中唐詩-291 赴江陵途中寄贈王二十補闕李十一拾遺李二十六員外翰林三學士 #10 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-35-#10


#10
懸知失事勢,恐自罹罝罘。
もう今から予想がつくのだが、事態の変化に応じて適宜の処置をとることに失敗し、自分が法網にかかってしまう恐れがある。
湘水清且急,涼風日修修。
(江陵へとおもむく途中の)湘水の流れは清らかでしかも急であり、涼しい風が日ごとに颯々と吹いて来る。
胡為首歸路,旅泊尚夷猶?
この道は都へと帰る道の方に首を向けていながら、この街道にあって、旅の宿りをかさねて足も滞りがちになるのは、どういうわけだろう。(秋風が吹くころの宋玉と心境が同じなのだ。)
昨者京使至,嗣皇傳冕旒。
きのう都から使者が来ての話では、世継ぎの皇太子が御即位されたそうだ。
赫然下明詔,首罪誅共兜。
そしてさっきゅうに明らかに詔勅を下し、悪人の首魁として共工・駻兜に比すべき者(王伾・王叔文を指す)を誅せられた。

#10
懸ねて知る事勢を失い,恐らくは自ら罝罘【しゃふ】に罹【か】からんことを。[30]
湘水は清く且つ急なり、涼風 日に脩脩【しゅうしゅう】。
胡為【なんす】れぞ帰路に首【むか】いて、旅泊 尚夷猶【いゆう】する。
昨者【さきごろ】 京師より至り、嗣皇【しこう】 冕旒【べんりゅう】を伝え。
赫然【かくぜん】として明詔を下し、首罪 共兜【きょうとう】を誅すと。

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現代語訳と訳註
(本文) #10

懸知失事勢,恐自罹罝罘。
湘水清且急,涼風日修修。
胡為首歸路,旅泊尚夷猶?
昨者京使至,嗣皇傳冕旒。
赫然下明詔,首罪誅共兜。


(下し文)#10
懸ねて知る事勢を失い,恐らくは自ら罝罘【しゃふ】に罹【か】からんことを。[30]
湘水は清く且つ急なり、涼風 日に脩脩【しゅうしゅう】。
胡為【なんす】れぞ帰路に首【むか】いて、旅泊 尚夷猶【いゆう】する。
昨者【さきごろ】 京師より至り、嗣皇【しこう】 冕旒【べんりゅう】を伝え。
赫然【かくぜん】として明詔を下し、首罪 共兜【きょうとう】を誅すと。


(現代語訳)
もう今から予想がつくのだが、事態の変化に応じて適宜の処置をとることに失敗し、自分が法網にかかってしまう恐れがある。
(江陵へとおもむく途中の)湘水の流れは清らかでしかも急であり、涼しい風が日ごとに颯々と吹いて来る。
この道は都へと帰る道の方に首を向けていながら、この街道にあって、旅の宿りをかさねて足も滞りがちになるのは、どういうわけだろう。(秋風が吹くころの宋玉と心境が同じなのだ。)
きのう都から使者が来ての話では、世継ぎの皇太子が御即位されたそうだ。
そしてさっきゅうに明らかに詔勅を下し、悪人の首魁として共工・駻兜に比すべき者(王伾・王叔文を指す)を誅せられた。


(訳注)
懸知失事勢,恐自罹罝罘。

もう今から予想がつくのだが、事態の変化に応じて適宜の処置をとることに失敗し、自分が法網にかかってしまう恐れがある。
懸知 心にかけてあらかじめ心配する。○罝罘 法網にかかること。獣を取る網のことだが、ここでは法の網、刑罰の網をいう。


湘水清且急,涼風日修修。
(江陵へとおもむく途中の)湘水の流れは清らかでしかも急であり、涼しい風が日ごとに颯々と吹いて来る。
湘水 自分の赴任先の陽山から湘水を北へ下って洞庭湖に入る。○涼風 涼しい風。秋になり、その上北上している。○修修 颯々と吹いて来る


胡為首歸路,旅泊尚夷猶?
この道は都へと帰る道の方に首を向けていながら、この街道にあって、旅の宿りをかさねて足も滞りがちになるのは、どういうわけだろう。(秋風が吹くころの宋玉と心境が同じなのだ。)
胡為 なんすれぞ○首歸路 帰る道の方に首を向けていながら。○夷猶 ためらう。ぐずぐずする。王維『汎前陂』「此夜任孤棹、夷猶殊未還。」(此の夜孤棹に任せて、夷猶殊に未だ還らず)という心境にあり、もっといえば、宋玉『九辨』にみられる心境そのものであった。
九辨
悲哉秋之為氣也!
蕭瑟兮草木搖落而變衰,
憭慄兮若在遠行,
登山臨水兮送將歸,
泬寥兮天高而氣清,
寂寥兮收潦而水清,
憯悽欷兮薄寒之中人,
愴怳懭悢兮去故而就新,
坎廩兮貧士失職而志不平,
廓落兮羇旅而無友生。
惆悵兮而私自憐。
燕翩翩其辭歸兮,蝉寂漠而無聲。
鴈廱廱而南遊兮,鶤雞啁哳而悲鳴。
獨申旦而不寐兮,哀蟋蟀之宵征。
時亹亹而過中兮,蹇淹留而無成。


昨者京使至,嗣皇傳冕旒。
きのう都から使者が来ての話では、世継ぎの皇太子が御即位されたそうだ。
京使 長安朝廷からの使者。○嗣皇 皇太子。○傳冕旒 冠の前に垂れる飾り玉。天子の冕は十二旒。憲宗が順宗から譲位を受けた、805年貞元二十一年八月即位したことを指す。


赫然下明詔,首罪誅共兜。
そして輝く、盛んな様子で早急に明らかに詔勅を下し、悪人の首魁として共工・駻兜に比すべき者(王伾・王叔文を指す)を誅せられた。
赫然 怒る様子。むっとするさま。輝く、盛んな様子。蜀志『諸葛亮傳』「神武赫然、威鎮八荒。」(神武赫然として、威 八荒を鎮む。)○共兜 共工と駻兜。帝堯の臣で悪人であったから、舜が堯のゆずりをうけるとそれぞれ幽州と崇山に放逐した。ここでは王叔文党の迫放をさす。