南山詩 韓退之(韓愈)詩<63-#16>Ⅱ中唐詩392 紀頌之の漢詩ブログ1255


南山詩 第四部 (韓愈 唐詩)
南山詩(韓愈 唐詩)(全20回)#1~#20
第一部 終南山連峰の概要・四季
第二部 終南山朝夕・周辺の事項
第三部 以前左遷の際、冬に終南山を抜けた時の事

第四部 (#13~#16―十句五聯を四章分)
終南山の特徴


#13 
或散若瓦解,或赴若輻湊。
あるものは瓦がばらばらになったように散らばった小山があり、あるものは車の矢があつまるようにひと所をめざしている谷と尾根がある。
或翩若船游,或決若馬驟。
あるものは船がうかぶようにかろやかな稜線であり、あるものは馬が走るようにぶつりときれて崖を成している。
或背若相惡,或向若相佑。
あるものは憎みあうように背中あわせになっているし、あるものは助けあうように向かいあっている。
或亂若抽筍,或嵲若注灸。
あるものはたけのこがふいに頭を出したばかりのように乱れた小山があり、あるものは灸をすえるときの百草のようにけわしくもりあがっている小山がある。
或錯若繪畫,或繚若篆籀。
あるものは絵画のように濃い薄い、淡い深いなど複錐にまじわりあう山々があり、あるものは篆文のようにまがりくねっている。
或るいは散じて瓦の解く若し,或るいは赴いて輻【くるまや】の湊【あつま】るが若し。
或るいは翩【へん】として船游若し,或るいは決【けつ】として馬の驟【はし】るが若し。
或るいは背【そむ】いて相い惡【にく】むが若し,或るいは向いて相い佑【たす】くるが若し。
或るいは亂れて筍の抽【お】うるが若し,或るいは嵲【あや】うくして灸を注【す】えたるが若し。
或るいは錯【まじ】わりて繪畫の若し,或るいは繚【まと】わりて篆籀【てんちゅう】の若し

#14
或羅若星離,或蓊若雲逗。
あるものは星が天にちりばめられ、星座をつくっているように居並ぶ、あるものは草木の盛んに繁って山の形がもりあがるような勢いであり、雲がとどまっているように勢いをひそめている。
或浮若波濤,或碎若鋤耨。
あるものは大波小波のようにただよい、あるものは土を掘りかえして草を取る道具、川葦草を取る鋤物で耕やされたように砕けている。
或如賁育倫,賭勝勇前購。
あるものは孟賁や夏育のような人たちがいるようであり、目の前の賞品に勇んで勝負をかけているようである。
先強勢已出,後鈍嗔餖譳。
先の方は強くて形勢が早くも図抜けており、後の方は鈍さのあまり腹を立ててぶつぶつ不満をいっているようだ。
或如帝王尊,叢集朝賤幼。
あるものは帝王が尊厳、威厳をもっているようであり、身分いやしきものいと幼い王族のものたちをよびあつめ朝廷での朝礼に集わせられているようである。
或るいは羅【つら】なって星の離【つら】なるが若く、或るいは蓊【さかん】にして雲の逗【とど】まるが若し。
或るいは浮かんで波濤【はとう】の若く、或るいは砕【くだ】けて鋤耨【じょどう】せしが若し。
或るいは賁育【ほんいく】が倫【りん】の、勝つことを賭けて前の購【かけもの】に勇むが如し。
先強うして勢 已【すで】に出で、後 鈍くして嗔【いか】って餖譳【とうどう】す。
或るいは帝王の尊きが、叢【あつ】め集めて賤幼【せんよう】を朝せしむるが如し。

#15
雖親不褻狎,雖遠不悖謬。

親しいものとして尊厳をけがすほどに慣れ親しんでいるわけではなく、疎遠なものとして顔をそむけたりできるものではない。
或如臨食案,餚核紛飣餖。
あるものは食卓に向かうとき、山の幸と海の幸がいりみだれてならべ飾られているようである。
又如游九原,墳墓包槨柩。
又、墳墓のたくさんある九原に散歩するとき、もりあげられた塚の中にひつぎが収められているようでもある。
或累若盆罌,或揭若覴梪。
あるものは鉢やとっくりのようにかさなりあい、あるものは土製や木製の高杯のように高くぬっとそびえている。
或覆若曝鱉,或頹若寢獸。
あるものは日向ぼっこのすっぽんのように甲羅に覆われ、あるものは寝ている獣のようにだらりと崩れて禿げている。
親【したし】しと雖も褻狎【せつこう】せず、遠しと雖も悖謬【はいびゅう】せず。
或るいは食案【しょくあん】に臨んで、餚核【こうかく】の紛として飣餖【ていとう】するが如し。
又九原【きゅうげん】に遊んで、墳墓【ふんぼ】に槨柩【かくきゅう】を包みたるが如し。
或るいは愛として盆罌【ぼんえい】の若く、成るいは揚として覴梪【とうとう】の若し。
或るいは覆って曝【さら】せる鱉【べつ】の若く、攻るいは頹【くず】れて寝ねたる獣【けだもの】の若し。

