城南聯句 韓退之(韓愈)詩<64-#4>Ⅱ中唐詩400 紀頌之の漢詩ブログ1279


城南聯句第一部#1
孟郊) 竹影金瑣碎,
韓愈) 泉音玉淙琤。琉璃翦木葉,
孟郊) 翡翠開園英。流滑隨仄步,
韓愈) 搜尋得深行。遙岑出寸碧,
孟郊) 遠目增雙明。乾穟紛拄地,
韓愈) 化蟲枯挶莖。

かわいた稲の穂が垂れて地について大地を支えているようである、虫の殻は枯れている茎にすがりついている。
竹影【ちくえい】は金墳砕【きんささい】、泉音【せんおん】は玉淙琤【ぎょくそうそう】。
琉璃【るり】木葉【ぼくよう】を翦【きざ】み,翡翠【ひすい】は園英【えんえい】を開く。
流滑【りゅうかつ】仄步【そくほ】に隨い,搜尋【そうじん】深行【しんこう】を得たり。
遙岑【ようしん】寸碧【すんぺき】を出し,遠目【えんもく】は雙明【そうめい】を增す。
乾穟【かんすい】紛として地を拄【さき】へ,化蟲【かちゅう】枯れて莖【こう】を挶【と】る。

*上記聯句を韻により変更して読む

竹影金瑣碎,泉音玉淙琤。
竹林が影をおとし、金のこまかくくだけた細片をちらしたようである。泉源から湧きいずる水の音は玉のふれあうようなさわやかなものである。
琉璃翦木葉,翡翠開園英。
瑠璃懸巣が繁った林の枝に止まり、木の葉をつついてきざんでいる。赤羽、青羽のかわせみは庭園に咲く花と一緒になって咲いている。
流滑隨仄步,搜尋得深行。
流れがあり、ぬめりのある川をななめになって歩いている。何かを探すのか、尋ねるのかおくのほうにいこうとしている。
遙岑出寸碧,遠目增雙明。
はるかかなたに山が鋭く聳え、それはひとひらの碧であり、遠くより両目でみるとはっきりみえる。
乾穟紛拄地,化蟲枯挶莖。

#2
韓愈) 木腐或垂耳,
孟郊) 草珠競駢睛。浮虛有新劚,
韓愈) 摧扤饒孤撐。囚飛黏網動,
孟郊) 盜啅接彈驚。脫實自開坼,
韓愈) 牽柔誰繞縈。禮鼠拱而立,
孟郊) 駭牛躅且鳴。

*上記聯句を韻により変更して読む

木腐或垂耳,草珠競駢睛。
腐れかけた木材があり、それにキノコが耳をたれた様に生えている、草の実がなっているのはまるで、瞳が並んでいるようだ。
浮虛有新劚,摧扤饒孤撐。
空洞になった虚木を新ためて切ったものがある、さらに細かにくじくことで薪にしてたくさん積み上げている。
囚飛黏網動,盜啅接彈驚。
くもの巣にかかった辺虫が取り糯の粘りでもがいている、ぬすみぐいする鳥が弾丸にあたり驚いている。
脫實自開坼,牽柔誰繞縈。
熟れた果実はもう自分からはじけだし、しなやかな蔓草をたれかこんなにも纏わせ、這わせているのか
禮鼠拱而立,駭牛躅且鳴。

木腐【ぼくふ】或いは耳を垂れ,草珠【そうじゅ】競って睛【ひとみ】を駢【なら】ぶ。
浮虛【ふきょ】新たに劚【き】られる有り,摧扤【さいごつ】饒【ゆた】かに孤り撐【さそ】う。
囚飛【しゅうひ】して網に黏【てん】して動き,盜啅【とうたく】は接彈【せつだん】して驚く。
脫實【だつじつ】自ら開坼【かいたく】し,牽柔【けんじゅう】誰か繞縈【じゅうえい】する。
禮鼠【れいそ】拱【きょう】而て立てり,駭牛【がいぎゅう】躅【あが】き且つ鳴く。

#3
孟郊) 蔬甲喜臨社,
韓愈) 田毛樂寬征。露螢不自暖,
孟郊) 凍蝶尚思輕。宿羽有先曉,
韓愈) 食鱗時半橫。菱翻紫角利,
孟郊) 荷折碧圓傾。楚膩鳣鮪亂,
韓愈) 獠羞螺蟹並。

