南山詩 韓退之(韓愈)詩<63-#2>Ⅱ中唐詩378 紀頌之の漢詩ブログ1213


南山詩(韓愈 唐詩)(全20回)#1~#20

 第一部(#1~#4)・終南山連峰の概要・四季

#1 
吾聞京城南,茲惟群山囿。
東西兩際海,巨細難悉究。
山經及地志,茫昧非受授。
團辭試提挈,掛一念萬漏。
欲休諒不能,粗叙所經覯。
わたしは聞いていた都長安城の南にあり、そこにこそ古代から修業の場として集う所である。
山も川も東西に連なっており、地の際、海にまで続き、大いなる山小さき山とことごとく調べ尽くすのはむずかしいこと。
山経と地志とがあっても、とりとめなくてよくわからないので直接に伝授されるというものではない。
その地に伝わる言葉を取り集め試みに取り上げようとすれば、一つだけがとりあげられてその他の多くが漏れてしまうのではないかと気づかわしいとおもう。
だがやめようとしてもどうしてもやめられないもので、そこでわたしがこの目で見たところをあらまし書きつらねてみることにする。
南山の詩 #1
吾れ聞く 京城の南、茲【こ】こは維れ群山の囿【ゆう】なりと。
東西 両つながら海に際【まじ】わり
巨細【きょさい】悉【ことごと】くは究【きわ】め難し。
山經【さんきょう】及び地志【ちし】、茫昧【ぼうまい】として受授【じゅじゅ】するに非ず。
團辭【だんじ】して試みに提挈【ていけつ】せんとすれば,一を掛けて萬を漏らさんことを念う。
休めなんと欲すれば諒【まこと】に能【あたわ】ず,粗【ほ】ぼ經覯【へみ】し所を叙【つい】でん。

#2
嚐升崇丘望,戢戢見相湊。
かつて太白山ほどの高い丘にのぼって見渡したことがあった、この山に向かって山々が集まってきて、その上がかさなりあっているのだ。
晴明出棱角,縷脈碎分繡。
からりと晴れて山の稜線が際立ててつらなる、いと筋のように尾根がちりぢりの刺繍のような模様をなしている。
蒸嵐相澒洞,表里忽通透。
晴れの日の陽炎のわき上がる山のすんだ気がまじりあっている、そこに表側と裏側を山気がつきぬける。
無風自飄簸,融液煦柔茂。
風もないのにおのずと巻きあげられ、とけたあとのぬくもりが草木をうるおすのである。
横雲時平凝,點點露數岫。
空高く横長の雲が時に一文字となってたなびき、点点とその上に峰々がつき出ている。
嘗つて昇りて崇丘【すうきゅう】に望まん、戢戢【しゅうしゅう】として相い湊【あつ】まるを見る。
晴明なるときに稜角【りょうかく】を出だせば、縷脈【りょうみゃく】砕けて繍を分かてり。
蒸嵐【じょうらん】相い鴻洞【こうどう】として、表裏【ひょうり】忽ち通透【つうとう】す。
風無けれども自のずから瓢簸【ひょうは】し、融液【ゆうえき】して 煦【あたた】めて 柔 茂【も】す。
横雲 時に平凝【へいぎょう】して,點點【てんてん】露數岫【すうしゅう】を【あら】わす。
#3  
天空浮修眉,濃綠畫新就。
孤撑有巉絕,海浴褰鵬噣。
春陽潛沮洳,濯濯吐深秀。
岩巒雖嵂崒,軟弱類含酎。
夏炎百木盛,蔭鬱增埋覆。
#4
神靈日歊歔,雲氣爭結構。
秋霜喜刻轢,磔卓立臒瘦。
參差相叠重,剛耿陵宇宙。
冬行雖幽墨,冰雪工琢鏤。
新曦照危峨,億丈恒高袤。


