城南聯句 韓退之(韓愈)詩<64-#8>Ⅱ中唐詩404 紀頌之の漢詩ブログ1291


第二部
#5
孟郊) 窯煙冪疏島,
韓愈) 沙篆印回平。ラ肌遭蠔刺,
孟郊) 啾耳聞雞生。奇慮恣回轉,
韓愈) 遐睎縱逢迎。巔林戢遠睫,
孟郊) 縹氣夷空情。歸跡歸不得,
韓愈) 舍心舍還爭。

*上記聯句を韻により変更して読む

窯煙冪疏島,沙篆印回平。
瓦を焼く煙がはなれた島に立ち込めている、鳥の歩いた跡がまがりくねって平らかな渚抄に篆字の文字かいている。
痒肌遭蠔刺,啾耳聞雞生。
渚に立っていると肌かゆくなり、毛虫などに刺されてしまうし、耳に生れたての雛が騒がしく啼いているのが聞えてくる。
奇慮恣回轉,遐睎縱逢迎。
素晴らしくほかにない慮りはかって気ままにめまぐるしく回る。遠き眺めは突然であったり、むかえにでるのもほしいままに見るのである。
巔林戢遠睫,縹氣夷空情。
山頂までの林があり、遠くをみるまなざしを看守っている、山の気は世間離れした隠遁の心なごませている。
歸跡歸不得,舍心舍還爭。

帰途に付こうとするが帰ることはできないし、俗心を棄てたいと思うけれどいったん捨ててもまた戻りたい気持ちがいつも爭うのである。

窯煙【ゆうえん】は疏島【そとう】を冪【おお】い,沙篆【さてん】は回平【かいへい】に印す。
肌に痒きは蠔【し】の刺すに遭【あ】いしや,耳に啾【さわか】しきは雞【ひな】の生るるを聞けばなり。
奇慮【きりょ】恣【ほしいまま】に回轉し,遐睎【かき】縱【こころゆく】まで逢迎【ほうげい】す。
巔林【てんりん】遠睫【えんしょう】を戢【おさ】め,縹氣【ひょうき】空情【くじょうう】を夷【たいらか】にす。
歸跡【きせき】あれど歸り得ず,心を舍てんとして舍て還た爭う。

#6
韓愈) 靈麻撮狗虱,
孟郊) 村稚啼禽猩。紅皺曬檐瓦,
韓愈) 黃團系門衡。得雋蠅虎健,
孟郊) 相殘雀豹趟。束枯樵指禿,
韓愈) 刈熟擔肩赪。澀旋皮卷臠,
孟郊) 苦開腹彭亨。

*上記聯句を韻により変更して読む

靈麻撮狗虱,村稚啼禽猩。
ゴマが集まることは犬に着くシラミとダニをとっているようだ、村の子供たちは、鳥が騒ぐ様に猩々と泣いている。
紅皺曬檐瓦,黃團系門衡。
赤く熟れて、しわが寄った果実が軒の瓦の下にさらし干される。黄色で丸い瓜は隠者の住居の冠木門に架けられている。
得雋蠅虎健,相殘雀豹趟。
蝿取り蜘蛛は元気で抜きん出てすぐれている。互いに飛び跳ねているのは雀の中の豹のような暴れ者である。
束枯樵指禿,刈熟擔肩赪。
枯れ木を束ねてきこりの指はまめがつぶれ禿げている、稲が実って刈りそろえ、担ぐ肩は赤くはれる。
澀旋皮卷臠,苦開腹彭亨。
くるくると巻いた渋皮はちぢまっている。にがうりを切り開くとそのおなかは異なったり、その通りだったりしているのだ。

靈麻【れいま】狗虱【くしつ】を撮【と】り,村稚【そんち】禽猩【きんせい】のごとく啼く。
紅皺【こうしゅう】檐瓦【たんが】に曬【さら】し,黃團【こうだん】門衡【もんこう】に系【か】く。
雋【しゅん】を得て蠅虎【ようこ】健【たけ】く,相い殘【そこな】いて雀豹【じゃくひょう】趟【おど】る。
枯れしを束ね樵指【しょうし】を禿げ,熟れしを刈りて擔肩【たんけん】赪【あか】し。
澀【じゅう】旋【めぐ】りて皮【かわ】卷臠【けんしん】,苦 開いて腹【はら】彭亨【ほうこう】。