*上記聯句を韻により変更して読む


蔬甲喜臨社,田毛樂寬征。
やさい菜が芽をだしてくるころ社に行って春の訪れを喜ぶお祭をする、田畑から生じるものには租税がかかるが良い田に恵まれて税負担が軽く楽しい思いだ。
露螢不自暖,凍蝶尚思輕。
秋になり夜にもなれば螢も夜露に濡れ、もう暖かくはならない。寒さにこごえる喋は何とか飛ぼうとしている。
宿羽有先曉,食鱗時半橫。
翅を留めていた巣の鳥は朝まだきの空に飛んでいる。水には餌を取ろうとしている魚がおり、時に半ば体を横にしているのが見える。
菱翻紫角利,荷折碧圓傾。
菱が実って風に翻りむらさき色のかど角を鋭くしている。蓮は途中で折れてみどり色の円い葉が傾いている。
楚膩鳣鮪亂,獠羞螺蟹並。
南方楚地方の珍味があり、カジキやシビ盆の上においしそうに乱れおどっておる。生きた御馳走もあり、田にしとカニもならべてある。
蔬甲【そこう】は社に臨むを喜び,田毛【でんもう】征を寬【ゆる】うせらるるを樂む。
露螢【ろけい】不自ら暖かならず,凍蝶【とうちょう】の尚お輕きを思う。
宿羽【しゅくう】曉に先んずる有り,食鱗【しょくりん】時に半ば橫たう。
菱【ひし】翻【ひるがえ】って紫角【しかく】利【と】く,荷【はす】折れて碧圓【へきえん】傾く。
楚膩【そじ】鳣鮪【てんゆう】亂れ,獠羞【りょうしゅう】螺蟹【らかい】並ぶ。


#4
韓愈) 桑蠖見虛指,
孟郊) 穴貍聞鬥獰。逗翳翅相築,
韓愈) 擺幽尾交搒。蔓涎角出縮,
孟郊) 樹啄頭敲鏗。修箭裊金餌,
韓愈) 群鮮沸池羹。岸殼坼玄兆,
孟郊) 野牟漸豐萌。

*上記聯句を韻により変更して読む

桑蠖見虛指,穴貍聞鬥獰。
尺取虫は桑の葉にむなしく跡つけている、こちらでは穴の狸がたたかったり、助け合ったりするのが聞えてくる。
逗翳翅相築,擺幽尾交搒。
林のかげにとどまる鳥は羽をふれあわせたり、羽ばたいたりさせる。うすぐらいところでたわむれ遊び、尾っぽを交わらせ、鞭うっている。
蔓涎角出縮,樹啄頭敲鏗。
かたつむりは涎をたれ、角を出したりちじめたりしている。キッツキはのこつこつとこづいてやむことはない。
修箭裊金餌,群鮮沸池羹。
釣り竿は黄金のようなよい餌にたわんでいる、むらがる魚は池が熱い汁のようにみえるほどである。
岸殼坼玄兆,野牟漸豐萌。

切り立った崖状の岸にある貝殻で暗い占いや輝ける予兆を占って岸から離れる。大麦はゆたかな芽ばえて豊作の卦がでたようだ。

桑蠖【そうかく】は虚しく指すに見、穴貍【けつり】は鬥【たたか】ひて獰【たすけ】きを聞く。
翳【かげ】逗【も】れて 翅【はね】相築き、幽【くら】きに擺【あそ】びて 尾交【こもご】も搒【う】つ。
蔓涎【まんぜん】角 出縮【しゅつしゅく】し、樹啄【じゅたく】頭【かしら】敲鐙【こうこう】す。
修箭【しゅうせん】は金餌【きんじ】に裊【たわ】み、群鮮【ぐんせん】は池羹【ちこう】を沸かす。
岸殻【がんかく】玄兆【げんちょう】に坼【さ】き、野牟【やぼう】豊萌【ほうぼう】を漸【ぜん】にす。



聯句は今日でいうディベートの一面があり、参加者の芸術性を高めたことは言うまでもないし、技巧性を格段に向上させた。

聯句は意表に出ることをつとめる。意表に出ようとつとめるときには、作者自身おもいかけぬ彷径、低迷、滞留、疾駆を余儀なくされる。欠略、重複もいとっている暇がない。いな、むしろ、偶然がもたらすさまざまの不利と、敵がわれに投げかける困苦とを、逆手にとって、聯憩の暴風をまき撃」し、あらかじめ引いた図によって中綿麗に仕立てる盆栽などには思いもおよはぬ、深山幽谷、荒漠平原、巨川大海の趣を生成せしめるもの、これこそ聯句でなければならない。
社会は、ひとりでは成り立たない。ふたり以上が集まれば、かならず、そこには相反する意志が働き合うであろう。
そのような社会におかれた人間の生命は、つねに他に対する抵抗順応、反覆妥協、のくりかえしであろう。そこには、みずから思いもかけぬ彷嘩・低迷、滞留、疾駆がある。つねに問いかけがあって、これに答えねはならぬ。社会的動物である人間は、孤独のうちにあっても、みずから、問いかけ、答えをせずには、生きることができないだろう。このような人生には、到るところに、重複、欠略が存するであろう。だとすれば、聯句は、批評家たちがいうように、「詩人たちの暇つぶしから生まれた遊戯」ではあっても、人生のありのままのすがたを写す芸術形式として、すこぶる相かなったものということができるのではないか。



