苦寒 韓愈<45>#7 Ⅱ韓退之(韓愈)詩326 紀頌之の漢詩ブログ 1057
*『唐書』の五行志によると、803良元十九年三月に大雪が降った。三月といえば、太陽暦では四月の末から五月のはじめにかけてに当たる。よほど不順な気候だったわけで、この詩はその時の模様につて、諷刺的な傾向の強い詩として書かれたものである。


苦寒 #1
四時各平分,一氣不可兼。
隆寒奪春序,顓頊固不廉。
太昊弛維綱,畏避但守謙。
遂令黄泉下,萌牙夭句尖。」
#2
草木不複抽,百味失苦甜。
凶飆攪宇宙,铓刃甚割砭。
日月雖雲尊,不能活烏蟾。
羲和送日出,恇怯頻窺覘。」
#3
炎帝持祝融,呵噓不相炎。
而我當此時,恩光何由沾。
肌膚生鱗甲,衣被如刀鐮。
氣寒鼻莫嗅,血凍指不拈。」
#4
濁醪沸入喉,口角如銜箝。
將持匕箸食,觸指如排簽。
侵鑪不覺暖,熾炭屢已添。
探湯無所益,何況纊與縑。」
#5
虎豹僵穴中,蛟螭死幽潛。
熒惑喪纏次,六龍冰脱髯。
芒碭大包内,生類恐盡殲。
啾啾窗間雀,不知已微纖。
擧頭仰天鳴,所願晷刻淹。」
#6
不如彈射死,卻得親炰燖。
鸞皇苟不存,爾固不在占。
其餘蠢動儔,俱死誰恩嫌。
伊我稱最靈,不能女覆苫。
悲哀激憤歎,五藏難安恬。」
#7
中宵倚牆立,淫淚何漸漸。
ま夜なかになって、垣根に倚り添った、とめどなく流れる涙、どうしてサメザメと泣けてくるのだろう。
天王哀無辜,惠我下顧瞻。
天の王たるものに哀れんでくれる心がないのか、我々下々には罪はないはずだ。我々には下界のことを顧みてくれて恵みを与えてほしいというものだ。
褰旒去耳纊,調和進梅鹽。
この世は目かくしをし、耳をふさいで去っていくことばかりだが、気候の手直し朝廷の手直しをするには汁の味を良くするために梅や塩をうまく使うように奸臣や野心を持った者、暗躍する宦官をとりのぞき、立派な人物をとりあげることが必要だ。
賢能日登禦,黜彼傲與憸。
若し賢臣で能力のあるものをと取り立ててひびこれにあてられると、おごる者、ねじけた者と利己主義の者たちをきちんと見分け官職を解いてくれる。
生風吹死氣,豁達如褰簾。」
生命の風が死気を吹きはらうのであり、心が大きく、小さな物事にこだわらない自由なものにしてくれ、ちょうどそれは、カラリと簾をあげた時のように、媚、嫉み、など暗い陰湿なものが吹き抜けていくのである。

