南山詩 韓退之(韓愈)詩<63-#15>Ⅱ中唐詩391 紀頌之の漢詩ブログ1252


南山詩 第四部 (韓愈 唐詩)
南山詩(韓愈 唐詩)(全20回)#1~#20
第一部 終南山連峰の概要・四季
第二部 終南山朝夕・周辺の事項
第三部 以前左遷の際、冬に終南山を抜けた時の事

第四部 (#13~#16―十句五聯を四章分)
終南山の特徴


#13 
或散若瓦解,或赴若輻湊。
あるものは瓦がばらばらになったように散らばった小山があり、あるものは車の矢があつまるようにひと所をめざしている谷と尾根がある。
或翩若船游,或決若馬驟。
あるものは船がうかぶようにかろやかな稜線であり、あるものは馬が走るようにぶつりときれて崖を成している。
或背若相惡,或向若相佑。
あるものは憎みあうように背中あわせになっているし、あるものは助けあうように向かいあっている。
或亂若抽筍,或嵲若注灸。
あるものはたけのこがふいに頭を出したばかりのように乱れた小山があり、あるものは灸をすえるときの百草のようにけわしくもりあがっている小山がある。
或錯若繪畫,或繚若篆籀。
あるものは絵画のように濃い薄い、淡い深いなど複錐にまじわりあう山々があり、あるものは篆文のようにまがりくねっている。
或るいは散じて瓦の解く若し,或るいは赴いて輻【くるまや】の湊【あつま】るが若し。
或るいは翩【へん】として船游若し,或るいは決【けつ】として馬の驟【はし】るが若し。
或るいは背【そむ】いて相い惡【にく】むが若し,或るいは向いて相い佑【たす】くるが若し。
或るいは亂れて筍の抽【お】うるが若し,或るいは嵲【あや】うくして灸を注【す】えたるが若し。
或るいは錯【まじ】わりて繪畫の若し,或るいは繚【まと】わりて篆籀【てんちゅう】の若し

#14
或羅若星離,或蓊若雲逗。
あるものは星が天にちりばめられ、星座をつくっているように居並ぶ、あるものは草木の盛んに繁って山の形がもりあがるような勢いであり、雲がとどまっているように勢いをひそめている。
或浮若波濤,或碎若鋤耨。
あるものは大波小波のようにただよい、あるものは土を掘りかえして草を取る道具、川葦草を取る鋤物で耕やされたように砕けている。
或如賁育倫,賭勝勇前購。
あるものは孟賁や夏育のような人たちがいるようであり、目の前の賞品に勇んで勝負をかけているようである。
先強勢已出,後鈍嗔餖譳。
先の方は強くて形勢が早くも図抜けており、後の方は鈍さのあまり腹を立ててぶつぶつ不満をいっているようだ。
或如帝王尊,叢集朝賤幼。
あるものは帝王が尊厳、威厳をもっているようであり、身分いやしきものいと幼い王族のものたちをよびあつめ朝廷での朝礼に集わせられているようである。
或るいは羅【つら】なって星の離【つら】なるが若く、或るいは蓊【さかん】にして雲の逗【とど】まるが若し。
或るいは浮かんで波濤【はとう】の若く、或るいは砕【くだ】けて鋤耨【じょどう】せしが若し。
或るいは賁育【ほんいく】が倫【りん】の、勝つことを賭けて前の購【かけもの】に勇むが如し。
先強うして勢 已【すで】に出で、後 鈍くして嗔【いか】って餖譳【とうどう】す。
或るいは帝王の尊きが、叢【あつ】め集めて賤幼【せんよう】を朝せしむるが如し。

#15
雖親不褻狎,雖遠不悖謬。
親しいものとして尊厳をけがすほどに慣れ親しんでいるわけではなく、疎遠なものとして顔をそむけたりできるものではない。
或如臨食案,餚核紛飣餖。
あるものは食卓に向かうとき、山の幸と海の幸がいりみだれてならべ飾られているようである。
又如游九原,墳墓包槨柩。
又、墳墓のたくさんある九原に散歩するとき、もりあげられた塚の中にひつぎが収められているようでもある。
或累若盆罌,或揭若覴梪。
あるものは鉢やとっくりのようにかさなりあい、あるものは土製や木製の高杯のように高くぬっとそびえている。
或覆若曝鱉,或頹若寢獸。
あるものは日向ぼっこのすっぽんのように甲羅に覆われ、あるものは寝ている獣のようにだらりと崩れて禿げている。
親【したし】しと雖も褻狎【せつこう】せず、遠しと雖も悖謬【はいびゅう】せず。
或るいは食案【しょくあん】に臨んで、餚核【こうかく】の紛として飣餖【ていとう】するが如し。
又九原【きゅうげん】に遊んで、墳墓【ふんぼ】に槨柩【かくきゅう】を包みたるが如し。
或るいは愛として盆罌【ぼんえい】の若く、成るいは揚として覴梪【とうとう】の若し。
或るいは覆って曝【さら】せる鱉【べつ】の若く、攻るいは頹【くず】れて寝ねたる獣【けだもの】の若し。

