送靈師 韓退之(韓愈)詩<49#2>Ⅱ中唐詩332 紀頌之の漢詩ブログ1075


送靈師(韓愈 唐詩)
#1 
佛法入中國,爾來六百年。
齊民逃賦役,高士著幽禪。
官吏不之制,紛紛聽其然。
耕桑日失隸,朝署時遺賢。
靈師皇甫姓,胤胄本蟬聯。」
#2
少小涉書史,早能綴文篇。
幼少のころから 四書五経、歴史書を読んでしまった少年のころになると旱くも詩文の作成に力を示し巧く編纂したりした。
中間不得意,失蹟成延遷。
成人になって意気盛んなころになると、自分の持つ本位と違うことが生じてきて、文官試験をうけ、合格して中央の官途につくという出世のコースから、しりぞいて出家したのである。
逸志不拘教,軒騰斷牽攣。
ところが、人並はずれた志を持ってはいるが、仏法の教義なんぞに拘泥しないのであるし、それが人より高くぬきんでており、仏教徒として守るべき戒律を無視するのである。
圍棋鬥白黑,生死隨機權。
また、囲碁をさしては、白と黒をたたかわせるこをし、生かし、殺したとはかりごと巧みなものであった。
六博在一擲,梟盧叱回鏇。」

六博の賭博をやり、度々「ここ一発」と賽を投げたのである。賽の目の「梟盧一擲」と大勝負に出ることもよくやり、いかさま師を叱咤することもよくあった。
#3
戰詩誰與敵,浩汗横戈鋋。
飲酒盡百盞,嘲諧思逾鮮。
有時醉花月,高唱清且緜。
四座鹹寂默,杳如奏湘弦。
尋勝不憚險,黔江屢洄沿。」
#4
瞿塘五六月,驚電讓歸船。
怒水忽中裂,千尋堕幽泉。
環回勢益急,仰見團團天。
投身豈得計,性命甘徒捐。
浪沫蹙翻湧,漂浮再生全。」
#5
同行二十人,魂骨俱坑填。
靈師不掛懷,冒涉道轉延。
開忠二州牧,詩賦時多傳。
失職不把筆,珠璣爲君編。
強留費日月,密席羅嬋娟。」
#6
昨者至林邑,使君數開筵。
逐客三四公,盈懷贈蘭荃。
湖游泛漭沆,溪宴駐潺湲。
别語不許出,行裾動遭牽。
鄰州競招請,書劄何翩翩。」
#7
十月下桂嶺,乘寒恣窺緣。
落落王員外,爭迎穫其先。
自從入賓館,占吝久能專。
吾徒頗擕被,接宿窮歡妍。
聽說兩京事,分明皆眼前。」
#8
縱横雜謠俗,瑣屑鹹羅穿。
材調真可惜,朱丹在磨研。
方將斂之道,且欲冠其顛。
韶陽李太守,高步凌雲煙。
得客輒忘食,開囊乞繒錢。」
#9
手持南曹叙,字重青瑤鐫。
古氣參彖系,高標摧太玄。
維舟事幹謁,披讀頭風痊。
還如舊相識,傾壺暢幽悁。
以此複留滯,歸驂幾時鞭。」


(靈師を送る)
佛法【ぶっぽう】 中國に入り,爾來【じらい】 六百年。
齊民【せいみん】 賦役【ふえき】を逃れ,高士【こうし】 幽禪【ゆうぜん】を著【め】づ。
官吏 之を制せず,紛紛として其の然【しか】ることを聽【ゆる】す。
耕桑【こうそう】日【ひび】に隸【れい】を失い,朝署【ちょうしょ】時に賢を遺せり。
靈師は皇甫【こうほ】の姓,胤胄【いんちゅう】本【もともと】 蟬聯【せんれん】たり。」
#2
少小【しょうしょう】にして書史【しょし】に涉り,早くより能く文篇【ぶんへん】を綴る。
中間 意を得ず,蹟【あと】を失って延遷【えんせん】を成す。
逸志【いっし】教に拘わらず,軒騰【けんとう】して牽攣【けんれん】を斷つ。
棋【き】を圍【かこ】んで白黑を鬥【たたか】わせ,生死機權【きけん】に隨う。
六博 一擲【いってき】在り,梟盧【きゅうろ】回鏇【かいせん】を叱っす。」

