南山詩 韓退之(韓愈)詩<63-#9>Ⅱ中唐詩385 紀頌之の漢詩ブログ1234


南山詩(韓愈 唐詩)(全20回)#1~#20
第一部 終南山連峰の概要・四季
第二部 終南山朝夕・周辺の事項
 
第三部 (#9~#12―十句五聯を四章分)


#9 
拘官計日月,欲進不可又。
官吏の生活にしばられ身であるので休暇の日月をかぞえれば、この南山を廻りたんさくしようにもこれ以上はできないことである。
因緣窺其湫,凝湛閟陰獸。
何かのついでに山の池をのぞいてみることになる、瀞と水をたたえている底に竜をひそめている。
魚蝦可俯掇,神物安敢寇。
魚やえびは前かがみになって手攫みできるというものだが、竜となればそうやすやすと捕えることができものではない。
林柯有脱葉,欲堕鳥驚救。
池に森の木の枝から落ちる葉があり、落ちようとすると鳥があわててふせぎとめる。
爭銜彎環飛,投棄急哺鷇。
見るとわれ先に爭って葉をくわえて輪を描きつつ飛び、それらをさっさと投げ棄てるさまはいかにえさを与えるよりもあわただしい。
官に拘【つな】がれて日月を計【かぞ】うるに、進まんと欲っすれども又【ふたたび】すべからず。
因縁【いんえん】して其の湫【しゅう】を窺【うたが】えば、凝湛【ぎょうたん】として陰獸【いんきゅう】を閟【と】ざす。
魚蝦【ぎょか】は俯して掇【ひろ】うべきも、神物は安んぞ敢えて冦【こう】せんや。
林柯【りんか】に脱【お】つる葉有り、堕ちんと欲っすれば鳥驚き救う。
争い銜【ふく】んで彎環【わんかん】として飛び、投げ棄つること鷇【こう】に哺するよりも急なり。
#10  
鏇歸道回睨,達枿壯複奏。
籲嗟信奇怪,峙質能化貿。
前年遭譴謫,探曆得邂逅。
初從藍田入,顧盻勞頸脰。
時天晦大雪,淚目苦矇瞀。
#11
峻塗拖長冰,直上若懸溜。
褰衣步推馬,顛蹶退且複。
蒼黄忘遐睎,所矚才左右。
杉篁咤蒲蘇,杲耀攢介胄。
專心憶平道,脱險逾避臭。
12 
昨來逢清霽,宿願忻始副。
崢嶸躋塚頂,倏閃雜鼯鼬。
前低劃開闊,爛漫堆眾皺。
或連若相從,或蹙若相鬥。
或妥若弭伏,或竦若驚雊。


#13 
或散若瓦解,或赴若輻湊。或翩若船游,或決若馬驟。
或背若相惡,或向若相佑。或亂若抽筍,或嵲若注灸。
或錯若繪畫,或繚若篆籀。
#14
或羅若星離,或蓊若雲逗。或浮若波濤,或碎若鋤耨。
或如賁育倫,賭勝勇前購。先強勢已出,後鈍嗔bz譳。
或如帝王尊,叢集朝賤幼。
#15
雖親不褻狎,雖遠不悖謬。或如臨食案,餚核紛饤饾。
又如游九原,墳墓包槨柩。或累若盆罌,或揭若bB豆。
或覆若曝鱉,或頹若寢獸。
#16 
或蜿若藏龍,或翼若搏鷲。或齊若友朋,或隨若先後。
或迸若流落,或顧若宿留。或戾若仇讎,或密若婚媾。
或儼若峨冠,或翻若舞袖。
#17  
或屹若戰陣,或圍若蒐狩。或靡然東注,或偃然北首。
或如火熹焰,或若氣饙餾。或行而不輟,或遺而不收。
或斜而不倚,或弛而不彀。
#18
或赤若禿鬝,或熏若柴槱。或如龜拆兆,或若卦分繇。
或前横若剝,或後斷若姤。延延離又屬,夬夬叛還遘。
喁喁魚闖萍,落落月經宿。
#19
誾誾樹牆垣,巘巘駕庫廄。參參削劍戟,煥煥銜瑩琇。
敷敷花披萼,闟闟屋摧霤。悠悠舒而安,兀兀狂以狃。
超超出猶奔,蠢蠢駭不懋。大哉立天地,經紀肖營腠。
#20 
厥初孰開張,黽勉誰勸侑。創茲樸而巧,戮力忍勞疚。
得非施斧斤,無乃假詛咒。鴻荒竟無傳,功大莫酬僦。
嚐聞於祠官,芬苾降歆嗅。斐然作歌詩,惟用讚報酭。




現代語訳と訳註
(本文) #9 
拘官計日月,欲進不可又。
因緣窺其湫,凝湛閟陰獸。
魚蝦可俯掇,神物安敢寇。
林柯有脱葉,欲堕鳥驚救。
爭銜彎環飛,投棄急哺鷇。


