杏花 #2 Ⅱ韓退之(韓愈) 紀頌之の漢詩ブログ992中唐305 韓愈特集-37-#2
(杏花)

韓愈 杏花 #1
居鄰北郭古寺空,杏花兩株能白紅。
曲江滿園不可到,看此寧避雨與風 ?
二年流竄出嶺外,所見草木多異同。』

冬寒不嚴地恆泄,陽氣發亂無全功。
冬の寒さはあまり厳しくなくて、地面からは暖かい気が漏れており、万物を生長させる陽気はやたらに立ちのぼって、造化の完全なはたらきはない。
浮花浪蘂鎮長有,纔開還落瘴霧中。
季節はずれに咲いているあだ花はいつでもあって、それが南方特有の毒気を帯びているという霧のなかで咲いたかと思うとまた散ってしまう。
山榴躑躅少意思,照耀黃紫徒為叢。』
サツキやツツジも風情に乏しく、黄色や紫の花を輝かせるが、草むらをなしているだけのことだ。

鷓鴣鈎輈猿叫歇,杳杳深谷攢青楓。
豈如此樹一來翫,若在京國情何窮。
今旦胡為忽惆悵,萬片飄泊隨西東。
明年更發應更好,道人莫忘鄰家翁。』

  
杏花
居隣【きょりん】の北郭 古寺空しく、杏花両株 能【よ】く白紅。
曲江満園 到る可からず、此を看て 寧【いず】くんぞ雨と風とを避けん。 
二年流竄【りゅうざん】して嶺外【れいがい】に出で、見し所の草木 異同多し。』
#2
冬寒【とうかん】厳【げん】ならず 地恒に泄【も】らし、陽気 発乱して全功無し。
浮花 浪蘂【ろうずい】 鎮長【ちんちょう】に有り、纔かに開いて 還た落つ 瘴霧【しょうむ】の中。
山榴【さんりゅう】躑躅【てきちょく】 意思少なく、   黄紫を照耀【しょうよう】して徒【いたず】らに叢【そう】を為す。』

#3
鷓鴣【しゃこ】鈎輈【こうしゅう】として猿の叫び歇【や】み、杳杳【ようよう】たる深谷 青楓【せいふう】を攢【あつ】む。
壹如【あにし】かんや此の樹の一たび来翫【らいがん】するに、若し京国【けいこく】に在らば 情何ぞ窮まらん。
今且【こんたん】胡為【なんす】れぞ忽【たちま】ち惆悵【ちょうちょう】する、万片飄泊【ひょうはく】して西東に随う。
明年更に発【ひら】けば応【まさ】に更に奸かるべし、道人【どうじん】忘るる莫かれ隣家の翁【おう】。



現代語訳と訳註
(本文)

冬寒不嚴地恆泄,陽氣發亂無全功。
浮花浪蘂鎮長有,纔開還落瘴霧中。
山榴躑躅少意思,照耀黃紫徒為叢。』


(下し文) #2
冬寒【とうかん】厳【げん】ならず 地恒に泄【も】らし、陽気 発乱して全功無し。
浮花 浪蘂【ろうずい】 鎮長【ちんちょう】に有り、纔かに開いて 還た落つ 瘴霧【しょうむ】の中。
山榴【さんりゅう】躑躅【てきちょく】 意思少なく、   黄紫を照耀【しょうよう】して徒【いたず】らに叢【そう】を為す。』


(現代語訳)
冬の寒さはあまり厳しくなくて、地面からは暖かい気が漏れており、万物を生長させる陽気はやたらに立ちのぼって、造化の完全なはたらきはない。
季節はずれに咲いているあだ花はいつでもあって、それが南方特有の毒気を帯びているという霧のなかで咲いたかと思うとまた散ってしまう。
サツキやツツジも風情に乏しく、黄色や紫の花を輝かせるが、草むらをなしているだけのことだ。

(訳注)
冬寒不嚴地恒泄,陽氣發亂無全功。

冬の寒さはあまり厳しくなくて、地面からは暖かい気が漏れており、万物を生長させる陽気はやたらに立ちのぼって、造化の完全なはたらきはない。
地恒泄 地面からは暖かい気があふれている。○發亂 やたらに立ちのぼる陽炎をいう。○無全功 造化の完全なはたらきはない。


浮花浪蘂鎮長有,纔開還落瘴霧中
季節はずれに咲いているあだ花はいつでもあって、それが南方特有の毒気を帯びているという霧のなかで咲いたかと思うとまた散ってしまう。
浮花 浮花○浪蘂 あだ花○瘴霧中 瘴癘の地の空気中に有る毒気をいう。(実際には蚊によって媒介されていたマラリヤをいう。)


山榴躑躅少意思,照耀黃紫徒為叢。』
サツキやツツジも風情に乏しく、黄色や紫の花を輝かせるが、草むらをなしているだけのことだ。
山榴 「さつき(皐月)」の古名。山奥の岩肌などに自生する。盆栽などで親しまれている。サツキツツジ(皐月躑躅)などとも呼ばれており、他のツツジに比べ一ヶ月程度遅い、旧暦の五月(皐月)の頃に一斉に咲き揃うところからその名が付いたと言われる。○躑躅 ツツジ。おおむね常緑若しくは落葉性の低木から高木で、葉は常緑または落葉性で互生、果実は蒴花である。4月から5月の春先にかけて漏斗型の特徴的な形の花(先端が五裂している)を数個、枝先につける。杜鵑花(とけんか)、杜鵑はほととぎすの別名。