中唐詩-289 赴江陵途中寄贈王二十補闕李十一拾遺李二十六員外翰林三學士 #8 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-35-#8

「王二十補闘」は王涯、「李十一拾遺」は率建、「李二十六員外」は李程という人。補闘∵拾遺・員外は官名で、補闘∵拾遺は勤める役所は違うが、ともに皇帝の過失を指摘し、いさめることを職務とする。員外は正式には員外郎といい、行政官庁の事務官であるが、李程が具体的に何を担当していたかは、あまりはっきりしない。員外郎は初め定員外に設けられた官職であるためこの名がついたといわれるが、当時では完全に定員内のポストとなっていた。また三人とも翰林学士を兼務していたのであるが、これは宮中に作られた翰林院に出仕する、皇帝のプライペートな臣下で、学士・待詔などの階級がある。学士は翰林院では最高の地位だが、職務内容はあまり明瞭でなく、皇帝の学問上の顧問というにとどまる。しかし、皇帝が詔勅などを発布しようとするとき、その文章の手直しに始まり、政策の内容についても口をはさみ、後世では詔勅そのものを起草するようになって、翰林学士は政策の立案者という、重い地位を占めるようになった。愈の時代にはまだそれほど重い地位ではないが、皇帝の昏問に応ずるのだから、信頼されていなければ任命されるはずのない職である。また二十・十一・二十六といった数字はいわゆる排行で、一族(大家族の)のなかで同じ世代に属する人たち、たとえば従兄弟などを、出生の順に番号をつけて呼ぶもので、こうした呼び方をする友人は家族同然の、親しい間柄であることを示す。


#8
雷霆助光怪,氣象難比侔。
この地方の雷はすごい、それに怪しい光を添えて、こんな気象はほかに並ぶものもないほどだ。
癘疫忽潛遘,十家無一瘳。
瘴癘の流行病がこっそりと道を歩いていて、それに出会うと、十軒くらいの家のひとは一人も助かる者がない。
猜嫌動置毒,對案輒懷愁。
ひょっとすると毒虫が料理のなかに入れてあるのではないかと疑って、食膳に向かうたびに心配でしかたがないのだ。
前日遇恩赦,私心喜還憂。
先日恩赦にあって、心のうちで喜んだが、同時にそれはまた悲しいことでもある。
果然又羈縶,不得歸耡耰。
はたしてまたもや官職につながれ、農村に帰ることはできなくなったということなのだ。

#8
雷霆【らいてい】光怪【こうかい】を助け,氣象 比侔【ひぼう】し難し。
癘疫【れいえき】忽【たちま】ち潛遘【せんこう】し,十家一も瘳【い】ゆる無し。
猜嫌【さいけん】して動【やや】もすれば毒を置き,案に對して輒【すなわ】ち愁いを懷【いだ】く。
前日遇恩赦【おんしゃ】,私心に喜び還た憂う。
果然【かぜん】として又羈縶【きせつ】せられ,耡耰 【じゅじょう】に歸るを得ず。


現代語訳と訳註
(本文)#8

雷霆助光怪,氣象難比侔。
癘疫忽潛遘,十家無一瘳。
猜嫌動置毒,對案輒懷愁。
前日遇恩赦,私心喜還憂。
果然又羈縶,不得歸耡耰。

(下し文)#8
雷霆【らいてい】光怪【こうかい】を助け,氣象 比侔【ひぼう】し難し。
癘疫【れいえき】忽【たちま】ち潛遘【せんこう】し,十家一も瘳【い】ゆる無し。
猜嫌【さいけん】して動【やや】もすれば毒を置き,案に對して輒【すなわ】ち愁いを懷【いだ】く。
前日遇恩赦【おんしゃ】,私心に喜び還た憂う。
果然【かぜん】として又羈縶【きせつ】せられ,耡耰 【じゅじょう】に歸るを得ず。

(現代語訳)
この地方の雷はすごい、それに怪しい光を添えて、こんな気象はほかに並ぶものもないほどだ。
瘴癘の流行病がこっそりと道を歩いていて、それに出会うと、十軒くらいの家のひとは一人も助かる者がない。
ひょっとすると毒虫が料理のなかに入れてあるのではないかと疑って、食膳に向かうたびに心配でしかたがないのだ。
先日恩赦にあって、心のうちで喜んだが、同時にそれはまた悲しいことでもある。
はたしてまたもや官職につながれ、農村に帰ることはできなくなったということなのだ。



(訳注) #8
雷霆助光怪,氣象難比侔。
この地方の雷はすごい、それに怪しい光を添えて、こんな気象はほかに並ぶものもないほどだ。
雷霆 かみなりのひびき。雷も霆もかみなり。


癘疫忽潛遘,十家無一瘳。
瘴癘の流行病がこっそりと道を歩いていて、それに出会うと、十軒くらいの家のひとは一人も助かる者がない。
癘疫 流行病。伝染病。

猜嫌動置毒,對案輒懷愁。
ひょっとすると毒虫が料理のなかに入れてあるのではないかと疑って、食膳に向かうたびに心配でしかたがないのだ


前日遇恩赦,私心喜還憂。
先日恩赦にあって、心のうちで喜んだが、同時にそれはまた悲しいことでもある。


果然又羈縶,不得歸耡耰。
はたしてまたもや官職につながれ、農村に帰ることはできなくなったということなのだ。
果然 はたしてまたもや。其のまま過ごしていると。○羈縶 官職につながれること。○歸耡耰 農村に帰って鋤を持つこと。
ここは、同級のものが引き上げられて朝廷で天子の傍にお仕えしていることに対して、韓愈の不遇をあらわしている。農村に隠遁する気持ちはないが、自分の力を発揮できない場合、詩人はこういう表現をする。中国人の強がってみせる表現方法である。