#3
詩を戰はして誰か與に敵せん、浩汗【こうかん】 戈鋋【かえん】を横ふ。
酒を飲んで百盞【ひゃくさん】を盞し、嘲諧【ちょうかい】 思 逾【いよい】よ鮮なり。
時有って花月に醉ふ、高唱 清くして 且 緜【はるか】なり。
四座 鹹【ことごと】く寂默【せきもく】し、杳【よう】として湘弦【しょうげん】を奏するが如し。
勝を尋ねて瞼【けん】を憚【はばか】らず、黔江【けんこう】 屢 洄沿【かいえん】す。
#4
瞿塘【くとう】 五六月、驚電【けいでん】 帰船【きせん】に譲る。
怒水【どすい】 忽ち 中裂し、千尋【せんじん】 幽泉【ゆうせん】に堕つ。
環廻【かんかい】して 勢 益【ますま】す急に、仰いで團團【だんだん】の天を見る。
身を投ずる 豈に計を得むや、性命【せいめい】 甘んじて徒に捐【す】つ。
浪沫【ろうばく】 蹙【ちじま】って翻涌【ほんよう】し、漂浮【ひょうふ】して 再び 生全【いのちまった】し。
#5
同行 二十人、魂骨【こんこつ】 倶に坑填【こうてん】す。
霊師 懐【おもい】に掛けず、冒渉【ぼうしょう】 道 轉【うたた】た延ぶ。
開忠 二州の牧、詩賦【しふ】 時に多く傳ふ。
職を失いしより筆を把らざるに、珠璣【しゅき】 君が爲に編めり。
強いて留めて日月を費やさしめ、密席【みつせき】に嬋娟【ぜんけん】を羅【つら】ねき。
#6
昨者 林邑【りんゆう】に至り、使君【しくん】 數【しばし】ば筵を開く。
逐客【ちくかく】の三四公、懐【ふところ】に盈つるまで蘭荃【らんせん】を贈る。
湖游【こゆう】 漭沆【もうこう】に泛び、渓宴【けいえん】 潺湲【せんかん】に駐まる。
別語【べつご】 出すを許さず、行裾【こうきょ】 動【やや】もすれば牽くに遭ふ。
鄰州【りんしゅう】 競って招請【しょうせい】し、書札 何ぞ 翩翩【へんべん】たる。
#7
十月 桂嶺【けいれい】を下る、寒に乘じて窺緑【きえん】を恣【ほしいまま】にす。
落落たる王員外、爭い迎へて其の先を穫【え】たり。
賓館【ひんかん】に入りてより、占吝【せんひん】して久しく能く専【もっぱら】にす。
吾が徒【と】 頗【すこぶ】る被を擕【たずさ】ヘ、宿を接して 歎研【かんけん】を窮【きわ】む。
兩京の事を説くを聽くに、分明にして 皆 眼前。
#8
樅横 謠俗【ようぞく】を雑【まじ】ヘ、瑣屑【ちせつ】 鹹【ことごと】く羅穿【らせん】す。
材調 真【まこと】に惜む可し、朱丹【しゅたん】 磨研【まけん】に在り。
方將【まさ】に之を道に斂め、且 其の顛【いただき】に冠【かん】せしめむと欲す。
韶陽【しょうよう】の李太守、高歩【こうほ】 雲煙【うんえん】を陵【しのぐ】ぐ。
客を得ては輒【すなわ】ち食を忘れ、囊を開いて繒錢【そうせん】を乞【あた】ふ。
#9
手に南曹【なんそう】の叙を持するに、字は青瑤【せいよう】に鐫【ほ】りしよりも重し。
古気 彖系【たんけい】を參【まじ】ヘ、高標【こうひょう】 太玄を摧【くだ】く。
舟を維【つな】いで干謁【かんえつ】を事とし、披讀【ひどく】すれば頭風痊【い】ゆ。
還た旧相 識の如く、壺を傾けて幽悁【ゆうけん】を暢【の】べむ。
此を以て復た留滞し、歸驂【きさん】 幾時か鞭うたむ。

天台山 瓊臺

現代語訳と訳註
(本文)
#2
少小涉書史,早能綴文篇。
中間不得意,失蹟成延遷。
逸志不拘教,軒騰斷牽攣。
圍棋鬥白黑,生死隨機權。
六博在一擲,梟盧叱回鏇。」


(下し文) #2
少小【しょうしょう】にして書史【しょし】に涉り,早くより能く文篇【ぶんへん】を綴る。
中間 意を得ず,蹟【あと】を失って延遷【えんせん】を成す。
逸志【いっし】教に拘わらず,軒騰【けんとう】して牽攣【けんれん】を斷つ。
棋【き】を圍【かこ】んで白黑を鬥【たたか】わせ,生死機權【きけん】に隨う。
六博 一擲【いってき】在り,梟盧【きゅうろ】回鏇【かいせん】を叱っす。」


