中唐詩-286 赴江陵途中寄贈王二十補闕李十一拾遺李二十六員外翰林三學士 #5 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-35-#5


#5
中使臨門遣,頃刻不得留。
左遷の命に宮中からの使者は戸口の所に立って私を追いたてた、少しも遅滞していることは許されなかった。
病妹臥床褥,分知隔明幽。
病気の妹は蒲団に寝ているが、これが今生の別れだと覚悟はついているようだ。
悲啼乞就別,百請不頷頭。
悲しんで位き、別れの旅路を共にしたいとないたのだ、しかし、百篇なだめてみたけれどうなずいてはくれない。
弱妻抱稚子,出拜忘慚羞。
うら若い妻は乳飲み子を抱き、戸口に出て恥ずかしさも忘れて拝み、あいさつしている。
僶俛不回顧,行行詣連州。
私はうなだれたまま無理に振りかえりもせず、連州の陽山県までの旅を続けた。


#5
中使 門に臨みて遣【や】り,頃刻【けいこく】留まるを得ず。
病妹 床褥【しょうじょく】に臥す,分【さだ】めて明幽を隔てんことを知る。
悲啼【ひてい】別れ就かんと乞い,百【もも】たび請えども頭【こうべ】を頷【うなず】かせず。[17] [18]
弱妻は稚子を抱き,出で拜して慚羞【ざんしゅう】を忘る。
僶俛【べんびん】回顧せず,行き行きて連州に詣【いた】る。



現代語訳と訳註
(本文)
#5
中使臨門遣,頃刻不得留。
病妹臥床褥,分知隔明幽。
悲啼乞就別,百請不頷頭。
弱妻抱稚子,出拜忘慚羞。
僶俛不回顧,行行詣連州。


(下し文) #5
中使 門に臨みて遣【や】り,頃刻【けいこく】留まるを得ず。
病妹 床褥【しょうじょく】に臥す,分【さだ】めて明幽を隔てんことを知る。
悲啼【ひてい】別れ就かんと乞い,百【もも】たび請えども頭【こうべ】を頷【うなず】かせず。[17] [18]
弱妻は稚子を抱き,出で拜して慚羞【ざんしゅう】を忘る。
僶俛【べんびん】回顧せず,行き行きて連州に詣【いた】る。


(現代語訳)
左遷の命に宮中からの使者は戸口の所に立って私を追いたてた、少しも遅滞していることは許されなかった。
病気の妹は蒲団に寝ているが、これが今生の別れだと覚悟はついているようだ。
悲しんで位き、別れの旅路を共にしたいとないたのだ、しかし、百篇なだめてみたけれどうなずいてはくれない。
うら若い妻は乳飲み子を抱き、戸口に出て恥ずかしさも忘れて拝み、あいさつしている。
私はうなだれたまま無理に振りかえりもせず、連州の陽山県までの旅を続けた。


(訳注)
中使臨門遣,頃刻不得留。

左遷の命に宮中からの使者は戸口の所に立って私を追いたてた、少しも遅滞していることは許されなかった。
中使 朝庭の使い。


病妹臥床褥,分知隔明幽。
病気の妹は蒲団に寝ているが、これが今生の別れだと覚悟はついているようだ。
病妹 妹、妾、少女、嫁・妻。病気の受妾。韓癒に妹、妾があったことを他の文献が全く伝えないので、ここでは妻。
隔明幽 幽明境を異にする。つまり一方は死に一方は生きていること。


悲啼乞就別,百請不頷頭。
悲しんで位き、別れの旅路を共にしたいとないたのだ、しかし、百ぺんなだめてみたけれどうなずいてはくれない。


弱妻抱稚子,出拜忘慚羞。
うら若い妻は乳飲み子を抱き、戸口に出て恥ずかしさも忘れて拝み、あいさつしている。
弱妻 弱は二十歳を意味する。ここではうら若い。○


僶俛不回顧,行行詣連州。
私はうなだれたまま無理に振りかえりもせず、連州の陽山県までの旅を続けた。
僶俛 励み努める。むりにつとめて。『新書、勸学』「舜僶俛而加志。」(舜は僶俛して而志を加う。)潘岳の『悼亡詩』に「僶俛として朝命を恭【かしこ】み、心を回らせて初役に返る」という句がみえる。