南山詩 韓退之(韓愈)詩<63-#18>Ⅱ中唐詩394 紀頌之の漢詩ブログ1261


南山詩(韓愈 唐詩)(全20回)#1~#20
第一部 終南山連峰の概要・四季
第二部 終南山朝夕・周辺の事項
第三部 以前左遷の際、冬に終南山を抜けた時の事
第四部 以前左遷の際、冬に終南山を抜けた時の事
第五部 (#17~#20―十句五聯を四章分)終南山の特徴

終南山04
#17  

或屹若戰陣,或圍若蒐狩。
あるものは戦陣のとりでのようにそば立ち、あるものは巻き狩りのようにとり囲んでいる。
或靡然東注,或偃然北首。
あるものはなだらかに東に流れこみ、あるものはながながと北向きに寝そべっている。
或如火熹焰,或若氣饙餾。
あるものは御飯をたく火のように、あるものは蒸し上げるゆげのようである。
或行而不輟,或遺而不收。
あるものはどこまでも歩いて行き止まることはない、あるものは片付けられずおいてきぼりになっている。
或斜而不倚,或弛而不彀。
あるものは斜面ではあるがかたむくほどではなく、あるものはぴんと張らずにだらりとゆるんでいる。
或るいは屹【きつ】として戦陣【せんじん】の若く、或るいは囲んで蒐狩【しゅうしゅ】の若し。
或るいは靡然【びぜん】として東に注ぎ、或るいは偃然【えんぜん】として北に首【む】こう。
或るいは火の熹焰【きえん】するが如く、或るいは気の饙餾【ふんりゅう】するが若し。
或るいは行って輟【とど】まらず、或るいは遺【のこ】して収【おさ】めず。
或るいは斜【ななめ】にして倚【かたよ】らず、或るいは弛【ゆる】うして彀【は】らず。

#18
或赤若禿鬝,或熏若柴槱。
あるものは頭のはげのように赤裸に、あるものは天を祭る薠柴の儀式のように煙をあげている。
或如龜拆兆,或若卦分繇。
あるものはうらないの亀が前兆を告げてひびわれたかのように、あるものは易の卦が叉を分けて吉凶を定めているかのようである。
或前横若剝,或後斷若姤。
ある唇のは剥の卦のように前の山が横たわり、あるものは姤の卦のように後の峰が断ち切れている。
延延離又屬,夬夬叛還遘。
ながながと連なり、きれて離れては又続くところもあり、ちぎれちぎれにそむきあってはまた出逢うところもある。
喁喁魚闖萍,落落月經宿。

ぱくぱくと魚が浮き草の間から頭を出しているのもある。そしてちらりほらりと星が瞬き、月が通り過ぎるときの空の星のまばらになったものもある。
或るいは赤として禿鬝【とうかん】の若く、或るいは熏【くん】じて柴槱【さいゆう】の若し。
或るいは亀【き】の兆【ちょう】を柝【わか】つが如く、或るいは卦【か】の繇【ちゅう】を分かつが若し。
或るいは前の横たわって剥【はく】の若く、攻るいは後【しり】えの断えて姤【こう】の若し。
延延【えんえん】として離れて又属【つら】なり、夬夬【かいかい】として叛いて還た遘【あ】えり。
喁喁【ぎょうぎょう】として魚は萍【うきぐさ】を闖【うか】がい、落落【らくらく】として月は宿を経【ふ】。

#19
誾誾樹牆垣,巘巘駕庫廄。參參削劍戟,煥煥銜瑩琇。
敷敷花披萼,闟闟屋摧霤。悠悠舒而安,兀兀狂以狃。
超超出猶奔,蠢蠢駭不懋。大哉立天地,經紀肖營腠。
#20 
厥初孰開張,黽勉誰勸侑。創茲樸而巧,戮力忍勞疚。
得非施斧斤,無乃假詛咒。鴻荒竟無傳,功大莫酬僦。
嚐聞於祠官,芬苾降歆嗅。斐然作歌詩,惟用讚報酭。


終南山05

現代語訳と訳註
(本文)
#18
或赤若禿鬝,或熏若柴槱。
或如龜拆兆,或若卦分繇。
或前横若剝,或後斷若姤。
延延離又屬,夬夬叛還遘。
喁喁魚闖萍,落落月經宿。

