南山詩 韓退之(韓愈)詩<63-#19>Ⅱ中唐詩395 紀頌之の漢詩ブログ1264


南山詩(韓愈 唐詩)(全20回)#1~#20
第一部 終南山連峰の概要・四季
第二部 終南山朝夕・周辺の事項
第三部 以前左遷の際、冬に終南山を抜けた時の事
第四部 以前左遷の際、冬に終南山を抜けた時の事
終南山01
第五部 (#17~#20―十句五聯を四章分)終南山の特徴

#17  
或屹若戰陣,或圍若蒐狩。
あるものは戦陣のとりでのようにそば立ち、あるものは巻き狩りのようにとり囲んでいる。
或靡然東注,或偃然北首。
あるものはなだらかに東に流れこみ、あるものはながながと北向きに寝そべっている。
或如火熹焰,或若氣饙餾。
あるものは御飯をたく火のように、あるものは蒸し上げるゆげのようである。
或行而不輟,或遺而不收。
あるものはどこまでも歩いて行き止まることはない、あるものは片付けられずおいてきぼりになっている。
或斜而不倚,或弛而不彀。
あるものは斜面ではあるがかたむくほどではなく、あるものはぴんと張らずにだらりとゆるんでいる。
或るいは屹【きつ】として戦陣【せんじん】の若く、或るいは囲んで蒐狩【しゅうしゅ】の若し。
或るいは靡然【びぜん】として東に注ぎ、或るいは偃然【えんぜん】として北に首【む】こう。
或るいは火の熹焰【きえん】するが如く、或るいは気の饙餾【ふんりゅう】するが若し。
或るいは行って輟【とど】まらず、或るいは遺【のこ】して収【おさ】めず。
或るいは斜【ななめ】にして倚【かたよ】らず、或るいは弛【ゆる】うして彀【は】らず。

#18
或赤若禿鬝,或熏若柴槱。
あるものは頭のはげのように赤裸に、あるものは天を祭る薠柴の儀式のように煙をあげている。
或如龜拆兆,或若卦分繇。
あるものはうらないの亀が前兆を告げてひびわれたかのように、あるものは易の卦が叉を分けて吉凶を定めているかのようである。
或前横若剝,或後斷若姤。
ある唇のは剥の卦のように前の山が横たわり、あるものは姤の卦のように後の峰が断ち切れている。
延延離又屬,夬夬叛還遘。
ながながと連なり、きれて離れては又続くところもあり、ちぎれちぎれにそむきあってはまた出逢うところもある。
喁喁魚闖萍,落落月經宿。
ぱくぱくと魚が浮き草の間から頭を出しているのもある。そしてちらりほらりと星が瞬き、月が通り過ぎるときの空の星のまばらになったものもある。
或るいは赤として禿鬝【とうかん】の若く、或るいは熏【くん】じて柴槱【さいゆう】の若し。
或るいは亀【き】の兆【ちょう】を柝【わか】つが如く、或るいは卦【か】の繇【ちゅう】を分かつが若し。
或るいは前の横たわって剥【はく】の若く、攻るいは後【しり】えの断えて姤【こう】の若し。
延延【えんえん】として離れて又属【つら】なり、夬夬【かいかい】として叛いて還た遘【あ】えり。
喁喁【ぎょうぎょう】として魚は萍【うきぐさ】を闖【うか】がい、落落【らくらく】として月は宿を経【ふ】。

終南山05
#19
誾誾樹牆垣,巘巘駕庫廄。
きちんと土塀を築き上げているもあり、高高と蔵や馬屋を建てているもある。
參參削劍戟,煥煥銜瑩琇。
するどく聳えるようで、ちょうど剣や戈をとがらせて立たせているもあり、死者がきらきらと宝石を口にくわえているもある。
敷敷花披萼,闟闟屋摧霤。
蕾を咲かせ、爛漫と花がさいているようであり、ぼたぼたと屋根が雨だれをたたきつけているものもある。
悠悠舒而安,兀兀狂以狃。
ゆったりとのどかにして安らかなものもあり、めったやたらに狂ったように昂奮し、それでもってなれなれしいのもある。
超超出猶奔,蠢蠢駭不懋。
ひらりととび出してなお走りつづけるようなものもあり、がやがやとさわぎ立てるばかりで努力しようとしないものもある。
大哉立天地,經紀肖營腠。
大いなるかな この山は天地のあいだに立ち、秩序の正しさはからだの組織にも似ている。
誾誾【ぎんぎん】として牆垣【ちょうたん】を樹【た】て、巘巘【げんげん】として庫厩【こきゅう】を駕す。
参参【しんしん】として剣戟【けんげき】を削り、煥煥【かんかん】として瑩琇【えいしゅう】を銜【ふく】めり。
敷敷【ふふ】として花は萼【がく】を披【ひら】き、闟闟【とうとう】として屋は霤【したた】りを摧【くだ】く。
悠悠として舒【の】べて安く、兀兀【ごつごつ】として狂【たわ】れて以て狃【な】る。
超超として出でて猶奔【はし】り、蠢蠢【しゅんしゅん】として駭【おどろ】いて懋【つと】めず。
大【だい】なるかな天地に立ち,經紀【けいき】は營腠【えいそう】に肖【に】たり。

