早春雪中聞鸎 韓退之(韓愈)詩<56>Ⅱ中唐詩356 紀頌之の漢詩ブログ1147
254早春雪中聞鸎(早春雪中に鶯を聞く)

806年早春江陵府法曹参軍亊の時作る。

早春雪中聞鸎
朝鸎雪裏新,雪樹眼前春。
帶澀先迎氣,侵寒已報人。
   
共矜初聽早,誰貴後聞頻。
暫囀那成曲,孤鳴豈及辰。
   
風霜徒自保,桃李詎相親。
寄謝幽棲友,辛勤不為身。

早春、まだ雪がある中、鸎のこえを聞く。
朝になってうぐいすが庭中の雪のなかではじめて鳴いた、雪をおく樹々に春は目の前ということを知らせてくれる。
鶯も鳴き初めで、渋みを帯びた声ではあるが、まずその早春の気を迎えるのだ、寒さをおかしてくれて、人に春をつげ知らしてくれたのだ。
人々はともに初めて聞きくこと早春であることを ほこりにしあっている、後から聞いたのではなんど聞いたところで誰が貴いものと思うであろうか。
けさは暫く鳴いていたが、あれで一曲歌ったことにはなっていたのだろうか、ひとりで鳴いていたけれど、 うまく時節に合っているのだろうか、他のうぐいすと競いあってこそ歌声が洗練されるというものだ。
風霜に耐えて自分自身をきびしく保つのもいいのであるが、春の盛りの桃やスモモとどうして互いに仲よくなれるというのであろうか
君にだけにひとこと言わせてもらうのを許してもらいたいことだが、静かに隠棲して友と過ごしたいということを、辛い勤めに励むのも身のためばかりじゃないのだ。


(早春雪中に鶯を聞く)
朝鸎【ちょうおう】雪裏【せつり】に新なり、雪樹【せつじゅ】眼前の春。
澀【じゅう】を帯びて先づ気を迎へ、寒を侵して己に人に報ず。
共に解る 初めて聴きしことの早きを、誰か貴ばむ後に聞くことの頻なるを。
暫く囀【さえず】るも那んぞ曲を成さむ、孤鳴【こめい】豈に辰【とき】に及ぼむや。
風霜に徒に自ら保たむも、桃李 詎【なん】ぞ相親まむ。
寄謝す 幽棲【ゆうせい】の友、辛勤【しんきん】するは身の馬ならず。


現代語訳と訳註
(本文)

朝鶯雪裏新,雪樹眼前春。
帶澀先迎氣,侵寒已報人。
共矜初聽早,誰貴後聞頻。
暫囀那成曲,孤鳴豈及辰。
風霜徒自保,桃李詎相親。
寄謝幽棲友,辛勤不為身。

(下し文) (早春雪中に鶯を聞く)
朝鸎【ちょうおう】雪裏【せつり】に新なり、雪樹【せつじゅ】眼前の春。
澀【じゅう】を帯びて先づ気を迎へ、寒を侵して己に人に報ず。
共に解る 初めて聴きしことの早きを、誰か貴ばむ後に聞くことの頻なるを。
暫く囀【さえず】るも那んぞ曲を成さむ、孤鳴【こめい】豈に辰【とき】に及ぼむや。
風霜に徒に自ら保たむも、桃李 詎【なん】ぞ相親まむ。
寄謝す 幽棲【ゆうせい】の友、辛勤【しんきん】するは身の馬ならず。


(現代語訳)
早春、まだ雪がある中、鸎のこえを聞く。
朝になってうぐいすが庭中の雪のなかではじめて鳴いた、雪をおく樹々に春は目の前ということを知らせてくれる。
鶯も鳴き初めで、渋みを帯びた声ではあるが、まずその早春の気を迎えるのだ、寒さをおかしてくれて、人に春をつげ知らしてくれたのだ。
人々はともに初めて聞きくこと早春であることを ほこりにしあっている、後から聞いたのではなんど聞いたところで誰が貴いものと思うであろうか。
けさは暫く鳴いていたが、あれで一曲歌ったことにはなっていたのだろうか、ひとりで鳴いていたけれど、 うまく時節に合っているのだろうか、他のうぐいすと競いあってこそ歌声が洗練されるというものだ。
風霜に耐えて自分自身をきびしく保つのもいいのであるが、春の盛りの桃やスモモとどうして互いに仲よくなれるというのであろうか
君にだけにひとこと言わせてもらうのを許してもらいたいことだが、静かに隠棲して友と過ごしたいということを、辛い勤めに励むのも身のためばかりじゃないのだ。


 (訳注)
早春雪中聞鸎

早春、まだ雪がある中、鸎のこえを聞く。 
・鸎 ウグイス黄莺コウライウグイス.莺歌燕舞 yīng gē yan wǔ《成》(鴬が歌い燕が舞う>)すばらしい春の景色(のような状勢)を形容.


朝鶯雪裏新,雪樹眼前春。
朝になってうぐいすが庭中の雪のなかではじめて鳴いた、雪をおく樹々に春は目の前ということを知らせてくれる。
雪裏 雪の中で。


帶澀先迎氣,侵寒已報人。
鶯も鳴き初めで、渋みを帯びた声ではあるが、まずその早春の気を迎えるのだ、寒さをおかしてくれて、人に春をつげ知らしてくれたのだ。
帯渋 声がまだ十分なめらかでない。・報人 人に春をつげ知らす。

   
共矜初聽早,誰貴後聞頻。
人々はともに初めて聞きくこと早春であることを ほこりにしあっている、後から聞いたのではなんど聞いたところで誰が貴いものと思うであろうか。


暫囀那成曲,孤鳴豈及辰。
けさは暫く鳴いていたが、あれで一曲歌ったことにはなっていたのだろうか、ひとりで鳴いていたけれど、 うまく時節に合っているのだろうか、他のうぐいすと競いあってこそ歌声が洗練されるというものだ。
孤鳴隻及辰 うぐいすも、他のうぐいすと競いあってこそ歌声が洗練されるのだ。孤独を守っていては、人々が聞いてくれようという時になっても、うまい工合にうたえず、せっかくのチャンスを失ってしまいはしないか。ことに、文学や芸術というものは、人に誉めそやされてこそ豊艶な光を放つようになるのだ。
   

風霜徒自保,桃李詎相親。
風霜に耐えて自分自身をきびしく保つのもいいのであるが、春の盛りの桃やスモモとどうして互いに仲よくなれるというのであろうか
風霜徒自保 風霜の中でひたすら我慢して、自らを保つのはむだなことだ。・桃李 人々にしたわれるもの。春の盛り桃李に、その時になって急にものを言ったとしてうまくゆかないというのである。


寄謝幽棲友,辛勤不為身。
君にだけにひとこと言わせてもらうのを許してもらいたいことだが、静かに隠棲して友と過ごしたいということを、辛い勤めに励むのも身のためばかりじゃないのだ。
不為身 自分の身のためにするのではない。自分の地位を高めれば、人々が注目してくれ、意見も聞いてもらえるようになろう。そうすればわれわれの理想が実際にうつされやすくなるだろう。それが、世の人々に、より多く貢献することになるのではないか。そしてその窮極が隠棲するということになる。