陪杜侍御遊湘西兩寺獨宿有題一首,因獻楊常侍(2) 韓退之(韓愈)詩<55-#2>Ⅱ中唐詩352 紀頌之の漢詩ブログ1135

#2
是時秋之殘,暑氣尚未斂。
時はすでに秋から冬への秋の終わりになっている、それなのに暑気はなお収まらないのである。
群行忘後先,朋息棄拘檢。
一行はあとさき忘れて群がり歩んでいる、休みもいっしょにとりながら他人行儀なところがないのである。
客堂喜空涼,華榻有清簟。
到着した客殿がカラリと涼しいのがとてもうれしい、そして美しい長椅子にすがすがしい竹簟さえしつらえてあるのだ。
澗蔬煮蒿芹,水果剝菱芡。
渓流でとれたかおりゆかしいヨモギやセリの精進料理があり、清涼の果物には菱やミズブキの実が割いていれてある。
伊餘夙所慕,陪賞亦雲忝。
これこそわたしがずっと前から望んだことなのだ、案内してくれる方が また実に良い人でありがたい。

#2

是の時 秋の残【おわり】なるも、暑気【しょき】尚 未だ斂【おさ】まらず。
羣行【ぐんこう】して後先【こうせん】を忘れ、朋に息【いこ】ふに拘檢【こうけん】を棄つ。
客堂【かくどう】に空涼【くうりょう】を喜び、華榻【かとう】に清簟【せいてん】有り。
澗疏【かんそ】嵩芹【こうきん】を煮、水果【すいか】菱芡【りょうけん】を剥【さ】く。
伊【こ】れ余【わ】が夙【つと】に慕ふ所、陪賞【ばいしょう】亦た云【ここ】に忝【かたじけ】なし。


現代語訳と訳註
(本文)

是時秋之殘,暑氣尚未斂。羣行忘後先,朋息棄拘檢。
客堂喜空涼,華榻有清簟。澗蔬煮蒿芹,水果剝菱芡。
伊餘夙所慕,陪賞亦雲忝。


(下し文)#2
是の時 秋の残【おわり】なるも、暑気【しょき】尚 未だ斂【おさ】まらず。
羣行【ぐんこう】して後先【こうせん】を忘れ、朋に息【いこ】ふに拘檢【こうけん】を棄つ。
客堂【かくどう】に空涼【くうりょう】を喜び、華榻【かとう】に清簟【せいてん】有り。
澗疏【かんそ】嵩芹【こうきん】を煮、水果【すいか】菱芡【りょうけん】を剥【さ】く。
伊【こ】れ余【わ】が夙【つと】に慕ふ所、陪賞【ばいしょう】亦た云【ここ】に忝【かたじけ】なし。


 (現代語訳)
時はすでに秋から冬への秋の終わりになっている、それなのに暑気はなお収まらないのである。
一行はあとさき忘れて群がり歩んでいる、休みもいっしょにとりながら他人行儀なところがないのである。
到着した客殿がカラリと涼しいのがとてもうれしい、そして美しい長椅子にすがすがしい竹簟さえしつらえてあるのだ。
渓流でとれたかおりゆかしいヨモギやセリの精進料理があり、清涼の果物には菱やミズブキの実が割いていれてある。
これこそわたしがずっと前から望んだことなのだ、案内してくれる方が また実に良い人でありがたい。


(訳注)
是時秋之殘,暑氣尚未斂。
時はすでに秋から冬への秋の終わりになっている、それなのに暑気はなお収まらないのである。
秋之残 残はそこないやぶれてわずかにのこるという意味で、おわりに近いこと。秋の終わり。
・斂 暑さが収斂していくこと。
 

羣行忘後先,朋息棄拘檢。
一行はあとさき忘れて群がり歩んでいる、休みもいっしょにとりながら他人行儀なところがないのである。
羣行忘後先 軍は群と同じ。むれ立ってゆき、主客、あとさきなどを忘れる。○朋恩棄拘検 いっしょに休んで、客は休んでも、主人は休んでほならないなどいった他人行儀なことはしない。


客堂喜空涼,華榻有清簟。
到着した客殿がカラリと涼しいのがとてもうれしい、そして美しい長椅子にすがすがしい竹簟さえしつらえてあるのだ。
空涼 人気がなく掠しい。涼は俗字。・華榻 美しい長椅子。ベッドとして使用することもある。・清簟 すがすがしい竹むしろ。韓愈は、でっぷりと肥えた人で、暑がりやの汗かきだった。少し親しい人だと、訪ねていった早々に、竹むしろと枕を出させて、ねそべった、というエピソードが残っている鄭羣贈簟 #1 Ⅱ韓退之(韓愈)詩307 紀頌之の漢詩ブログ998寺の客殿にはいって、まず華榻清簟をうたうところ、いかにもかれらしい。この時も、おそらく、杜侍御などほったらかしにして、大好きな簟にごろりと寝ころんだことだろうと思う。