#8
懸乳零落堕,晨光入前檐。
雪霜頓銷釋,土脈膏且黏。
豈徒蘭蕙榮,施及艾與蒹。
日萼行鑠鑠,風條坐襜襜。
天乎苟其能,吾死意亦厭。」

寒きに苦しむ #1
四時 各々 平分し、一気 兼ぬ可からず。
隆寒【りゅうかん】 春序を奪ふは、顓頊【せんぎょく】 固に廉ならず。
太昊【たいこう】 維綱【いこう】を弛め、畏避【いひ】して 但 謙を守る。
遂に黄泉の下【もと】をして、萌牙【ほうが】 勾尖【こうせん】を夭【よう】せしむ。
#2
草木 復 柚【ぬ】かず、百昧【ひゃくみ】 苦甜【くてん】を失ふ。
凶飆【きょうふう】 宇宙を攪【みだ】し、鑑刀【ぼうじん】 割砭【かつへん】より甚【はなはだ】し。
日月は尊しと云ふと韓も、烏蟾【うせん】を活かす能はず。
義和 日を造って出づるに、恇怯【きょうきょう】して頻りに窺覘するのみ。
#3
炎帝 祝融【しゅくゆう】を持【ひか】え、呵嘘【かきょ】して 相 炎【も】えしめず。
而も 我 此の時に當って、恩光 何に由ってか沾【うるは】はむ。
肌膚【きふ】鱗甲【りんこう】生じ、衣被【いひ】刀鐮【とうれん】の如し。
気 寒くして 鼻 嗅ぐなく、血 凍って 指 拈めず。
#4
濁醪【だくろう】沸いて 喉に入れども、口角 箝を銜める如し。
將に匕箸【ひちょ】を持して食はむとするに、指に觸【ふ】るること簽【せん】を排【なら】ぶるが如し。
鑪【ろ】を侵して暖【だん】を覚えず、炭を熾【さかん】にして 屡【しばしば】 己に添【そ】ふ。
湯を探れども益【えき】する所無し、何に況んや纊【こう】と縑【けん】とをや。
#5
虎豹【こひょう】穴中に僵【たう】れ、蛟螭【こうち】 幽潜【ゆうせん】に死す。
熒惑 纏次【てんじ】を喪【うしな】ひ、六龍【りくりゅう】冰って 髭脱く。
芒碭【ぼうとう】たる大包の内、生類【しょうるい】恐らくは盡く殲【つ】きむ。
啾啾たり窗間【そうかん】の雀、己の微纖【びせん】なるを知らず。
頭を挙げ 天を仰いで 鳴く、願う所は晷刻【きこく】の淹【ひさ】しからむことを。
#6
如【し】かず 彈射【だんしゃ】せられて死し、卻【かえ】って親く炰燖【ほうじん】せらるるを得むには。
鸞皇【らんこう】苟【いやし】くも存せず、爾【なんじ】は固【もと】より占【せん】に在らず。
其の餘【よ】の蠢動【しゅんどう】する儔【たぐい】、俱【とも】に死すとも誰か恩嫌【おんけん】せむ。
伊【こ】れ 我 最も靈なりと稱すとも、女【なんじ】を覆苫【ふくせん】すること能はず。
悲哀【ひあい】 激して 憤歎【ふんたん】し、五臓【ごぞう】 安恬【あんてん】し難し。
#7
中宵【ちゅうしょう】牆【かき】に倚って立てば、淫涙【いんるい】何ぞ 漸漸【ぜんぜん】たる。
天や 無辜【むこう】を哀み、我を惠みて下に顧瞻【こせん】せよ。
旒【りゅう】を褰【かか】げて耳纊【じこう】を去り、調和するに梅鹽【ばいえん】を進めよ。
賢能 日に登御【とうぎょ】し、彼の傲【ごう】と憸【せん】とを黜【しりぞ】けよ
生風【せいふう】死気【しき】を吹き、豁達【かくたつ】 簾【すだれ】を褰【かか】ぐる如くならむ。

#8
懸乳【けんにゅう】零落【れいらく】して堕ち、晨光【しんこう】 前檐【ぜんえん】に入り。
雪霜【せつそう】頓【とみ】に銷釋【しょうしゃく】し、且土脈【どみゃく】膏【こう】にして 且 黏【でん】ならむ。
豈 徒に蘭と蕙との榮【はなさ】くのみならむや、施【し】いて艾【かい】と蒹【けん】に及ばむ。
日萼【じつがく】行くゆく鑠鑠【しゃくしゃく】たり,風條【ふうじょう】坐【い】ながら襜襜【せんせん】たり。
天乎【てんや】苟【いやし】くも其れ能くせは,吾死すとも意【こころ】に亦厭【た】りなむ。」


現代語訳と訳註
(本文) #7
中宵倚牆立,淫淚何漸漸。
天王哀無辜,惠我下顧瞻。
褰旒去耳纊,調和進梅鹽。
賢能日登禦,黜彼傲與憸。
生風吹死氣,豁達如褰簾。」