#16 
或蜿若藏龍,或翼若搏鷲。
あるものは山地がひそんでいる竜のようにうねり、あるものは山地がたたかう鷲のようにはばたいている。
或齊若友朋,或隨若先後。
あるものはその山地が友だちのように肩を並らべ、あるものはその山地が小姑同士のように順に随っている。
或迸若流落,或顧若宿留。
あるいは山地が流れ落ちるように早い速力で散らばり、あるものは山地がひと所に逗留するようにふりかえっている。
或戾若仇讎,或密若婚媾。
あるものはその山地がかたきのようにそむきあいもどってくるし、あるものはその山地が結婚するかのようにくっつきあっている。
或儼若峨冠,或翻若舞袖。

あるものは山高の冠のようにおごそかにそびえ、あるものは舞いの袖のようにひるがえっている。
或るいは蜿【えん】として蔵れたる竜の若く、或るいは翼【はう】って搏【たたこ】う鷲【わし】の若し。
或るいは斉【な】らびて友朋【ゆうほう】の若く、或るいは随って先後【せんこう】の若し。
成るいは迸【ほとばし】りて流落【りゅうらく】するが若く、或るいは顧【かえ】りみて宿留【しゅうりゅう】するが若し。
或るいは戻って仇讎【きゅうしゅう】の若く、或るいは密【みつ】にして婚媾【こんこう】の若し。
或るいは儼【おごそ】かにして峨冠【がかん】の若く、或るいは翻【ひるがえ】って舞いの袖の若し。


終南山04
現代語訳と訳註
(本文)
#16 
或蜿若藏龍,或翼若搏鷲。或齊若友朋,或隨若先後。
或迸若流落,或顧若宿留。或戾若仇讎,或密若婚媾。
或儼若峨冠,或翻若舞袖。


(下し文)
或るいは蜿【えん】として蔵れたる竜の若く、或るいは翼【はう】って搏【たたこ】う鷲【わし】の若し。
或るいは斉【な】らびて友朋【ゆうほう】の若く、或るいは随って先後【せんこう】の若し。
成るいは迸【ほとばし】りて流落【りゅうらく】するが若く、或るいは顧【かえ】りみて宿留【しゅうりゅう】するが若し。
或るいは戻って仇讎【きゅうしゅう】の若く、或るいは密【みつ】にして婚媾【こんこう】の若し。
或るいは儼【おごそ】かにして峨冠【がかん】の若く、或るいは翻【ひるがえ】って舞いの袖の若し。


(現代語訳)
あるものは山地がひそんでいる竜のようにうねり、あるものは山地がたたかう鷲のようにはばたいている。
あるものはその山地が友だちのように肩を並らべ、あるものはその山地が小姑同士のように順に随っている。
あるいは山地が流れ落ちるように早い速力で散らばり、あるものは山地がひと所に逗留するようにふりかえっている。
あるものはその山地がかたきのようにそむきあいもどってくるし、あるものはその山地が結婚するかのようにくっつきあっている。
あるものは山高の冠のようにおごそかにそびえ、あるものは舞いの袖のようにひるがえっている。


 (訳注) #16 
或蜿若藏龍,或翼若搏鷲。
あるものは山地がひそんでいる竜のようにうねり、あるものは山地がたたかう鷲のようにはばたいている。
 竜のうねうねとうねっている形容。○ 鳥がはねをひろげたようなさま。○ あらそう。えさにおそいかかる。○ 並らぶ。


或齊若友朋,或隨若先後。
あるものはその山地が友だちのように肩を並らべ、あるものはその山地が小じゅうとめ同士のように順に随っている。
友朋 ともだち。○先後 この場合は、俤以という意昧。兄弟の妻をいう。俤が、弟の妻。以が、兄の妻。あるいは、この句が、「礼記」曲礼上篇の「五年以て長ずれぱ、則ち一刑随す。」とあるのをふんで、前後することかもしれないが、友朋と市する関係‐に、「先後」を卿獄と解するのがよいとされる。


或迸若流落,或顧若宿留。
あるいは山地が流れ落ちるように早い速力で散らばり、あるものは山地がひと所に逗留するようにふりかえっている。
 早い速力で散らばること。○宿留 同じところにじっととまっていること。


或戾若仇讎,或密若婚媾。
あるものはその山地がかたきのようにそむきあいもどってくるし、あるものはその山地が結婚するかのようにくっつきあっている。
 仲たがいする。○仇緬 かたき。○婚媾 媾は婚と同じ。結婚する。


或儼若峨冠,或翻若舞袖。
あるものは山高の冠のようにおごそかにそびえ、あるものは舞いの袖のようにひるがえっている。
○儼 おごそかなさま。○峨冠 高い冠ご朝廷に仕える官吏のかんむり。