#20 
厥初孰開張,黽勉誰勸侑。創茲樸而巧,戮力忍勞疚。
得非施斧斤,無乃假詛咒。鴻荒竟無傳,功大莫酬僦。
嚐聞於祠官,芬苾降歆嗅。斐然作歌詩,惟用讚報酭。



現代語訳と訳註
(本文) #19
誾誾樹牆垣,巘巘駕庫廄。
參參削劍戟,煥煥銜瑩琇。
敷敷花披萼,闟闟屋摧霤。
悠悠舒而安,兀兀狂以狃。
超超出猶奔,蠢蠢駭不懋。
大哉立天地,經紀肖營腠。


(下し文)
誾誾【ぎんぎん】として牆垣【ちょうたん】を樹【た】て、巘巘【げんげん】として庫厩【こきゅう】を駕す。
参参【しんしん】として剣戟【けんげき】を削り、煥煥【かんかん】として瑩琇【えいしゅう】を銜【ふく】めり。
敷敷【ふふ】として花は萼【がく】を披【ひら】き、闟闟【とうとう】として屋は霤【したた】りを摧【くだ】く。
悠悠として舒【の】べて安く、兀兀【ごつごつ】として狂【たわ】れて以て狃【な】る。
超超として出でて猶奔【はし】り、蠢蠢【しゅんしゅん】として駭【おどろ】いて懋【つと】めず。
大【だい】なるかな天地に立ち,經紀【けいき】は營腠【えいそう】に肖【に】たり。


(現代語訳)
きちんと土塀を築き上げているもあり、高高と蔵や馬屋を建てているもある。
するどく聳えるようで、ちょうど剣や戈をとがらせて立たせているもあり、死者がきらきらと宝石を口にくわえているもある。
蕾を咲かせ、爛漫と花がさいているようであり、ぼたぼたと屋根が雨だれをたたきつけているものもある。
ゆったりとのどかにして安らかなものもあり、めったやたらに狂ったように昂奮し、それでもってなれなれしいのもある。
ひらりととび出してなお走りつづけるようなものもあり、がやがやとさわぎ立てるばかりで努力しようとしないものもある。
大いなるかな この山は天地のあいだに立ち、秩序の正しさはからだの組織にも似ている。


(訳注)
誾誾樹牆垣,巘巘駕庫廄。

きちんと土塀を築き上げているもあり、高高と蔵や馬屋を建てているもある。
誾誾 うやうやしいさま。きちんとしているさま。○ 立てる。○牆垣 土べい。O巘巘 高くつっ立っているきま。○駕 建てる。○庫廄 庫は、くら。厩はうまや。


參參削劍戟,煥煥銜瑩琇。
するどく聳えるようで、ちょうど剣や戈をとがらせて立たせているもあり、死者がきらきらと宝石を口にくわえているもある。
参参 ほそ長い形容。○削 けずり立っていること。○剣戟 剣は、両刃のつるぎ。戟は、ほこ。○煥煥 まばゆく光っているさま。○ 口にくわえる。なお、中国古代の習慣として、死者の口に玉を銜えさせるのが常だった。それを連想したもの。○瑩琇 瑩も琇も、玉に似て美しい石をいう。『詩経、衛風』淇奥篇詩経、衛風』淇奥篇「有匪君子 充耳琇瑩」(匪たる君子有り、 充耳琇瑩。)という句がある。


敷敷花披萼,闟闟屋摧霤。
蕾を咲かせ、爛漫と花がさいているようであり、ぼたぼたと屋根が雨だれをたたきつけているものもある。
敷敷 花の爛漫と、ぱっと咲いているさま。○披萼 披は、開く。萼は、花びらの外がわにあるうてな。○闟闟 地にものが落ちる音。○ 屋根。○ 雨だれ。


悠悠舒而安,兀兀狂以狃。
ゆったりとのどかにして安らかなものもあり、めったやたらに狂ったように昂奮し、それでもってなれなれしいのもある。
悠悠 ゆったりしているさま。○ のどかに。○兀兀 ものごとを知らない形容。○ くるう。あるいは、常態以上に昂奮する。○ なれしたしむ。


超超出猶奔,蠢蠢駭不懋。
ひらりととび出してなお走りつづけるようなものもあり、がやがやとさわぎ立てるばかりで努力しようとしないものもある。
超超 ひらりととびこえる形容。○蠢蠢 がやがやとさわぎたてるさま。○ びっくりしてさわぐ。○ 勉める。努力する。


大哉立天地,經紀肖營腠。
大いなるかな この山は天地のあいだに立ち、秩序の正しさはからだの組織にも似ている。
大哉立天地 あの干変万化の山の状態を造りあげた造物主の偉大なしわざをほめたたえる。大哉は、その徳の偉大なことを称讃するのに用いられることば。例えば、「易」の卦の彖伝に、「大哉乾元」(大なるかな乾元)とあるのがそれである。○経紀 整ったすじみち。正しい秩序。○ 似ている。