中唐詩-298 岳陽樓別竇司直 #4 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ 韓愈特集-36-#4


#4
餘瀾怒不已,喧聒鳴甕盎。
川波の名残りはまだ怒りを静めず、まるで壺や甕を打ち鳴らしているかのようにやかましく響いていた。
明登岳陽樓,輝煥朝日亮。
夜が明けて岳陽楼に登ってみると、きらきらとかがやいて朝日が明るくひろがっている。
飛廉戢其威,清晏息纖纊。
飛廉という風の神はその威力をおさめられた、こうして静まりかえってみると細い糸くずさえ動かない。
泓澄湛凝綠,物影巧相況。
湖水の表面はひろびろと静かに緑色をたたえ、みごとに物の影を写し出す。
江豚時出戲,驚波忽蕩瀁。

江豚(イルカ)が時おり水面に出て遊び、今まで怒涛逆巻く波は急に静かになってゆたかにあふれている。
#4
余瀾【よらん】怒りて已【や】まず、喧聒【けんかつ】として甕盎【おうおう】を鳴らす。
明けて岳陽楼に登れば、輝煥として朝日【ちょうじつ】亮【あき】らかなり。
飛廉 其の威を戢【おさ】め、清晏にして纖纊【せんこう】息【や】む。
泓澄【こうちょう】として凝緑【ぎりょく】を湛【たた】え、物影 巧みに相況【たと】う。
江豚【こうとん】時に出で戯れ、驚波 忽ち蕩瀁【とうよう】す。


現代語訳と訳註
(本文) #4

餘瀾怒不已,喧聒鳴甕盎。
明登岳陽樓,輝煥朝日亮。
飛廉戢其威,清晏息纖纊。
泓澄湛凝綠,物影巧相況。
江豚時出戲,驚波忽蕩瀁。


(下し文) #4
余瀾【よらん】怒りて已【や】まず、喧聒【けんかつ】として甕盎【おうおう】を鳴らす。
明けて岳陽楼に登れば、輝煥として朝日【ちょうじつ】亮【あき】らかなり。
飛廉 其の威を戢【おさ】め、清晏にして纖纊【せんこう】息【や】む。
泓澄【こうちょう】として凝緑【ぎりょく】を湛【たた】え、物影 巧みに相況【たと】う。
江豚【こうとん】時に出で戯れ、驚波 忽ち蕩瀁【とうよう】す。


(現代語訳)
川波の名残りはまだ怒りを静めず、まるで壺や甕を打ち鳴らしているかのようにやかましく響いていた。
夜が明けて岳陽楼に登ってみると、きらきらとかがやいて朝日が明るくひろがっている。
飛廉という風の神はその威力をおさめられた、こうして静まりかえってみると細い糸くずさえ動かない。
湖水の表面はひろびろと静かに緑色をたたえ、みごとに物の影を写し出す。
江豚(イルカ)が時おり水面に出て遊び、今まで怒涛逆巻く波は急に静かになってゆたかにあふれている。


(訳注)#4
餘瀾怒不已,喧聒鳴甕盎。
川波の名残りはまだ怒りを静めず、まるで壺や甕を打ち鳴らしているかのようにやかましく響いていた。
餘瀾 #2で「聲音一何宏,轟輵車萬兩。」(声音 一に何ぞ宏いなる、轟輵として車万両。)と起した余波。○喧聒 さわがしい、かまびすしい、やかましい○甕盎 つぼとかめ。


明登岳陽樓,輝煥朝日亮。
夜が明けて岳陽楼に登ってみると、きらきらとかがやいて朝日が明るくひろがっている。


飛廉戢其威,清晏息纖纊。
飛廉という風の神はその威力をおさめられた、こうして静まりかえってみると細い糸くずさえ動かない。
飛廉 中国の想像上の動物で、頭は雀に似て角があり、胴体は鹿に似ていて豹文があり、尾は蛇に似るというもの。 ここでは昨夕の荒れた洞庭湖を考慮し、、風の神の名。風伯。○纖纊 細い糸くず。


泓澄湛凝綠,物影巧相況。
湖水の表面はひろびろと静かに緑色をたたえ、みごとに物の影を写し出す。
泓澄 水が深くて澄んでいるようす。○湛凝綠 静かに緑色をたたえているようす。


