南山詩 韓退之(韓愈)詩<63-#5>Ⅱ中唐詩381 紀頌之の漢詩ブログ1222


南山詩(韓愈 唐詩)(全20回)#1~#20
第一部 終南山連峰の概要・四季
第二部(#5~#8―十句五聯を四章分)

#5
明昏無停態,頃刻異狀候。
朝な夕なに姿を変えるときはない、しかし、瞬く間にもその徴候は異なるのである。
西南雄太白,突起莫間簉。
西南には太白山が一きわ目立っている、それは連なる山々を隔ててはいるもののその一群の中で聳え立っているのだ。
藩都配德運,分宅占丁戊。
帝都のまもりとして土徳の方位をあてがわれ、他の山々にその気を、徳を配分、配当している、そして、別の居所をかまえて丁戊の位を占めている。
逍遙越坤位,詆訐陷乾竇。
気ままにあちこち南山にある谷を散歩する坤の位の方向をのりこえて、南西、西、北西の乾の位までは低地になっており、広範囲に広がっている。
空虛寒兢兢,風氣較蒐漱。

しかし、その地はすべてがむなしく寒さも極寒になり身も凍るほどである、風の気はかなり早くざわざわとはげしく吹き下ろして來るのである。
明昏【めいこん】に態を停どむること無く、頃刻【けいこく】に状候【じょうこう】異なり。
西南【せいなん】に太白【たいはく】雄なり、突起【とっき】して間【まじ】わり簉【まじ】わること莫し。
都に藩【かき】として徳運【とくうん】に配し、宅【いえ】を分かちで丁戊【ていぼ】を占【し】む。
逍遙【しょうよう】坤位【こんい】を越えて、詆訐【ていけつ】として乾竇【けんとう】に陥る。
空虚【くうきょ】寒うして兢兢【きょうきょう】たり、風気【ふうき】較【やや】蒐漱【しゅうそう】す。

#6
朱維方燒日,陰霰縱騰糅。
昆明大池北,去覿偶晴晝。
綿聯窮俯視,倒側困清漚。
微瀾動水面,踴躍躁猱狖。
驚呼惜破碎,仰喜呀不僕。
#7
前尋徑杜墅,岔蔽畢原陋。
崎嶇上軒昂,始得觀覽富。
行行將遂窮,嶺陸煩互走。
勃然思坼裂,擁掩難恕宥。
巨靈與誇蛾,遠賈期必售。
#8
還疑造物意,固護蓄精祐。
力雖能排斡,雷電怯呵詬。
攀緣脱手足,蹭蹬抵積甃。
茫如試矯首,堛塞生怐愗。
威容喪蕭爽,近新迷遠舊。

韓愈地図1000

現代語訳と訳註
(本文) #5

明昏無停態,頃刻異狀候。
西南雄太白,突起莫間簉。
藩都配德運,分宅占丁戊。
逍遙越坤位,詆訐陷乾竇。
空虛寒兢兢,風氣較蒐漱。


(下し文) #5
明昏【めいこん】に態を停どむること無く、頃刻【けいこく】に状候【じょうこう】異なり。
西南【せいなん】に太白【たいはく】雄なり、突起【とっき】して間【まじ】わり簉【まじ】わること莫し。
都に藩【かき】として徳運【とくうん】に配し、宅【いえ】を分かちで丁戊【ていぼ】を占【し】む。
逍遙【しょうよう】坤位【こんい】を越えて、詆訐【ていけつ】として乾竇【けんとう】に陥る。
空虚【くうきょ】寒うして兢兢【きょうきょう】たり、風気【ふうき】較【やや】蒐漱【しゅうそう】す。


(現代語訳)
朝な夕なに姿を変えるときはない、しかし、瞬く間にもその徴候は異なるのである。
西南には太白山が一きわ目立っている、それは連なる山々を隔ててはいるもののその一群の中で聳え立っているのだ。
帝都のまもりとして土徳の方位をあてがわれ、他の山々にその気を、徳を配分、配当している、そして、別の居所をかまえて丁戊の位を占めている。
気ままにあちこち南山にある谷を散歩する坤の位の方向をのりこえて、南西、西、北西の乾の位までは低地になっており、広範囲に広がっている。
しかし、その地はすべてがむなしく寒さも極寒になり身も凍るほどである、風の気はかなり早くざわざわとはげしく吹き下ろして來るのである。


(訳注) #5
明昏無停態,頃刻異狀候。

朝な夕なに姿を変えるときはない、しかし、瞬く間にもその徴候は異なるのである。
明昏 明は、夜明け、あさ。昏は、夕ぐれ。だからあさゆうということ。○停態 状態をそのままにしている。○頃刻 ほんのしばらくのあいだ。○状候 候も、状と同じく有様ということ。徴候の候である。


西南雄太白,突起莫間簉。
西南には太白山が一きわ目立っている、それは連なる山々を隔ててはいるもののその一群の中で聳え立っているのだ。
西南雄太白 この段は、終南山脈のうちの一峰で西端の最高峰、太白山3760mのことである。○間簉 間は、なかをへだてる。簉は、そえものとしてくっついていること。


藩都配德運,分宅占丁戊。
帝都のまもりとして土徳の方位をあてがわれ、他の山々にその気を、徳を配分、配当している、そして、別の居所をかまえて丁戊の位を占めている。
藩都 藩は、かきね。都なる長安の垣根として太白山、終南山と崋山がつったっている。○配徳運 先秦以来、各朝代には、それぞれその朝が尊ぶ五行の徳が定められており、唐は土徳であるとされた。西府は、易の八卦で坤位にあたり、坤は、地すなわち土をあらわすから、「徳運に配す」というのである。つまり最高峰の太白山から他の山々にその気を、徳を配分、配当しているという。○分宅 太白山が、終南山脈中でもほかの山山とははなれて、別の家をかまえるように、特別の位置を占めていることをいう。○丁戊 西南の方角をいう。


逍遙越坤位,詆訐陷乾竇。
気ままにあちこち南山にある谷を散歩する坤の位の方向をのりこえて、南西、西、北西の乾の位までは低地になっており、広範囲に広がっている。
逍遙 【しょうよう】気ままにあちこちを歩き回ること。そぞろ歩き。散歩。「南山にある谷を散歩する。○坤位 西南の方位。○詆訐【テイケツ】欠点をあばいて、とことんまでつきつめる。○乾竇 乾は、西北の方位。資は、あな。ここは、長安の南西と西の渭水流域、西北の方位が、涇水流域となって、広範囲、低地となっていることをいう。


空虛寒兢兢,風氣較蒐漱。
しかし、その地はすべてがむなしく寒さも極寒になり身も凍るほどである、風の気はかなり早くざわざわとはげしく吹き下ろして來るのである。
空虚 がらんとなにもないさま。○競競 ひやひやと気づかうさま。○ かなり。○蒐漱 蒐は、さあっと風の速いさま。漱も、ここでは蒐と同じような意味。