中唐詩 Ⅶ孟郊(孟東野) 答盧仝#2 <24> kanbun-iinkai紀頌之の漢詩ブログ249

盧仝に贈った詩で、詩について、楚の屈原は世をはかなんで死んだが、自分は悪戦苦闘し、良い語、良い句がなかなかできないことによって死ぬのであろうと詠じたものである。便宜上3分割して掲載する。


答盧仝(孟郊 唐詩)
#1楚屈入水死,詩孟踏雪僵。直氣苟有存,死亦何所妨。
  日劈高查牙,清棱含冰漿。前古後古冰,與山氣勢強。
  閃怪千石形,異狀安可量。』
#2有時春鏡破,百道聲飛颺。
もし春という世界が急に破れてなくなったとしたら、季語がないので、あちこちから風に飛ばされ舞い上がっていく声が聞えるような無秩序なものになるだろう。
   潛仙不足言,朗客無隱腸。
奥地に潜んだ仙人は詩を作るにも言がたりなくなる。はっきりした旅人は自分の断腸の思いを隠すところがなくなる。
   爲君傾海宇,日夕多文章。
盧仝君のために大海と宇宙をも傾けよう、そうすれば、太陽が夕方であっても明るいのでいい文章を考えかけることになるだろう。
   天下豈無緣,此山雪昂藏。
世界はどうしてこうも私の詩には縁がないのであろうか、この山には積雪が多く高く積み重なっていくように詩句ができ蔵に収めることができるのか。
   煩君前致詞,哀我老更狂。
こんなことは盧仝君を煩わすだけであり、君は前向きにそのまま詩をかいてくれ、そうは思っていても私は次第に年老いてしまい、狂ってしまうことは哀しいことである。
   狂歌不及狂,歌聲緣鳳凰。』

普通でない歌は狂っていることまでではない。詩を詠う声は、鳳凰のように気高いも尾に縁っている。

#3鳳兮何當來,消我孤直瘡。君文真鳳聲,宣隘滿鏗鏘。
  洛友零落盡,逮茲悲重傷。獨自奮異骨,將騎白角翔。
  再三勸莫行,寒氣有刀鎗。仰慚君子多,慎勿作芬芳。』

#1
楚の屈は 水に入りて死し、詩の孟は雪を踏んで僵【たおれ】る。
直気 筍【】くも存する有れば、死も亦た何ぞ妨ぐ所ならん。
日 劈【つんざ】き 高きこと查牙【さが】たり、清稜【せいりょう】 冰漿【ひょうしょう】を含む。
前古 後古の冰、山よりも気勢強し。
閃怪【せんかい】 千石の形、異状 安んぞ量るべけんや。』
#2
時有り 春鏡破れ、百道 声 飛颺【ひき】す。
潜仙【せんせん】 言ひ足らず、朗客【ろうかく】 腸を隠す無し。
君が為に海宇を傾く、日夕 文章多し。
天下 豈 縁なからんや、此の山 雪昂【せつこう】 蔵たり。
君を煩【わずら】はし 前みて詞を致す、我が老いて更に狂なるを哀しむ。
狂歌 狂なるに及ばず、歌声 鳳凰に縁る。』

#3
鳳や 何か当に来たりて、我が孤直【こちょく】の瘡を消すべけんや。
君が文 真に鳳声なり、宣隘【せんあい】 鏗鏘【けんしょう】満つ。
洛友 零落【れいらく】尽し、茲【ここ】に逮【およ】んで重傷を悲しむ。
独自り 異骨を奮【ふる】い、将に白角に騎【の】りて翔【と】ばんとす。
再三 勧めて行ふ莫かれ、寒気 刀鎗【とうそう】有り。
仰ぎ慚ず 君子多し、慎んで芬芳【ふんほう】を作す勿かれ。』

sangaku880

現代語訳と訳註
(本文)

