鄭羣贈簟 #1 Ⅱ韓退之(韓愈)詩307 紀頌之の漢詩ブログ998
(鄭群 簟を贈る)

江陵の夏は格別蒸し暑くて、肥満体系の韓愈にとって、しのぎかねるものだった。これまで、陽山では左遷とはいえ、県令とうい知事というトップの職であった。暑さに加え、法曹参軍というかなり不満な地位であり、仕事始めであり、職務を怠慢にすることはできない。そうしたときにもらった「箪」だから、自分の立場を理解してくれたように思われて、韓愈としては単に「箪」をもらったことへの謝意だけではなく、知己を得たわけで、深い感謝をささげている。

鄭羣贈簟
鄭侍御史に簟を贈られる
蘄州笛竹天下知,鄭君所寶尤瑰奇。
蘄州(湖北省蘄春県)の笛竹は天下にその名を知られたものだが、鄭君が宝物にしている竹は特にすぐれて珍しく、美しいものだ。
擕來當晝不得臥,一府傳看黄琉璃。
それを持って来たのはちょうど昼だったが、その上に寝ることもならず、黄色の瑠璃のような竹を幕府の役所じゅうの人が統々と手渡しして見入る。
體堅色淨又藏節,盡眼凝滑無瑕疵。
その本体は堅く色はさっぱりとしているうえに節も見えぬようになっており、目のとどくところはすべてつるつるとしていて悪い所が全くない。
法曹貧賤眾所易,腰腹空大何能爲?』
法曹参軍は俸禄が低いし、地位も低い職で、人々に軽く見られているようだ。太って腰や腹ばかりが大きくても何ができるというのだろうか。

自從五月困暑濕,如坐深甑遭蒸炊。
手磨袖拂心語口,慢膚多汗真相宜。
日暮歸來獨惆悵,有賣直欲傾家資。
誰謂故人知我意,卷送八尺含風漪。』

呼奴掃地鋪未了,光彩照耀驚童兒。
青蠅側翅蚤虱避,肅肅疑有清飆吹。
倒身甘寢百疾愈,卻願天日恒炎曦。
明珠青玉不足報,贈子相好無時衰。』

(鄭群 簟を贈る)#1
蘄州【きしゅう】の笛竹【ちくてき】は天下知る、鄭君の宝とする所 尤【もっと】も壊奇【かいき】なり。
携え来たり昼に当たるも臥すを得ず、一府伝え看る 黄瑠璃【こうるり】。
体堅く色浄く 又節を蔵す、尽眼【じんがん】凝滑にして瑕疵【かし】無し。
法曹は貧賤【ひんせん】にして衆の易【あなど】る所、腰腹空しく大なるも何をか能【よ】く為さん。

#2
五月自従り 暑湿に困【くる】しみ、深甑【しんそう】に坐して蒸炊【じょうすい】に遭うが如し。
手を磨し袖を払いて 心口に語る、慢膚【まんぷ】汗多きは真【まこと】に相宜【よろ】しと。
日暮れて帰り来たり 独り惆悵【ちゅうちょう】し、売る有らば直ちに家資を傾けんと欲す。
誰か謂【おも】わん 故人我が意を知り、八尺の含風【がんふう】漪【い】を巻いて送らんとは。

#3
奴を呼び地を掃【はら】って鋪【し】かしむること未だ了【お】わらざるに、光彩照耀して童児を驚かす。
青蠅【せいよう】は翅を側【そば】め蚤虱【そうしつ】は避け、粛粛【しゅくしゅく】として清飈【せいひょう】の吹くこと有るかと疑う。
身を倒して甘寝【かんしん】し百疾【ひゃくしつ】愈【い】え、却って願う 天日の恒に炎曦【えんぎ】なるを。
明珠・青玉も報ゆるに足らず、子【し】に相好【よ】くして時として衰うる無きを贈らん。


現代語訳と訳註
(本文)

蘄州笛竹天下知,鄭君所寶尤瑰奇。
擕來當晝不得臥,一府傳看黄琉璃。
體堅色淨又藏節,盡眼凝滑無瑕疵。
法曹貧賤眾所易,腰腹空大何能爲?』

(下し文) (鄭群 簟を贈る)#1
蘄州【きしゅう】の笛竹【ちくてき】は天下知る、鄭君の宝とする所 尤【もっと】も壊奇【かいき】なり。
携え来たり昼に当たるも臥すを得ず、一府伝え看る 黄瑠璃【こうるり】。
体堅く色浄く 又節を蔵す、尽眼【じんがん】凝滑にして瑕疵【かし】無し。
法曹は貧賤【ひんせん】にして衆の易【あなど】る所、腰腹空しく大なるも何をか能【よ】く為さん。


(現代語訳)
鄭侍御史に簟を贈られる
蘄州(湖北省蘄春県)の笛竹は天下にその名を知られたものだが、鄭君が宝物にしている竹は特にすぐれて珍しく、美しいものだ。
それを持って来たのはちょうど昼だったが、その上に寝ることもならず、黄色の瑠璃のような竹を幕府の役所じゅうの人が統々と手渡しして見入る。
その本体は堅く色はさっぱりとしているうえに節も見えぬようになっており、目のとどくところはすべてつるつるとしていて悪い所が全くない。
法曹参軍は俸禄が低いし、地位も低い職で、人々に軽く見られているようだ。太って腰や腹ばかりが大きくても何ができるというのだろうか。


(訳注)
鄭羣贈簟

鄭侍御史に簟を贈られる
鄭群 殿中侍御史の肩書をもって刑南節度使裴均の幕僚として江陵に勤務していた人物である。○ シーツに似た寝具で、竹を編んで作る。夏はその上に寝ると、涼しいわけである。


蘄州笛竹天下知,鄭君所寶尤瑰奇。
蘄州(湖北省蘄春県)の笛竹は天下にその名を知られたものだが、鄭君が宝物にしている竹は特にすぐれて珍しく、美しいものだ。
蘄州 湖北省武漢市の近郊の黄岡市の蘄春県方面である。蘄州は隋の時代に設定されたもので、二郡(斉昌郡、永安郡)三県(斉昌県・蘄水県・浠水県)を刑南節度使が治めていた。○ もっとも。瑰奇 優れて珍しい。


擕來當晝不得臥,一府傳看黄琉璃。
それを持って来たのはちょうど昼だったが、その上に寝ることもならず、黄色の瑠璃のような竹を幕府の役所じゅうの人が統々と手渡しして見入る。
 たずさえる。笛を持参してくる。○黄琉璃 黄色の瑠璃のようである。


體堅色淨又藏節,盡眼凝滑無瑕疵。
その本体は堅く色はさっぱりとしているうえに節も見えぬようになっており、目のとどくところはすべてつるつるとしていて悪い所が全くない。
體堅 笛の本体は堅い。○色淨 色はさっぱりとしている○又藏節 節も見えないようになっている。


法曹貧賤眾所易,腰腹空大何能爲?』
法曹参軍は俸禄が低いし、地位も低い職で、人々に軽く見られているようだ。太って腰や腹ばかりが大きくても何ができるというのだろうか。
法曹 江陵の幕府での韓愈の役、法曹参軍。○貧賤 俸禄が低いし、地位も低い職。○腰腹空大 韓愈は太っていたことをいう。