澗蔬煮蒿芹,水果剝菱芡。
渓流でとれたかおりゆかしいヨモギやセリの精進料理があり、清涼の果物には菱やミズブキの実が割いていれてある。
澗疏 谷間でとれた蔬菜。・蒿芹 ヨモギとセリ。・菱芡 ヒシとミズブキ。


伊餘夙所慕,陪賞亦雲忝。
これこそわたしがずっと前から望んだことなのだ、案内してくれる方が また実に良い人でありがたい。
陪賞 案内してくれる方がいること。お供して鑑賞させてもらう。



陪杜侍御遊湘西兩寺獨宿有題一首,因獻楊常侍(杜侍御に陪して湘西両寺に遊び独り宿って一首題あり。因って楊常侍に献ず。)
#1 
長沙千里平,勝地猶在險。

況當江闊處,鬥起勢匪漸。

深林高玲瓏,青山上琬琰。

路窮臺殿辟,佛事煥且儼。

剖竹走泉源,開廊架崖广。
長沙 千里 平かなれど、勝地【しょうち】は猶は険に在り。
況んや 江の闊【ひろ】き処に当たって、鬥起【とき】すること勢の漸【ぜん】に匪【あら】ざるをや。
深林 高くして 玲瓏【れいろう】たり、青山 上に 琬琰【えんえん】たり。
路 窮まって 台殿【だいでん】聞け、仏事【ぶつじ】 煥【かん】として且つ儼【げん】なり。
竹を剖【さ】いて泉源【せんげん】を走らせ、廊を開いて崖广【がいげん】に架く。
#2 
是時秋之殘,暑氣尚未斂。

群行忘後先,朋息棄拘檢。

客堂喜空涼,華榻有清簟。

澗蔬煮蒿芹,水果剝菱芡。

伊餘夙所慕,陪賞亦雲忝。
是の時 秋の残【おわり】なるも、暑気【しょき】尚 未だ斂【おさ】まらず。
羣行【ぐんこう】して後先【こうせん】を忘れ、朋に息【いこ】ふに拘檢【こうけん】を棄つ。
客堂【かくどう】に空涼【くうりょう】を喜び、華榻【かとう】に清簟【せいてん】有り。
澗疏【かんそ】嵩芹【こうきん】を煮、水果【すいか】菱芡【りょうけん】を剥【さ】く。
伊【こ】れ余【わ】が夙【つと】に慕ふ所、陪賞【ばいしょう】亦た云【ここ】に忝【かたじけ】なし。
#3 
幸逢車馬歸,獨宿門不掩。

山樓黑無月,漁火燦星點。

夜風一何喧,杉檜屢磨颭。

猶疑在波濤,怵惕夢成魘。

靜思屈原沈,遠憶賈誼貶。
幸に軍馬の帰るに逢ひ、濁り宿って 門 掩【おお】はず
山楼【さんろう】 黒くして 月無く、漁火【ぎょか】 燦【さん】として 星のごとく點ず。
夜風 一に何ぞ喧【かまびす】しき、杉檜【さんかい】 屡【しばし】ば磨颭【ません】す。
猶は疑ふらくは波涛【はとう】に在るがごとく、怵惕【じゅつてき】して 夢 魘【えん】を成す。
静に屈原の沈みしを思い、遠く賈誼【かぎ】の貶【へん】せられしを憶ふ。
#4 
椒蘭爭妒忌,絳灌共讒諂。

誰令悲生腸,坐使淚盈臉。

翻飛乏羽翼,指摘困瑕玷。

珥貂藩維重,政化類分陝。

禮賢道何優,奉己事苦儉。

椒蘭【しょうらん】 爭ひて妒忌【とき】し、絳灌【こうかん】 共に讒諂【ざんてん】す。
誰か悲をして腸に生ぜしめ、坐【そぞろ】に涙をして臉【ほほ】に盈【み】てしむる。
翻飛【はんひ】せむとするも羽翼【うよく】に乏しく、指摘【してき】して瑕玷【かてん】に困【くるし】めらる。
貂【ちょう】を珥【さしはさ】んで藩維【はんい】重く、政化は陝【せん】を分ちしに類【に】たり。
賢を礼して 道 何ぞ優【ゆう】なる、己【おのれ】を奉ずるに 事 苦【はなは】だ倹【けん】なり。
#5 
大廈棟方隆,巨川楫行剡。

經營誠少暇,遊宴固已歉。

旅程愧淹留,徂
嗟荏苒。

平生每多感,柔翰遇頻染。

輾轉嶺猿鳴,曙燈青睒睒。
大廈【たいか】棟 方【まさ】に隆【たか】く、巨川【きょせん】楫【かじ】行く削【けず】る。
経営【けいえい】して誠に暇【いとま】少く、遊宴【ゆうえん】は固【もと】より己【すで】に歉【あきた】りず。
旅程【りょてい】 淹留【えんりゅう】を愧【は】ぢ、徂
【そさい】 荏苒【じんぜん】を嗟【さ】す
平生【へいぜい】毎【つね】に感ずること多く、柔翰【じゅうかん】遇【たまた】ま頻【しきり】に染む。