鄭羣贈簟 #3 Ⅱ韓退之(韓愈)詩309 紀頌之の漢詩ブログ1006
(鄭群 簟を贈る)

江陵の夏は格別蒸し暑くて、肥満体系の韓愈にとって、しのぎかねるものだった。これまで、陽山では左遷とはいえ、県令とうい知事というトップの職であった。暑さに加え、法曹参軍というかなり不満な地位であり、仕事始めであり、職務を怠慢にすることはできない。そうしたときにもらった「箪」だから、自分の立場を理解してくれたように思われて、韓愈としては単に「箪」をもらったことへの謝意だけではなく、知己を得たわけで、深い感謝をささげている。

鄭羣贈簟
蘄州笛竹天下知,鄭君所寶尤瑰奇。
擕來當晝不得臥,一府傳看黄琉璃。
體堅色淨又藏節,盡眼凝滑無瑕疵。
法曹貧賤眾所易,腰腹空大何能爲?』

自從五月困暑濕,如坐深甑遭蒸炊。
手磨袖拂心語口,慢膚多汗真相宜。
日暮歸來獨惆悵,有賣直欲傾家資。
誰謂故人知我意,卷送八尺含風漪。』

呼奴掃地鋪未了,光彩照耀驚童兒。
下男を呼び地面を掃いて敷かせたはじめたが、まだ敷きおわらぬうちに、美しい光が輝きだして子どもたちを驚かせた。
青蠅側翅蚤虱避,肅肅疑有清飆吹。
青繩も羽根をひそめてよけているし、ノミやシラミは逃げだしていく。そよそよとした清涼風が吹いてきたのかと見まちがえるほどだ。
倒身甘寢百疾愈,卻願天日恒炎曦。
からだを倒してその上に寝そべってみれば、さまざまな病気もなおってしまうだろう、これがあるなら、かえって太陽がいつもかんかん照りつけてほしいと願うほどだ。
明珠青玉不足報,贈子相好無時衰。』

これほどの物のお返しとしては、真珠や青玉などでは返礼にならぬ。君にはいつまでも衰えることのない好誼を贈ることにする。(何にも勝るものを贈られ、これ以上のない喜びをいう。)


(鄭群 簟を贈る)#1
蘄州【きしゅう】の笛竹【ちくてき】は天下知る、鄭君の宝とする所 尤【もっと】も壊奇【かいき】なり。
携え来たり昼に当たるも臥すを得ず、一府伝え看る 黄瑠璃【こうるり】。
体堅く色浄く 又節を蔵す、尽眼【じんがん】凝滑にして瑕疵【かし】無し。
法曹は貧賤【ひんせん】にして衆の易【あなど】る所、腰腹空しく大なるも何をか能【よ】く為さん。

#2
五月自従り 暑湿に困【くる】しみ、深甑【しんそう】に坐して蒸炊【じょうすい】に遭うが如し。
手を磨し袖を払いて 心口に語る、慢膚【まんぷ】汗多きは真【まこと】に相宜【よろ】しと。
日暮れて帰り来たり 独り惆悵【ちゅうちょう】し、売る有らば直ちに家資を傾けんと欲す。
誰か謂【おも】わん 故人我が意を知り、八尺の含風【がんふう】漪【い】を巻いて送らんとは。

#3
奴を呼び地を掃【はら】って鋪【し】かしむること未だ了【お】わらざるに、光彩照耀して童児を驚かす。
青蠅【せいよう】は翅を側【そば】め蚤虱【そうしつ】は避け、粛粛【しゅくしゅく】として清飈【せいひょう】の吹くこと有るかと疑う。
身を倒して甘寝【かんしん】し百疾【ひゃくしつ】愈【い】え、却って願う 天日の恒に炎曦【えんぎ】なるを。
明珠・青玉も報ゆるに足らず、子【し】に相好【よ】くして時として衰うる無きを贈らん。


現代語訳と訳註
(本文)

呼奴掃地鋪未了,光彩照耀驚童兒。
青蠅側翅蚤虱避,肅肅疑有清飆吹。
倒身甘寢百疾愈,卻願天日恒炎曦。
明珠青玉不足報,贈子相好無時衰。』

(下し文) #3
奴を呼び地を掃【はら】って鋪【し】かしむること未だ了【お】わらざるに、光彩照耀して童児を驚かす。
青蠅【せいよう】は翅を側【そば】め蚤虱【そうしつ】は避け、粛粛【しゅくしゅく】として清飈【せいひょう】の吹くこと有るかと疑う。
身を倒して甘寝【かんしん】し百疾【ひゃくしつ】愈【い】え、却って願う 天日の恒に炎曦【えんぎ】なるを。
明珠・青玉も報ゆるに足らず、子【し】に相好【よ】くして時として衰うる無きを贈らん。


(現代語訳)
下男を呼び地面を掃いて敷かせたはじめたが、まだ敷きおわらぬうちに、美しい光が輝きだして子どもたちを驚かせた。
青繩も羽根をひそめてよけているし、ノミやシラミは逃げだしていく。そよそよとした清涼風が吹いてきたのかと見まちがえるほどだ。
からだを倒してその上に寝そべってみれば、さまざまな病気もなおってしまうだろう、これがあるなら、かえって太陽がいつもかんかん照りつけてほしいと願うほどだ。
これほどの物のお返しとしては、真珠や青玉などでは返礼にならぬ。君にはいつまでも衰えることのない好誼を贈ることにする。(何にも勝るものを贈られ、これ以上のない喜びをいう。)


(訳注)
呼奴掃地鋪未了,光彩照耀驚童兒。

下男を呼び地面を掃いて敷かせたはじめたが、まだ敷きおわらぬうちに、美しい光が輝きだして子どもたちを驚かせた。
 めしつかい。捕虜。○ 敷く。○童兒 童は10歳前後で、兒はそれ以下。


青蠅側翅蚤虱避,肅肅疑有清飆吹。
青繩も羽根をひそめてよけているし、ノミやシラミは逃げだしていく。そよそよとした清涼風が吹いてきたのかと見まちがえるほどだ。
青蠅側翅 青繩も羽根をひそめてよけている○蚤虱避 ノミやシラミは逃げだしていく。○清飆 清涼風。


倒身甘寢百疾愈,卻願天日恒炎曦。
からだを倒してその上に寝そべってみれば、さまざまな病気もなおってしまうだろう、これがあるなら、かえって太陽がいつもかんかん照りつけてほしいと願うほどだ。
甘寢 だらっとして横になる。○百疾愈 さまざまな病気もなおってしまう。○ いつも。○炎曦 かんかん照りつけること。


明珠青玉不足報,贈子相好無時衰。』
これほどの物のお返しとしては、真珠や青玉などでは返礼にならぬ。君にはいつまでも衰えることのない好誼を贈ることにする。(何にも勝るものを贈られ、これ以上のない喜びをいう。)
明珠 真珠。○青玉 鋼玉石の一種。装飾品。竹、桐の別名○贈子相好 君には好誼を贈ろう。