(現代語訳)
幼少のころから 四書五経、歴史書を読んでしまった少年のころになると旱くも詩文の作成に力を示し巧く編纂したりした。
成人になって意気盛んなころになると、自分の持つ本位と違うことが生じてきて、文官試験をうけ、合格して中央の官途につくという出世のコースから、しりぞいて出家したのである。
ところが、人並はずれた志を持ってはいるが、仏法の教義なんぞに拘泥しないのであるし、それが人より高くぬきんでており、仏教徒として守るべき戒律を無視するのである。
また、囲碁をさしては、白と黒をたたかわせるこをし、生かし、殺したとはかりごと巧みなものであった。
六博の賭博をやり、度々「ここ一発」と賽を投げたのである。賽の目の「梟盧一擲」と大勝負に出ることもよくやり、いかさま師を叱咤することもよくあった。


(訳注)
少小涉書史,早能綴文篇。

幼少のころから 四書五経、歴史書を読んでしまった少年のころになると旱くも詩文の作成に力を示し巧く編纂したりした。


中間不得意,失蹟成延遷。
成人になって意気盛んなころになると、自分の持つ本位と違うことが生じてきて、文官試験をうけ、合格して中央の官途につくという出世のコースから、しりぞいて出家したのである。
成延遷 しりぞく。文官試験をうけ合格すれば官途につくという予定のコースから、しりぞいて出家したことをさす。


逸志不拘教,軒騰斷牽攣。
ところが、人並はずれた志を持ってはいるが、仏法の教義なんぞに拘泥しないのであるし、それが人より高くぬきんでており、仏教徒として守るべき戒律を無視するのである。
逸志 並はずれた志。○軒騰 高くつき上っている。○斷牽攣 束縛をたち切る。仏教徒として守るべき戒律を無視することをさす。


圍棋鬥白黑,生死隨機權。
また、囲碁をさしては、白と黒をたたかわせるこをし、生かし、殺したとはかりごと巧みなものであった。
○機 はかりごと。


六博在一擲,梟盧叱回鏇。」
六博の賭博をやり、度々「ここ一発」と賽を投げたのである。賽の目の「梟盧一擲」と大勝負に出ることもよくやり、いかさま師を叱咤することもよくあった。
六博 。ハクチの道具。○梟盧 バクチに使うサイの目。当時、五木というサイを使った。五木は五本の小さなヘラのような木で、両端がとがり、投げるとくるくる室わる。両面は白と黒に塗りわけ、黒い面に子牛、白い面に焙が描いてある。五本投げて白黒の出かたで勝負する。五本とも黒が出ると盧といい、最高で六点。四黒一白を薙といって次点。全部白だと梟といって最下の一点。これが普通の採点法だが場合によっては、いろいろ複雑な採点法を加味したようである。

梟盧一擲【きょうろいってき】思い切ってさいころを投げる。大勝負に出ることのたとえ。  「梟盧」は、ばくち。「一擲」は、すごろくのさいころなどを思い切って投げること。梟は一、盧は六を表す
李白『猛虎行』
有時六博快壯心。 繞床三匝呼一擲。
そのとき六博の賭けごとに興じ快壯の気分になる。床を三回囘そして一回賽を投げろと連呼するのだ。
○六博 紀元前後の漢時代を中心に戦国時代から魏晋時代に流行した2人用の盤上遊戯。 3~40cm四方の盤上で、さいころを使って各自12個の駒を進める。
 盤にはアルファベットのLやTのような記号が描かれているが、複数の種類が発見されている。 駒を進めるためにはさいころを用いるが、6本の棒状のものや18面体のものが発見されている。双六のようなレースゲームであるという説と、駒を取り合う戦争ゲームであるという説がある。多くはふた組に分かれて酒を賭け、馳せゆく時の間に酔いしれるというもの。○繞床 床を廻る○三匝 三匝さんかいまわる 三方を囲む○一擲 一回賽を投げろと連呼する
李白『梁園吟』「連呼五白行六博,分曹賭酒酣馳輝。」
「五白よ五白よ」と連呼して、六博の賭けごとに興じあい、ふた組に分かれて酒を賭け、馳せゆく時の間に酔いしれる。』
〇五白-購博の重義が黒く裏が白い五つのサイコロを投げて、すべて黒の場合(六里嘉最上、すべて白の場合〔五日)がその次、とする。〇六博-賭博の毎→二箇のコマを、六つずつに分けて質する。〇分嘉酒-二つのグループ(曹)に分かれて酒の勝負をする。○酎-酒興の盛んなさま。○馳曙-馳けるように過ぎゆく日の光、時間。」
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