(下し文)
或るいは赤として禿鬝【とうかん】の若く、或るいは熏【くん】じて柴槱【さいゆう】の若し。
或るいは亀【き】の兆【ちょう】を柝【わか】つが如く、或るいは卦【か】の繇【ちゅう】を分かつが若し。
或るいは前の横たわって剥【はく】の若く、攻るいは後【しり】えの断えて姤【こう】の若し。
延延【えんえん】として離れて又属【つら】なり、夬夬【かいかい】として叛いて還た遘【あ】えり。
喁喁【ぎょうぎょう】として魚は萍【うきぐさ】を闖【うか】がい、落落【らくらく】として月は宿を経【ふ】。


(現代語訳)
あるものは頭のはげのように赤裸に、あるものは天を祭る薠柴の儀式のように煙をあげている。
あるものはうらないの亀が前兆を告げてひびわれたかのように、あるものは易の卦が叉を分けて吉凶を定めているかのようである。
ある唇のは剥の卦のように前の山が横たわり、あるものは姤の卦のように後の峰が断ち切れている。
ながながと連なり、きれて離れては又続くところもあり、ちぎれちぎれにそむきあってはまた出逢うところもある。
ぱくぱくと魚が浮き草の間から頭を出しているのもある。そしてちらりほらりと星が瞬き、月が通り過ぎるときの空の星のまばらになったものもある。


(訳注) #18
或赤若禿鬝,或熏若柴槱。

あるものは頭のはげのように赤裸に、あるものは天を祭る薠柴の儀式のように煙をあげている。
 そこに何もない形容。赤裸。赤脚の赤。○禿鬝 鬝、禿、どちらもはげる。特に髪の「はげ」をいう。禿鬝で、はげ。○ くぶらす。煙をあげる。○柴槱 柴や薪を積みあげて供物を焼き、その煙を天にあげて、天の神々を祭る儀礼。薠柴の祭り。 


或如龜拆兆,或若卦分繇。
あるものはうらないの亀が前兆を告げてひびわれたかのように、あるものは易の卦が叉を分けて吉凶を定めているかのようである。
亀垢兆 亀は、その甲でうらないをする。甲に穴をあけ、そこに火を入れると、その熱で甲にひびが入る。そのひびの入り方によって、吉凶をきめる。垢とは、ひびの入ること。兆とは、吉凶をきめるひびの入り方である。なお、この亀甲によって、うらなうことを、トという。○卦分繇 繇は、易の卦につけられたうらないのことばであるが、それは、大てい一就ごとにあるから、ここは、反の意味と同じように使用し、韻をあわせるため。繇の字にしたのである。山がつらなったりたちきれたりしているのをいっているのを易の卦で表現したもの。


或前横若剝,或後斷若姤。
ある唇のは剥の卦のように前の山が横たわり、あるものは姤の卦のように後の峰が断ち切れている。
前横若剝 易の卦のことを持ち出したので、実際にどんな形の山があるか、その例をあげたのである。剥は、易の六十四卦の一つで、前が横たわっている形である。○後断若姤 姤も、剥と同じく六十四卦の一つで、後が断ち切れた形となる。


延延離又屬,夬夬叛還遘。
ながながと連なり、きれて離れては又続くところもあり、ちぎれちぎれにそむきあってはまた出逢うところもある。
延延離又属 この段は前段と同じく、山の形容で、内容上はつづいている。延延は、長くつづいているさま。凪は、つづきあっていること。○夬夬 あっさり手を切ってしまう形容。易の夬の卦に見えることば。夬は、切るの意。ここでは、山脈がちぎれちぎれになっていることをいう。○ 出逢う。
ただこの段は、毎句のはじめに同じ字を重ねるいわゆる畳語を置いて描写し、前段の「或」又は「或若」をおくのと、形式的にちがっている。またヽこの段では「若」や「如」の字で「ごとし」といっていないが、どの句も比喩であること。


喁喁魚闖萍,落落月經宿。
ぱくぱくと魚が浮き草の間から頭を出しているのもある。そしてちらりほらりと星が瞬き、月が通り過ぎるときの空の星のまばらになったものもある。
哨喘 魚が頭を水面に出してロをぱくぱくさせているさま。○ 頭を出していること。○ 水草の名。うきくさ。○落落 まばらな形容。月が明るいとその周りの星座が見えないこと。○月経宿 宿は、星宿。星座をいう。