現代語訳と訳註
(本文)#4
韓愈) 桑蠖見虛指,
孟郊) 穴貍聞鬥獰。逗翳翅相築,
韓愈) 擺幽尾交搒。蔓涎角出縮,
孟郊) 樹啄頭敲鏗。修箭裊金餌,
韓愈) 群鮮沸池羹。岸殼坼玄兆,
孟郊) 野牟漸豐萌。

*上記聯句を韻により変更して読む

桑蠖見虛指,穴貍聞鬥獰。
逗翳翅相築,擺幽尾交搒。
蔓涎角出縮,樹啄頭敲鏗。
修箭裊金餌,群鮮沸池羹。
岸殼坼玄兆,野牟漸豐萌。


(下し文) #4
桑蠖【そうかく】は虚しく指すに見、穴貍【けつり】は鬥【たたか】ひて獰【たすけ】きを聞く。
翳【かげ】逗【も】れて 翅【はね】相築き、幽【くら】きに擺【あそ】びて 尾交【こもご】も搒【う】つ。
蔓涎【まんぜん】角 出縮【しゅつしゅく】し、樹啄【じゅたく】頭【かしら】敲鐙【こうこう】す。
修箭【しゅうせん】は金餌【きんじ】に裊【たわ】み、群鮮【ぐんせん】は池羹【ちこう】を沸かす。
岸殻【がんかく】玄兆【げんちょう】に坼【さ】き、野牟【やぼう】豊萌【ほうぼう】を漸【ぜん】にす。


(現代語訳)
尺取虫は桑の葉にむなしく跡つけている、こちらでは穴の狸がたたかったり、助け合ったりするのが聞えてくる。
林のかげにとどまる鳥は羽をふれあわせたり、羽ばたいたりさせる。うすぐらいところでたわむれ遊び、尾っぽを交わらせ、鞭うっている。
かたつむりは涎をたれ、角を出したりちじめたりしている。キッツキはのこつこつとこづいてやむことはない。
釣り竿は黄金のようなよい餌にたわんでいる、むらがる魚は池が熱い汁のようにみえるほどである。
切り立った崖状の岸にある貝殻で暗い占いや輝ける予兆を占って岸から離れる。大麦はゆたかな芽ばえて豊作の卦がでたようだ。


(訳注) #4
桑蠖見虛指,穴貍聞鬥獰。

尺取虫は桑の葉にむなしく跡つけている、こちらでは穴の狸がたたかったり、助け合ったりするのが聞えてくる。
桑蠖 尺取虫。


逗翳翅相築,擺幽尾交搒。
林のかげにとどまる鳥は羽をふれあわせたり、羽ばたいたりさせる。うすぐらいところでたわむれ遊び、尾っぽを交わらせ、鞭うっている。
逗翳 林のかげにとどまる鳥。・相築 羽をふれあうこと。・搒 おおう。むちでうつ・擺幽 うすぐらいところでたわむれ遊ぶ。


蔓涎角出縮,樹啄頭敲鏗。
かたつむりは涎をたれ、角を出したりちじめたりしている。キッツキはのこつこつとこづいてやむことはない。
・蔓涎 かたつむり。・樹啄 きつつき。・敲鏗 こつこつとこづく。


修箭裊金餌,群鮮沸池羹。
釣り竿は黄金のようなよい餌にたわんでいる、むらがる魚は池が熱い汁のようにみえるほどである。
修箭 長い釣竿。・金餌 りっぱなえさ。・群鮮 むらがる魚。・池羹 池が熱い汁のようにみえること。


岸殼坼玄兆,野牟漸豐萌。
切り立った崖状の岸にある貝殻で暗い占いや輝ける予兆を占って岸から離れる。大麦はゆたかな芽ばえて豊作の卦がでたようだ。
岸殼 切り立った崖状の岸・坼 さける、 わかれる、 ひらく、 さけめ。・玄兆 うらない。・野牟 大麦。・豐萌 ゆたかな芽ばえ。

礼儀正しい野ねずみが敬礼してたっているし、こちらでは驚いた牛があがきながら啼いている。