鄭羣贈簟 #2 Ⅱ韓退之(韓愈)詩308 紀頌之の漢詩ブログ1003
(鄭群 簟を贈る)

江陵の夏は格別蒸し暑くて、肥満体系の韓愈にとって、しのぎかねるものだった。これまで、陽山では左遷とはいえ、県令とうい知事というトップの職であった。暑さに加え、法曹参軍というかなり不満な地位であり、仕事始めであり、職務を怠慢にすることはできない。そうしたときにもらった「箪」だから、自分の立場を理解してくれたように思われて、韓愈としては単に「箪」をもらったことへの謝意だけではなく、知己を得たわけで、深い感謝をささげている。(3回の内2回目)

鄭羣贈簟
蘄州笛竹天下知,鄭君所寶尤瑰奇。
擕來當晝不得臥,一府傳看黄琉璃。
體堅色淨又藏節,盡眼凝滑無瑕疵。
法曹貧賤眾所易,腰腹空大何能爲?』

自從五月困暑濕,如坐深甑遭蒸炊。
五月のころから暑さと湿気に悩まされるが、たとえば深い甑のなかに座って、蒸される目にあっているようなものだ。
手磨袖拂心語口,慢膚多汗真相宜。
手をこすったり袖で払ったりして、心にあることをもらしてひとりごとをいう。肥満体はとかく汗をかきやすいものだとはほんとうによく言ったものだと。
日暮歸來獨惆悵,有賣直欲傾家資。
日が暮れてから家に帰ってきて一人悲しい思いにとらわれ、よい竹むしろを売るものがあれば、すぐに家産を傾けてもいいとさえ思うほどだ。
誰謂故人知我意,卷送八尺含風漪。』
ところが思いがけないことに、旧友がわたくしの気持を知って、長さ八尺の含風浹を巻いて、贈ってくれた。

呼奴掃地鋪未了,光彩照耀驚童兒。
青蠅側翅蚤虱避,肅肅疑有清飆吹。
倒身甘寢百疾愈,卻願天日恒炎曦。
明珠青玉不足報,贈子相好無時衰。』

(鄭群 簟を贈る)#1
蘄州【きしゅう】の笛竹【ちくてき】は天下知る、鄭君の宝とする所 尤【もっと】も壊奇【かいき】なり。
携え来たり昼に当たるも臥すを得ず、一府伝え看る 黄瑠璃【こうるり】。
体堅く色浄く 又節を蔵す、尽眼【じんがん】凝滑にして瑕疵【かし】無し。
法曹は貧賤【ひんせん】にして衆の易【あなど】る所、腰腹空しく大なるも何をか能【よ】く為さん。

#2
五月自従り 暑湿に困【くる】しみ、深甑【しんそう】に坐して蒸炊【じょうすい】に遭うが如し。
手を磨し袖を払いて 心口に語る、慢膚【まんぷ】汗多きは真【まこと】に相宜【よろ】しと。
日暮れて帰り来たり 独り惆悵【ちゅうちょう】し、売る有らば直ちに家資を傾けんと欲す。
誰か謂【おも】わん 故人我が意を知り、八尺の含風【がんふう】漪【い】を巻いて送らんとは。

#3
奴を呼び地を掃【はら】って鋪【し】かしむること未だ了【お】わらざるに、光彩照耀して童児を驚かす。
青蠅【せいよう】は翅を側【そば】め蚤虱【そうしつ】は避け、粛粛【しゅくしゅく】として清飈【せいひょう】の吹くこと有るかと疑う。
身を倒して甘寝【かんしん】し百疾【ひゃくしつ】愈【い】え、却って願う 天日の恒に炎曦【えんぎ】なるを。
明珠・青玉も報ゆるに足らず、子【し】に相好【よ】くして時として衰うる無きを贈らん。


現代語訳と訳註
(本文)

自從五月困暑濕,如坐深甑遭蒸炊。
手磨袖拂心語口,慢膚多汗真相宜。
日暮歸來獨惆悵,有賣直欲傾家資。
誰謂故人知我意,卷送八尺含風漪。』


(下し文) #2
五月自従り 暑湿に困【くる】しみ、深甑【しんそう】に坐して蒸炊【じょうすい】に遭うが如し。
手を磨し袖を払いて 心口に語る、慢膚【まんぷ】汗多きは真【まこと】に相宜【よろ】しと。
日暮れて帰り来たり 独り惆悵【ちゅうちょう】し、売る有らば直ちに家資を傾けんと欲す。
誰か謂【おも】わん 故人我が意を知り、八尺の含風【がんふう】漪【い】を巻いて送らんとは。


(現代語訳)
五月のころから暑さと湿気に悩まされるが、たとえば深い甑のなかに座って、蒸される目にあっているようなものだ。
手をこすったり袖で払ったりして、心にあることをもらしてひとりごとをいう。肥満体はとかく汗をかきやすいものだとはほんとうによく言ったものだと。
日が暮れてから家に帰ってきて一人悲しい思いにとらわれ、よい竹むしろを売るものがあれば、すぐに家産を傾けてもいいとさえ思うほどだ。
ところが思いがけないことに、旧友がわたくしの気持を知って、長さ八尺の含風浹を巻いて、贈ってくれた。


(訳注)
自從五月困暑濕,如坐深甑遭蒸炊。

五月のころから暑さと湿気に悩まされるが、たとえば深い甑のなかに座って、蒸される目にあっているようなものだ。
 蒸し室甕。甑:(こしき)柾目の杉材と竹輪、及び鉄輪、ムシロ、わら縄、しゅろ縄 米を蒸す用具で、釜の上に据え猿を置き、甑布をひいて米を入れる。米を入れ終わると布を掛けムシロをのせ、蒸し米をつくる。


手磨袖拂心語口,慢膚多汗真相宜。
手をこすったり袖で払ったりして、心にあることをもらしてひとりごとをいう。肥満体はとかく汗をかきやすいものだとはほんとうによく言ったものだと。


日暮歸來獨惆悵,有賣直欲傾家資。
日が暮れてから家に帰ってきて一人悲しい思いにとらわれ、よい竹むしろを売るものがあれば、すぐに家産を傾けてもいいとさえ思うほどだ。
惆悵 恨み嘆くこと。
痩馬行  杜甫
去歲奔波逐餘寇,驊騮不慣不得將。
士卒多騎內廄馬,惆悵恐是病乘黃。
當時歷塊誤一蹶,委棄非汝能周防。
見人慘澹若哀訴,失主錯莫無晶光。
天寒遠放雁為伴,日暮不收烏啄瘡。
誰家且養願終惠,更試明年春草長。』

杏花  韓愈
・・・・・・・
鷓鴣鈎輈猿叫歇,杳杳深谷攢青楓。
豈如此樹一來翫,若在京國情何窮。
今旦胡為忽惆悵,萬片飄泊隨西東。
明年更發應更好,道人莫忘鄰家翁。』


誰謂故人知我意,卷送八尺含風漪。』
ところが思いがけないことに、旧友がわたくしの気持を知って、長さ八尺の含風浹を巻いて、贈ってくれた。
八尺含風漪 長さ八尺の風を含んださざなみという名の“竹むしろ”。