(下し文)
官に拘【つな】がれて日月を計【かぞ】うるに、進まんと欲っすれども又【ふたたび】すべからず。
因縁【いんえん】して其の湫【しゅう】を窺【うたが】えば、凝湛【ぎょうたん】として陰獸【いんきゅう】を閟【と】ざす。
魚蝦【ぎょか】は俯して掇【ひろ】うべきも、神物は安んぞ敢えて冦【こう】せんや。
林柯【りんか】に脱【お】つる葉有り、堕ちんと欲っすれば鳥驚き救う。
争い銜【ふく】んで彎環【わんかん】として飛び、投げ棄つること鷇【こう】に哺するよりも急なり。


 (現代語訳)
官吏の生活にしばられ身であるので休暇の日月をかぞえれば、この南山を廻りたんさくしようにもこれ以上はできないことである。
何かのついでに山の池をのぞいてみることになる、瀞と水をたたえている底に竜をひそめている。
池に森の木の枝から落ちる葉があり、落ちようとすると鳥があわててふせぎとめる。
見るとわれ先に爭って葉をくわえて輪を描きつつ飛び、それらをさっさと投げ棄てるさまはいかにえさを与えるよりもあわただしい。


(訳注)#9 
拘官計日月,欲進不可又。
官吏の生活にしばられ身であるので休暇の日月をかぞえれば、この南山を廻りたんさくしようにもこれ以上はできないことである。
拘官 官吏の生活にしばられる。○計日月 日月をかぞえてみる。官吏として出動すべき月ロまでの日数を計算してみたわけである。○欲進不可又 この道から進もうとしたがそれ以上できない。


因緣窺其湫,凝湛閟陰獸。
何かのついでに山の池をのぞいてみることになる、瀞と水をたたえている底に竜をひそめている。
囚縁窺其湫 杜墅より山にはいって、雨山の山中にある池を見たことである。・因縁:ついでにということ。其湫の湫は、いけ。これは、南山の中にあって雨乞いの場所であった炭谷湫をさす。韓愈には、「炭谷湫の祠堂に題す」という詩(集巻五)もある。○凝湛 瀞とに水がたたえられているさま。○ かくれすまわせている。○陰獸【いんきゅう】 獸は、畜と同じ。家畜という考え方でこの池に飼っている竜のことをいう。竜を畜とすることは、『礼記』「礼運篇」に見えるという。
 

魚蝦可俯掇,神物安敢寇。
魚やえびは前かがみになって手攫みできるというものだが、竜となればそうやすやすと捕えることができものではない。
可俯直 うつ臥せや、前かがみになって、手掴みできる。・は、ひろい取る。○神物 竜をさす。O安敢冦 安は、どうして、ここでは反語。・は、むりに、大胆にも。・は、強奪する、ここでは竜を捕えること。 


柯有脱葉,欲堕鳥驚救。
池に森の木の枝から落ちる葉があり、落ちようとすると鳥があわててふせぎとめる。
林柯 柯は、えだ。
 

爭銜彎環飛,投棄急哺鷇。
見るとわれ先に爭って葉をくわえて輪を描きつつ飛び、それらをさっさと投げ棄てるさまはいかにえさを与えるよりもあわただしい。
爭銜彎環飛 銜は、口にくわえる。彎環は、鳥が輪を描いて飛ぶさま。ただし、「環銜」(環を銜む)の故事。「銜環」は、黄雀が自分を助けた楊宝に白環四つを与えた故事に基づく言葉。『後漢書・楊震伝』引『続斉諧記、華陰黄雀』「宝年九歳、時至華陰山北、見一黄雀為鴟梟所搏、墜於樹下、為螻蟻所困、宝取之以帰、置巾箱中、唯食黄花百余日、毛羽成、乃飛去、其夜有黄衣童子、向宝再拝曰、我西王母使者、君仁愛救拯、実感成済、以白環四枚与宝、令君子孫潔白、位登三事、当如此環矣」。「結草」は『春秋左氏伝・宣公十五年』に見える言葉。晋の大夫魏武子に娘を助けられた老人が、魏武子と闘った杜回を、草を結んで躓かせ倒した故事にちなむ。「銜環」「結草」ともに報恩のこと。後漢の楊宝という人が、黄鳥が梟にやっつけられているのを助けたところ、その烏は、西王母の使者であった。そこで、黄鳥は、その御恩返しにと、四つの玉の環をくれて、この環のように、四代の子孫まで、三公にまでなるだろう、といった。ここも、あるいは、かの報恩の大切な環のようにくわえてわれがちに飛んでいる、ということばのしゃれがあるかもしれない。○投棄急哺鷇は、親鳥がひなにえさをやること。哺は、えさを親烏から食べさせてもらわねばならないひなをいう。この句は、烏たちがこの池の水をけがすまいと、枝から落ちる葉を投げ棄てるさまは、ひなにえさをやるよりもせかせかしている、ということ。