城南聯句 韓退之(韓愈)詩<64-#7>Ⅱ中唐詩403 紀頌之の漢詩ブログ1288


#5
孟郊) 窯煙冪疏島,
韓愈) 沙篆印回平。ラ肌遭蠔刺,
孟郊) 啾耳聞雞生。奇慮恣回轉,
韓愈) 遐睎縱逢迎。巔林戢遠睫,
孟郊) 縹氣夷空情。歸跡歸不得,
韓愈) 舍心舍還爭。

#7
牛が行き来する大道は補修したところがまた壊れたと思うと、蜘蛛の糸を拂って綺麗にしたのにまた糸を張って居る。
機の舂【うず】くは潺湲【せんかん】の力,吹【すき】に簸【ふる】いて飄飖【ひょうよう】として精【せい】し。
賽饌【さいせん】木盤【もくばん】の簇【そう】,靸妖【そうよう】藤索【とうさく】の絣【まとい】。
荒學【こうがく】は五六卷,古藏【こぞう】は四三塋【えい】。
裏儒【りじゅ】足を拳【かが】めて拜し,土怪【どかい】は眸【め】を閃【ひらめか】して偵【うかが】う。
蹄道【ていどう】は補【おぎな】えども復た破れ,絲窠【しか】は掃【はら】えども還た成る。
#8
韓愈) 暮堂蝙蝠沸,
孟郊) 破竈伊威盈。追此迅前主,
韓愈) 答雲皆冢卿。敗壁剝寒月,
孟郊) 折篁嘯遺笙。袿熏霏霏在,
韓愈) 綦跡微微呈。劍石猶竦檻,
孟郊) 獸材尚挐楹。

*上記聯句を韻により変更して読む

機舂潺湲力,吹簸飄飖精。
こちらではきかいをつかいさらさら流れる川水の流れを利用して臼をついている。あっちでは風が吹くとふるえ、風に揺れて精錬する。
賽饌木盤簇,靸妖藤索絣。
祭神にそなえられる食品は木の大皿や竹で編んだ盆に盛り付けているし、盛り付けられた足の方は藤の蔓で巻き付いて妖怪のようである。
荒學五六卷,古藏四三塋。
荒れた学び舎には書が五六卷あり、いにしえから続く墓地には菱型の塚が何か所もある。
裏儒拳足拜,土怪閃眸偵。
いなかもんの儒学者は拝礼参拝しているし、土着の妖怪は目を見開いてこちらを覗い見ている。
蹄道補復破,絲窠掃還成。

*上記聯句を韻により変更して読む

窯煙冪疏島,沙篆印回平。
瓦を焼く煙がはなれた島に立ち込めている、鳥の歩いた跡がまがりくねって平らかな渚抄に篆字の文字かいている。
痒肌遭蠔刺,啾耳聞雞生。
渚に立っていると肌かゆくなり、毛虫などに刺されてしまうし、耳に生れたての雛が騒がしく啼いているのが聞えてくる。
奇慮恣回轉,遐睎縱逢迎。
素晴らしくほかにない慮りはかって気ままにめまぐるしく回る。遠き眺めは突然であったり、むかえにでるのもほしいままに見るのである。
巔林戢遠睫,縹氣夷空情。
山頂までの林があり、遠くをみるまなざしを看守っている、山の気は世間離れした隠遁の心なごませている。
歸跡歸不得,舍心舍還爭。

窯煙【ゆうえん】は疏島【そとう】を冪【おお】い,沙篆【さてん】は回平【かいへい】に印す。
肌に痒きは蠔【し】の刺すに遭【あ】いしや,耳に啾【さわか】しきは雞【ひな】の生るるを聞けばなり。
奇慮【きりょ】恣【ほしいまま】に回轉し,遐睎【かき】縱【こころゆく】まで逢迎【ほうげい】す。
巔林【てんりん】遠睫【えんしょう】を戢【おさ】め,縹氣【ひょうき】空情【くじょうう】を夷【たいらか】にす。
歸跡【きせき】あれど歸り得ず,心を舍てんとして舍て還た爭う。

#6
韓愈) 靈麻撮狗虱,
孟郊) 村稚啼禽猩。紅皺曬檐瓦,
韓愈) 黃團系門衡。得雋蠅虎健,
孟郊) 相殘雀豹趟。束枯樵指禿,
韓愈) 刈熟擔肩赪。澀旋皮卷臠,
孟郊) 苦開腹彭亨。

*上記聯句を韻により変更して読む

靈麻撮狗虱,村稚啼禽猩。
ゴマが集まることは犬に着くシラミとダニをとっているようだ、村の子供たちは、鳥が騒ぐ様に猩々と泣いている。
紅皺曬檐瓦,黃團系門衡。
赤く熟れて、しわが寄った果実が軒の瓦の下にさらし干される。黄色で丸い瓜は隠者の住居の冠木門に架けられている。
得雋蠅虎健,相殘雀豹趟。
蝿取り蜘蛛は元気で抜きん出てすぐれている。互いに飛び跳ねているのは雀の中の豹のような暴れ者である。
束枯樵指禿,刈熟擔肩赪。
枯れ木を束ねてきこりの指はまめがつぶれ禿げている、稲が実って刈りそろえ、担ぐ肩は赤くはれる。