#16 
或蜿若藏龍,或翼若搏鷲。或齊若友朋,或隨若先後。
或迸若流落,或顧若宿留。或戾若仇讎,或密若婚媾。
或儼若峨冠,或翻若舞袖。
#17  
或屹若戰陣,或圍若蒐狩。或靡然東注,或偃然北首。
或如火熹焰,或若氣饙餾。或行而不輟,或遺而不收。
或斜而不倚,或弛而不彀。
#18
或赤若禿鬝,或熏若柴槱。或如龜拆兆,或若卦分繇。
或前横若剝,或後斷若姤。延延離又屬,夬夬叛還遘。
喁喁魚闖萍,落落月經宿。
#19
誾誾樹牆垣,巘巘駕庫廄。參參削劍戟,煥煥銜瑩琇。
敷敷花披萼,闟闟屋摧霤。悠悠舒而安,兀兀狂以狃。
超超出猶奔,蠢蠢駭不懋。大哉立天地,經紀肖營腠。
#20 
厥初孰開張,黽勉誰勸侑。創茲樸而巧,戮力忍勞疚。
得非施斧斤,無乃假詛咒。鴻荒竟無傳,功大莫酬僦。
嚐聞於祠官,芬苾降歆嗅。斐然作歌詩,惟用讚報酭。



現代語訳と訳註
(本文) #15

雖親不褻狎,雖遠不悖謬。
或如臨食案,餚核紛飣餖。
又如游九原,墳墓包槨柩。
或累若盆罌,或揭若覴梪。
或覆若曝鱉,或頹若寢獸。


(下し文)
親【したし】しと雖も褻狎【せつこう】せず、遠しと雖も悖謬【はいびゅう】せず。
或るいは食案【しょくあん】に臨んで、餚核【こうかく】の紛として飣餖【ていとう】するが如し。
又九原【きゅうげん】に遊んで、墳墓【ふんぼ】に槨柩【かくきゅう】を包みたるが如し。
或るいは愛として盆罌【ぼんえい】の若く、成るいは揚として覴梪【とうとう】の若し。
或るいは覆って曝【さら】せる鱉【べつ】の若く、攻るいは頹【くず】れて寝ねたる獣【けだもの】の若し。


(現代語訳)
親しいものとして尊厳をけがすほどに慣れ親しんでいるわけではなく、疎遠なものとして顔をそむけたりできるものではない。
あるものは食卓に向かうとき、山の幸と海の幸がいりみだれてならべ飾られているようである。
又、墳墓のたくさんある九原に散歩するとき、もりあげられた塚の中にひつぎが収められているようでもある。
あるものは鉢やとっくりのようにかさなりあい、あるものは土製や木製の高杯のように高くぬっとそびえている。
あるものは日向ぼっこのすっぽんのように甲羅に覆われ、あるものは寝ている獣のようにだらりと崩れて禿げている。


(訳注)
雖親不褻狎,雖遠不悖謬。

親しいものとして尊厳をけがすほどに慣れ親しんでいるわけではなく、疎遠なものとして顔をそむけたりはできるものではない。
雖親不褻狎 褻狎は、過度になれしたしむ。親しいからといってことさらなれしたしむことはしない。この「親しい」というのは、前の句の「幼」を受ける。○雖遠不悖謬 悖謬は、仲たがいをする。自分から遠いものであっても、ことさらそれらをわるくあつかうことはしない。「遠い」は、「賤しい」人を受ける。


或如臨食案,餚核紛飣餖。
あるものは食卓に向かうとき、山の幸と海の幸がいりみだれてならべ飾られているようである。
食案 食卓。案は、つくえ。○餚核 ごちそう。・餚核は餖という高杯に盛る料理をいい核は竹で編んだ食器に入れるもの、挑や梅などをいう。「詩経」小雅賓之初筵篇に見えることばである。○紛 いりまじる。○飣餖 ごちそうがいっぱいならんでいるさま。


又如游九原,墳墓包槨柩。
又、墳墓のたくさんある九原に散歩するとき、もりあげられた塚の中にひつぎが収められているようでもある。
○遊九原 墓地を散歩する。九原は、墓地。むかし晋の国(今の山西省にあった)の卿大夫(家老たち)は、郊外の九原という野原に葬むられたところからいう。「礼記」檀弓篇に、「趙文子、叔誉と九原に観【よろこ】ぶ。」とあるのをふまえたことば。○墳墓 墳も墓も、はか。土を盛りあげて作る。○槨柩 槨柩は、棺おけの外をおおう箱、外棺。柩は、ひつぎ。死体のはいっている棺。


或累若盆罌,或揭若覴梪。
あるものは鉢やとっくりのようにかさなりあい、あるものは土製や木製の高杯のように高くぬっとそびえている。
 かさなりあっている。○盆罌 盆は、はち、たらいの類、土器である。・も、土器で、とっくりの類。○掲 高く挙がっている。ぬっとそびえている。○覴梪 覴は、土器製の高杯。梪は、豆の宇と同じ。木製の高杯。


或覆若曝鱉,或頹若寢獸。
あるものは日向ぼっこのすっぽんの様に甲羅に覆われ、あるものは寝ている獣のようにだらりと崩れて禿げている。
 長い間、風雨や太陽にさらされて、色あせたり朽ちたりする。○ すっぽん。