江豚時出戲,驚波忽蕩瀁。
江豚(イルカ)が時おり水面に出て遊び、今まで怒涛逆巻く波は急に静かになってゆたかにあふれている。
江豚 スナメリ。長江に棲む川イルカ。○蕩瀁 ただようさま。揺れ動く。なみまかせのさま。瀁は漾とおなじで古字。浩漾もおなじ。李白、『惜餘春賦』「水蕩瀁兮碧色、蘭葳兮紅芳。」(水 蕩漾として碧色なり、蘭葳として紅芳あり。)





岳陽樓別竇司直
岳陽樓で友人の竇限司直と別れの宴をした。
#1
洞庭九州間,厥大誰與讓。
洞庭湖は九州に分けられたこの世界のなかで、大きさは他のどこの何にものに劣らないものだ。
南匯羣崖水,北注何奔放。
その南側で群がるように集まり、他と和合しない水の流れ下る、それらの川が北へと流れこむ勢いのなんとすさまじいことだろうか。
瀦爲七百里,吞納各殊狀。
かくて水は集まって七百里の広さの湖となり、川水を飲みこむのだが、それぞれに姿が異なる。
自古澄不清,環混無歸向。
この湖水は昔からいくら澄ませても澄まないし、混沌として帰着する所もわからない。
炎風日搜攪,幽怪多冗長。
東北の風は日ごとに湖のおもてを騒がせ、底に住む怪物には長々しいものが多い。
#2
軒然大波起,宇宙隘而妨。
声高らかに笑うように大浪が高く巻き起こり、そのために宇宙さえも狭くなって、つかえるかと思うほどだ。
巍峩拔嵩華,騰踔較健壯。
波はそびえて嵩山・華山をもしのぐほどであり、その飛び越える動きは健やかで勇壮なさまをきそっているようだ。
聲音一何宏,轟輵車萬兩。
流れ込む音、波の音が 一つに集まってなんと大きなことになるのだろう、ごうごうと一万両の兵車が走るほどの響きをたてるのである。
猶疑帝軒轅,張樂就空曠。
聖帝の軒轅皇帝がこの天空の広さのなかで天を弦にした音楽を演奏しているのかと疑われるほどのものだ。
蛟螭露筍簴,縞練吹組帳。
底に住むみずちが楽器の台を水面に現わし、湖をわたる風にあがった波しぶきが、楽団をかこむ白絹の帳を吹くかのよう。
#3
鬼神非人世,節奏頗跌踼。
この天の神がかなでる音楽のわざは人の世で聞けるものではなく、節章のリズムの取り方も奏でるメロディーも通常のものではないものだ。
陽施見誇麗,陰閉感悽愴。
管楽器を吹き鳴らすときは美しい声で聞こえているし、息を吸いこんで鳴らすときは凄惨、悲愴な感じになる。
朝過宜春口,極北缺隄障。
朝がた、宜春の入りロのあたりにさしかかったときは、北のはての方に何もさえぎるものがなかった。
夜纜巴陵洲,叢芮纔可傍。
夜になって巴陵の中洲に舟をつなごうとすると、草がむらがって生えている小さな芽がいっぱいでようやく舟が寄せられる程度であった。
星河盡涵泳,俯仰迷下上。
そして夜空に見える星はすべて天の川のなかに浮かんで輝き、下を向いたり上を向いたりすると、天と地を見ちがえるほどだった。
#4
餘瀾怒不已,喧聒鳴甕盎。
川波の名残りはまだ怒りを静めず、まるで壺や甕を打ち鳴らしているかのようにやかましく響いていた。
明登岳陽樓,輝煥朝日亮。
夜が明けて岳陽楼に登ってみると、きらきらとかがやいて朝日が明るくひろがっている。
飛廉戢其威,清晏息纖纊。
飛廉という風の神はその威力をおさめられた、こうして静まりかえってみると細い糸くずさえ動かない。
泓澄湛凝綠,物影巧相況。
湖水の表面はひろびろと静かに緑色をたたえ、みごとに物の影を写し出す。
江豚時出戲,驚波忽蕩瀁。
江豚(イルカ)が時おり水面に出て遊び、今まで怒涛逆巻く波は急に静かになってゆたかにあふれている。