#2有時春鏡破,百道聲飛颺。
   潛仙不足言,朗客無隱腸。
   爲君傾海宇,日夕多文章。
   天下豈無緣,此山雪昂藏。
   煩君前致詞,哀我老更狂。
   狂歌不及狂,歌聲緣鳳凰。』

(下し文) #2
時有り 春鏡破れ、百道 声 飛颺【ひき】す。
潜仙【せんせん】 言ひ足らず、朗客【ろうかく】 腸を隠す無し。
君が為に海宇を傾く、日夕 文章多し。
天下 豈 縁なからんや、此の山 雪昂【せつこう】 蔵たり。
君を煩【わずら】はし 前みて詞を致す、我が老いて更に狂なるを哀しむ。
狂歌 狂なるに及ばず、歌声 鳳凰に縁る。』

(現代語訳)
もし春という世界が急に破れてなくなったとしたら、季語がないので、あちこちから風に飛ばされ舞い上がっていく声が聞えるような無秩序なものになるだろう。
奥地に潜んだ仙人は詩を作るにも言がたりなくなる。はっきりした旅人は自分の断腸の思いを隠すところがなくなる。
盧仝君のために大海と宇宙をも傾けよう、そうすれば、太陽が夕方であっても明るいのでいい文章を考えかけることになるだろう。
こんなことは盧仝君を煩わすだけであり、君は前向きにそのまま詩をかいてくれ、そうは思っていても私は次第に年老いてしまい、狂ってしまうことは哀しいことである。
普通でない歌は狂っていることまでではない。詩を詠う声は、鳳凰のように気高いも尾に縁っている。

botan00


(訳注)#2
有時春鏡破,百道聲飛颺。

もし春という世界が急に破れてなくなったとしたら、季語がないので、あちこちから風に飛ばされ舞い上がっていく声が聞えるような無秩序なものになるだろう。
春鏡破 春という世界が急に破れてなくなった○百道 季語がないので、あちこちから。 ○飛颺す飏(颺) 風で飛び舞い上がる。



潛仙不足言,朗客無隱腸。
奥地に潜んだ仙人は詩を作るにも言がたりなくなる。はっきりした旅人は自分の断腸の思いを隠すところがなくなる。
潜仙 奥地に潜んだ仙人。○不足言 句ができないごと。○朗客 はっきりした旅人。気楽な旅人に対して相手をする女性がいないことを意味する。○無隱腸 旅人の寂しい気持ちを晴らすことができない。。



爲君傾海宇,日夕多文章。
盧仝君のために大海と宇宙をも傾けよう、そうすれば、太陽が夕方であっても明るいのでいい文章を考えかけることになるだろう。
 詩題の盧仝のこと。○傾海宇 沈む夕日を海と大空を傾けることで日を長くする。○日夕 日中の太陽と夕日。○多文章 詩文がたくさんできる。



天下豈無緣,此山雪昂藏。
世界はどうしてこうも私の詩には縁がないのであろうか、この山には積雪が多く高く積み重なっていくように詩句ができ蔵に収めることができるのか。
天下 詩文の世界。○縁 納得のいく良い詩句が生まれる縁。 ○雪昂 雪は詩句、詩文を示す。○ 雪は降り積もって、氷となり、保存することができるように詩文、詩句をたくさん作ること。。



煩君前致詞,哀我老更狂。
こんなことは盧仝君を煩わすだけであり、君は前向きにそのまま詩をかいてくれ、そうは思っていても私は次第に年老いてしまい、狂ってしまうことは哀しいことである。
 盧仝の思うままにという意。○ 詩文、詩句。○ 狂うこと。



狂歌不及狂,歌聲緣鳳凰。』
普通でない歌は狂っていることまでではない。詩を詠う声は、鳳凰のように気高いも尾に縁っている。
狂歌 普通でない歌。しかし執着心を持ったいい句をつくること。○歌声 良い句ができて胸を張って詠う詩。○鳳凰 仙界の鳥、素晴らしい詩文を比喩している。