(下し文)
中宵【ちゅうしょう】牆【かき】に倚って立てば、淫涙【いんるい】何ぞ 漸漸【ぜんぜん】たる。
天や 無辜【むこう】を哀み、我を惠みて下に顧瞻【こせん】せよ。
旒【りゅう】を褰【かか】げて耳纊【じこう】を去り、調和するに梅鹽【ばいえん】を進めよ。
賢能 日に登御【とうぎょ】し、彼の傲【ごう】と憸【せん】とを黜【しりぞ】けよ
生風【せいふう】死気【しき】を吹き、豁達【かくたつ】 簾【すだれ】を褰【かか】ぐる如くならむ。


(現代語訳)
ま夜なかになって、垣根に倚り添った、とめどなく流れる涙、どうしてサメザメと泣けてくるのだろう。
天の王たるものに哀れんでくれる心がないのか、我々下々には罪はないはずだ。我々には下界のことを顧みてくれて恵みを与えてほしいというものだ。
この世は目かくしをし、耳をふさいで去っていくことばかりだが、気候の手直し朝廷の手直しをするには汁の味を良くするために梅や塩をうまく使うように奸臣や野心を持った者、暗躍する宦官をとりのぞき、立派な人物をとりあげることが必要だ。
若し賢臣で能力のあるものをと取り立ててひびこれにあてられると、おごる者、ねじけた者と利己主義の者たちをきちんと見分け官職を解いてくれる。
生命の風が死気を吹きはらうのであり、心が大きく、小さな物事にこだわらない自由なものにしてくれ、ちょうどそれは、カラリと簾をあげた時のように、媚、嫉み、など暗い陰湿なものが吹き抜けていくのである。


(訳注) #7
中宵倚牆立,淫淚何漸漸。

ま夜なかになって、垣根に倚り添った、とめどなく流れる涙、どうしてサメザメと泣けてくるのだろう。
○中宵 夜中。宵はゆうがたではなく夜である。○淫涙 とめどなく流れる涙。○漸漸 サメザメと泣くさま。


天王哀無辜,惠我下顧瞻。
天の王たるものに哀れんでくれる心がないのか、我々下々には罪はないはずだ。我々には下界のことを顧みてくれて恵みを与えてほしいというものだ。
○天王 天の中に序列はないのか、あるなら王たるものが秩序、軌道をくるわせるな。○無辜 つみなきもの。○顧脂 かえりみる。


褰旒去耳纊,調和進梅鹽。
この世は目かくしをし、耳をふさいで去っていくことばかりだが、気候の手直し朝廷の手直しをするには汁の味を良くするために梅や塩をうまく使うように奸臣や野心を持った者、暗躍する宦官をとりのぞき、立派な人物をとりあげることが必要だ。
 日かくし。○耳綿 耳の詰め。○調和進梅鹽  汁の味をよくするためには調味料を使用するのがよい。気候の不順、あるいは政治の不調をよくするため、立派な人物をとりあげることが必要だ。


賢能日登禦,黜彼傲與憸。
若し賢臣で能力のあるものをと取り立ててひびこれにあてられると、おごる者、ねじけた者と利己主義の者たちをきちんと見分け官職を解いてくれる。
登御 登用する。○ 官職を解くこと。また、地位を下げる。○傲與憸 おごる者とねじけた者。いられている語である。○ おごる。おごりおごりたかぶる。○ かたよる。私利私欲。いずれも『書経』に、悪臣の性格を表現するために用いられている用語である。このころには宦官の力が増大。


生風吹死氣,豁達如褰簾。」
生命の風が死気を吹きはらうのであり、心が大きく、小さな物事にこだわらない自由なものにしてくれ、ちょうどそれは、カラリと簾をあげた時のように、媚、嫉み、など暗い陰湿なものが吹き抜けていくのである。
生風吹死気 生命の風が死気を吹きはらう。○豁達 カラッとしているさま。心が大きく、小さな物事にこだわらないさま。度量の大きいさま。