靈麻【れいま】狗虱【くしつ】を撮【と】り,村稚【そんち】禽猩【きんせい】のごとく啼く。
紅皺【こうしゅう】檐瓦【たんが】に曬【さら】し,黃團【こうだん】門衡【もんこう】に系【か】く。
雋【しゅん】を得て蠅虎【ようこ】健【たけ】く,相い殘【そこな】いて雀豹【じゃくひょう】趟【おど】る。
枯れしを束ね樵指【しょうし】を禿げ,熟れしを刈りて擔肩【たんけん】赪【あか】し。
澀【じゅう】旋【めぐ】りて皮【かわ】卷臠【けんしん】,苦 開いて腹【はら】彭亨【ほうこう】。


韓愈のグループの各々は独奏者としての才能においては、あるいは韓愈をしのぐ場合もあったろうが、かれらの一人一人の特色を把起し、かれらにふさわしい楽器を与え、かれらに才能の発揮を強い、選択・按排・布置を加えて、聯句というユーモラスなシムフォニィーを演奏した指揮者として、遵衆のたれひとりとして韓愈におよぶものはない。聯句におけるこの指揮者ぶりは、わが国の芭蕉がそれを参考にしたのは間違いない所である。このことははなはだよく似ている。そうして、韓愈は・聯句においてのみならず、韓愈グループの全文学運動において、そのような指揮者としての役割をはたした。



現代語訳と訳註
(本文)#7
孟郊) 機舂潺湲力,
韓愈) 吹簸飄飖精。賽饌木盤簇,
孟郊) 靸妖藤索絣。荒學五六卷,
韓愈) 古藏四三塋。裏儒拳足拜,
孟郊) 土怪閃眸偵。蹄道補復破,
韓愈) 絲窠掃還成。
#7

*上記聯句を韻により変更して読む


機舂潺湲力,吹簸飄飖精。
賽饌木盤簇,靸妖藤索絣。
荒學五六卷,古藏四三塋。
裏儒拳足拜,土怪閃眸偵。
蹄道補復破,絲窠掃還成。

(下し文) #7
機の舂【うず】くは潺湲【せんかん】の力,吹【すき】に簸【ふる】いて飄飖【ひょうよう】として精【せい】し。
賽饌【さいせん】木盤【もくばん】の簇【そう】,靸妖【そうよう】藤索【とうさく】の絣【まとい】。
荒學【こうがく】は五六卷,古藏【こぞう】は四三塋【えい】。
裏儒【りじゅ】足を拳【かが】めて拜し,土怪【どかい】は眸【め】を閃【ひらめか】して偵【うかが】う。
蹄道【ていどう】は補【おぎな】えども復た破れ,絲窠【しか】は掃【はら】えども還た成る。


(現代語訳)
こちらではきかいをつかいさらさら流れる川水の流れを利用して臼をついている。あっちでは風が吹くとふるえ、風に揺れて精錬する。
祭神にそなえられる食品は木の大皿や竹で編んだ盆に盛り付けているし、盛り付けられた足の方は藤の蔓で巻き付いて妖怪のようである。
荒れた学び舎には書が五六卷あり、いにしえから続く墓地には菱型の塚が何か所もある。
いなかもんの儒学者は拝礼参拝しているし、土着の妖怪は目を見開いてこちらを覗い見ている。
牛が行き来する大道は補修したところがまた壊れたと思うと、蜘蛛の糸を拂って綺麗にしたのにまた糸を張って居る。


(訳注) #7
機舂潺湲力,吹簸飄飖精。
こちらではきかいをつかいさらさら流れる川水の流れを利用して臼をついている。あっちでは風が吹くとふるえ、風に揺れて精錬する。
機舂 機械で臼をつく。・潺湲 さらさら流れる川水の流れ。・吹簸 風が吹くとふるえる。・飄飖 風に揺れる,風になびく・ 精錬する。


賽饌木盤簇,靸妖藤索絣。
祭神にそなえられる食品は木の大皿や竹で編んだ盆に盛り付けているし、盛り付けられた足の方は藤の蔓で巻き付いて妖怪のようである。
賽饌 祭神にそなえられる食品。・ 小さい竹。竹で作ったお盆。集まる。群がる。矢じり。・靸妖 ぞうり。


荒學五六卷,古藏四三塋。
荒れた学び舎には書が五六卷あり、いにしえから続く墓地には菱型の塚が何か所もある。
荒學 荒れた学び舎。・古藏 いにしえから続く墓地。・ つか。


裏儒拳足拜,土怪閃眸偵。
いなかもんの儒学者は拝礼参拝しているし、土着の妖怪は目を見開いてこちらを覗い見ている。
裏儒 いなかもんの儒学者。本格的な学問をしていない儒学者を系統的に学んでいる儒学者に比較して、いやしめて言う。・土怪 土着の妖怪。


蹄道補復破,絲窠掃還成。
牛が行き来する大道は補修したところがまた壊れたと思うと、蜘蛛の糸を拂って綺麗にしたのにまた糸を張って居る
絲窠 くものす。

澀旋皮卷臠,苦開腹彭亨。
くるくると巻いた渋皮はちぢまっている。にがうりを切り開くとそのおなかは異なったり、その通りだったりしているのだ。
帰途に付こうとするが帰ることはできないし、俗心を棄てたいと思うけれどいったん捨ててもまた戻りたい気持ちがいつも爭うのである。