現代語訳と訳註
(本文)
#2
嚐升崇丘望,戢戢見相湊。
晴明出棱角,縷脈碎分繡。
蒸嵐相澒洞,表里忽通透。
無風自飄簸,融液煦柔茂。
横雲時平凝,點點露數岫。


(下し文) #2
嘗つて昇りて崇丘【すうきゅう】に望まん、戢戢【しゅうしゅう】として相い湊【あつ】まるを見る。
晴明なるときに稜角【りょうかく】を出だせば、縷脈【りょうみゃく】砕けて繍を分かてり。
蒸嵐【じょうらん】相い鴻洞【こうどう】として、表裏【ひょうり】忽ち通透【つうとう】す。
風無けれども自のずから瓢簸【ひょうは】し、融液【ゆうえき】して 煦【あたた】めて 柔 茂【も】す。
横雲 時に平凝【へいぎょう】して,點點【てんてん】露數岫【すうしゅう】を【あら】わす。


(現代語訳)
かつて太白山ほどの高い丘にのぼって見渡したことがあった、この山に向かって山々が集まってきて、その上がかさなりあっているのだ。
からりと晴れて山の稜線が際立ててつらなる、いと筋のように尾根がちりぢりの刺繍のような模様をなしている。
晴れの日の陽炎のわき上がる山のすんだ気がまじりあっている、そこに表側と裏側を山気がつきぬける。
風もないのにおのずと巻きあげられ、とけたあとのぬくもりが草木をうるおすのである。
空高く横長の雲が時に一文字となってたなびき、点点とその上に峰々がつき出ている。


(訳注) #2
嚐升崇丘望,戢戢見相湊。

かつて太白山ほどの高い丘にのぼって見渡したことがあった、この山に向かって山々が集まってきて、その上がかさなりあっているのだ。
嘗昇崇丘望 この段は、ある高い丘から南山の大観を見たところである。嘗は、そういう経験のあったことを示す助辞。崇は、高いこと。終南山は、西岳の太白山376m、と中岳の嵩山1440mのあいだにあり、渭水の南、2000~2900mの山でなる。中国,陝西省南部,秦嶺のうち西安南方の一帯をさす。また秦嶺全体をいう場合もある。その名は西安すなわち長安の南にあたることに由来し,関中盆地では,渭河以北の北山に対し南山とも称する。標高2000~2900m。北側は大断層崖をなし,断層線にそって驪山(りざん)などの温泉が湧出する。渭河と漢水流域とを結ぶ交通の要所で,子午道などの〈桟道(さんどう)〉が開かれ,しばしば抗争の地ともなった。○戢戢 よりあつまっている形容。


晴明出棱角,縷脈碎分繡。
からりと晴れて山の稜線が際立ててつらなる、いと筋のように尾根がちりぢりの刺繍のような模様をなしている。
稜角 かど。山の稜線をいう。○緩脈 いとすじ・山だから尾根すじである。○砕分繍 いつもは、大きな尾根すじしか見えないのが、天気がからりとはれたので、こまかい支脈までよく見え、刺繍の絲すじがばらばらに分かれているようだ、というのである。


蒸嵐相澒洞,表里忽通透。
晴れの日の陽炎のわき上がる山のすんだ気がまじりあっている、そこに表側と裏側を山気がつきぬける。
蒸嵐 わき上がる山気。かげろうのようなもので、山をいっそうくっきりと浮き出すようた力を持つ。嵐は、山気であって、あらしではない。○澒洞 気体がいっしょにいりまじっている形容。〇通透 つきぬける。

無風自飄簸,融液煦柔茂。
風もないのにおのずと巻きあげられ、とけたあとのぬくもりが草木をうるおすのである。
飄簸 ふきあげてひす。は、吹きあげられること。・ 箕(み)で穀物をあおって、くずを除き去る。○融液 とけること。○ あたためること。○柔茂 草木をうるおししげらせる。

横雲時平凝,點點露數岫。
空高く横長の雲が時に一文字となってたなびき、点点とその上に峰々がつき出ている。
平凝 平らになったままじっとしている。○ みね。ピーク。