮のことで、明光宮は漢の宮殿名で、武帝が建てたもの。○ …の内で。


知君用心如日月、事夫誓擬同生死。
あなたのお心づかいは、明瞭に分かりましたが、わたしは夫(おっと)につかえて、誓って生死を共にしたいと思っております。
用心 心遣(づか)い。○日月 太陽と月、男と女。ここでは、太陽(男)と月(女)のように明瞭なことで、うやむやにはいかない。○事夫 おっとにつかえる。この関係は続けてはいけない。○ つかえる。動詞。○ 誓って…。願望、決意を表現する。○ …するつもりである。ほっする。しようとする。○同生死 生きることと死ぬことを同じくする。運命を同じくすること。


還君明珠雙涙垂、何不相逢未嫁時。
あなたに真珠をお返し致しますが、両目から涙が流れてまいります。恨めしいのは、まだ嫁(とつ)いでいない時にお逢(あ)いできなかったことです。
○相手の厚意を謝絶するものの、心が揺れ動くことを示して相手のことを配慮しやわらかく拒絶する。○雙涙 両目から流れ出る涙。○何不 なぜ…しない。○相逢 (偶然に)出逢う。○未嫁時 まだ嫁(とつ)がない(未婚の)時。


芸妓の節操ということである。多少の浮気、不倫がまかり通っていた時代に節操を守る「芸妓」を詠うことで政治的な批判をしている。宦官の巧みな工作を指摘しているものと思う。唐王朝の初期は数十人であった宦官が、玄宗期に飛躍的に増加し、中唐期には手が付けられないほどの勢力を持っていた。不老長寿の媚薬の中毒死は宦官と道教のたくらみであった。
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