雜詩 #2 Ⅱ-312韓退之(韓愈)詩40 #2 紀頌之の漢詩ブログ1015

792年進士及第。793・794年上級の博学宏詞科の落第が続いていたころの作で、こののち董晉に随って汴州の観察推官として幕下についた。

雜 詩
古史散左右、詩書置後前。
豈殊蠧書蟲、生死文字閒。
古道自愚憃、古言自包纏。
當今固殊古、誰與爲欣歓。』
獨攜無言子、共昇崑崙巓。
こうして一人で勉強をしている私は無言子といつも一緒である。そして彼を携えて、崑崙山の山頂に昇ってみようとおもう。
長風飄襟裾、逐起飛高圓。
遠くから風が吹いてきて襟やそで口から強い風が入り込んでくる。するとどうだろう、体は舞い上がり 高い円いあの天空を飛び廻っている。
下覛禹九州、一塵集豪端。
下界にはわたしが禹皇帝のひらいた九つの国を見下ろし、眺めまわした。筆の穂先にとまった塵のひとつぶの寄せ集めになってるようだ。
遨嬉未云幾、下已億萬年。
天上を遊びたわむれている、まだここでは幾年くらいのはずなのに、下界ではすでに一億万年が過ぎ去っているのだ。
向者夸奪子、萬墳厭其巓。』
以前わしを「時代遅れ」と馬鹿にしていたハッタリ屋、とっくの昔に死者となり、累々たる墳墓はハッタリ屋の頂、脳天を圧迫している。
惜哉抱所見、白黒未及分。
慷慨爲悲咤、涙如九河翻。
指摘相告語、雖還今誰親。
翩然下大荒、被髪騎騏驎。』


雜詩 #1
古史 左右に散じ、詩書 後前【こうぜん】に置く。
豈に殊【こと】ならむや 蠧書蟲【としょちゅう】の、文字の閒に生死するに。
古道【こどう】は自らを愚憃【ぐとう】にし、古言【こげん】は自らを包纏【ほうてん】す。
當今は固より古しえと殊【こと】なれり、誰と與【とも】にか欣歓をなさむ。』
#2
獨り無言子を攜へ、共に昇る崑崙【こんろん】の巓【いただき】。
長風【ちょうふう】襟裾【きんきょ】を飄し、逐に起て高圓【こうえん】に飛ぶ。
下 禹の九州を覛る、一塵 豪端に集【とど】まるを。
遨嬉【ごうぎ】すること未だ云【ここ】に幾【いくばく】ならん、下は已に億萬年。
向者【さき】の夸奪子【かだっし】、萬墳【まんふん】其の巓【いただき】厭【おそ】う。』
#3
惜しい哉【かな】所見を抱きしに、白黒【はくこく】未だ分【わか】つに及ばず。
慷慨【こうがい】悲咤【ひた】をなし、涙は九河【きゅうが】の翻えるが如し。
指摘【してき】して相【あい】告語【こくご】す、還ると雖も今や誰とか親【したし】まむ。
翩然【へんぜん】大荒【たいこう】に下らむとし、被髪【ひはつ】して騏驎【きりん】に騎【き】す。』


現代語訳と訳註
(本文)
獨攜無言子、共昇崑崙巓。
長風飄襟裾、逐起飛高圓。
下覛禹九州、一塵集豪端。
遨嬉未云幾、下已億萬年。
向者夸奪子、萬墳厭其巓。』

(下し文) #2
獨り無言子を攜へ、共に昇る崑崙【こんろん】の巓【いただき】。
長風【ちょうふう】襟裾【きんきょ】を飄し、逐に起て高圓【こうえん】に飛ぶ。
下 禹の九州を覛る、一塵 豪端に集【とど】まるを。
遨嬉【ごうぎ】すること未だ云【ここ】に幾【いくばく】ならん、下は已に億萬年。
向者【さき】の夸奪子【かだっし】、萬墳【まんふん】其の巓【いただき】厭【おそ】う。』


(現代語訳)
こうして一人で勉強をしている私は無言子といつも一緒である。そして彼を携えて、崑崙山の山頂に昇ってみようとおもう。
遠くから風が吹いてきて襟やそで口から強い風が入り込んでくる。するとどうだろう、体は舞い上がり 高い円いあの天空を飛び廻っている。
下界にはわたしが禹皇帝のひらいた九つの国を見下ろし、眺めまわした。筆の穂先にとまった塵のひとつぶの寄せ集めになってるようだ。
天上を遊びたわむれている、まだここでは幾年くらいのはずなのに、下界ではすでに一億万年が過ぎ去っているのだ。
以前わしを「時代遅れ」と馬鹿にしていたハッタリ屋、とっくの昔に死者となり、累々たる墳墓はハッタリ屋の頂、脳天を圧迫している。


(訳注)
獨攜無言子、共昇崑崙巓。
こうして一人で勉強をしている私は無言子といつも一緒である。そして彼を携えて、崑崙山の山頂に昇ってみようとおもう。
○無言子 無言の擬人化。子は孔子・荘子のそれで男子の美称。読書人の夢想宇宙遍歴に、相手を擬人的に出演させたもの。
(韓愈は受験勉強ばかりで、他人との接触が少なかったときであろう。)崑崙山に付いては李白『古風其四十』に詳しい


長風飄襟裾、逐起飛高圓。
遠くから風が吹いてきて襟やそで口から強い風が入り込んでくる。するとどうだろう、体は舞い上がり 高い円いあの天空を飛び廻っている。
長風 遠くから風が吹いてくる様子。転じて雄大な趣をいう。宋玉『高唐賦』「長風至而波起兮、若麗山之孤畝。」(長風至って而して波起り、麗山之れ孤畝の若し。)○高圓 大空。円弓の空。志が高いこと。


下覛禹九州、一塵集豪端。
下界にはわたしが禹皇帝のひらいた九つの国を見下ろし、眺めまわした。筆の穂先にとまった塵のひとつぶの寄せ集めになってるようだ。
 下界。○禹九州 古代の帝王の禹か地上を九つに区分秩序したといわれる中国をさす。○一塵 チリの一粒。大地を一塵と見る表現は李賀『夢天』にもあり、法華経如来寿量晶に由来する。道教思想で疲れることが多い。○豪端 豪は毫。長く鋭い細い毛の先。


遨嬉未云幾、下已億萬年。
天上を遊びたわむれている、まだここでは幾年くらいのはずなのに、下界ではすでに一億万年が過ぎ去っているのだ。
遨嬉 遊びたわむれる。○未云幾 ここでは幾年くらいのはず。


向者夸奪子、萬墳厭其巓。』
以前わしを「時代遅れ」と馬鹿にしていたハッタリ屋、とっくの昔に死者となり、累々たる墳墓はハッタリ屋の頂、脳天を圧迫している。
夸奪子 ハッタリ屋。詐欺師。・夸は大げさに振舞うこと。・奪は鳥が獲物をつかみ、羽をひろげて大きくはばたき去る。○萬墳 累々たる墳墓○厭其巓 山頂をおさえつける。厭は壓(圧)の字と通用される。死んだ人々の頭を圧迫する。