#7
孟郊) 機舂潺湲力,
韓愈) 吹簸飄飖精。賽饌木盤簇,
孟郊) 靸妖藤索絣。荒學五六卷,
韓愈) 古藏四三塋。裏儒拳足拜,
孟郊) 土怪閃眸偵。蹄道補復破,
韓愈) 絲窠掃還成。
#7

*上記聯句を韻により変更して読む


機舂潺湲力,吹簸飄飖精。
こちらではきかいをつかいさらさら流れる川水の流れを利用して臼をついている。あっちでは風が吹くとふるえ、風に揺れて精錬する。
賽饌木盤簇,靸妖藤索絣。
祭神にそなえられる食品は木の大皿や竹で編んだ盆に盛り付けているし、盛り付けられた足の方は藤の蔓で巻き付いて妖怪のようである。
荒學五六卷,古藏四三塋。
荒れた学び舎には書が五六卷あり、いにしえから続く墓地には菱型の塚が何か所もある。
裏儒拳足拜,土怪閃眸偵。
いなかもんの儒学者は拝礼参拝しているし、土着の妖怪は目を見開いてこちらを覗い見ている。
蹄道補復破,絲窠掃還成。
牛が行き来する大道は補修したところがまた壊れたと思うと、蜘蛛の糸を拂って綺麗にしたのにまた糸を張って居る。
機の舂【うず】くは潺湲【せんかん】の力,吹【すき】に簸【ふる】いて飄飖【ひょうよう】として精【せい】し。
賽饌【さいせん】木盤【もくばん】の簇【そう】,靸妖【そうよう】藤索【とうさく】の絣【まとい】。
荒學【こうがく】は五六卷,古藏【こぞう】は四三塋【えい】。
裏儒【りじゅ】足を拳【かが】めて拜し,土怪【どかい】は眸【め】を閃【ひらめか】して偵【うかが】う。
蹄道【ていどう】は補【おぎな】えども復た破れ,絲窠【しか】は掃【はら】えども還た成る。
#8
韓愈) 暮堂蝙蝠沸,
孟郊) 破竈伊威盈。追此迅前主,
韓愈) 答雲皆冢卿。敗壁剝寒月,
孟郊) 折篁嘯遺笙。袿熏霏霏在,
韓愈) 綦跡微微呈。劍石猶竦檻,
孟郊) 獸材尚挐楹。
#8

*上記聯句を韻により変更して読む


暮堂蝙蝠沸,破竈伊威盈。
夕暮れになり屋敷には蝙蝠が湧くように飛び出してくる、壊れかけたかまどにはワラジムシが這って居る。
追此迅前主,答雲皆冢卿。
ここに追いかけて来てみたがこの屋敷の前の持ち主を尋ねてみる。それに答えていったのは皆大臣様だと。
敗壁剝寒月,折篁嘯遺笙。
崩れた壁がありその上には剥げ落ちて三日月になった月が上がっているし、折れたりしてあれた竹藪に風が吹き、まるで笙の笛を吹いているかのようだ。
袿熏霏霏在,綦跡微微呈。
燻衣香や煙がただよっているとばりの囲いの中にいる、そして床には埃と塵に足跡を残している。
劍石猶竦檻,獸材尚挐楹。
剣のようにとがった庭石が垣根になお聳えるようにあり、獣の彫刻がなお、まるく太い柱がそばだっている。
暮堂に蝙蝠【へんぷく】沸き,破竈【はさく】に伊威【いい】盈【み】つ。
此を追いて前主を迅【たず】ねるに,答えて雲う皆冢卿【ちょけい】と。
敗壁【はいへき】寒月を剝【けず】り,折篁【せつこう】遺笙【いしょう】を嘯【うそぶ】く。
袿熏【けいたん】は霏霏【ひひ】として在り,綦跡【いせき】は微微【ひひ】として呈す。
劍石 猶お 檻【かん】に竦【そび】え,獸材【じゅうざい】尚お 楹【はしら】を挐【つか】まんとす。


現代語訳と訳註
(本文)
#8
韓愈) 暮堂蝙蝠沸,
孟郊) 破竈伊威盈。追此迅前主,
韓愈) 答雲皆冢卿。敗壁剝寒月,
孟郊) 折篁嘯遺笙。袿熏霏霏在,
韓愈) 綦跡微微呈。劍石猶竦檻,
孟郊) 獸材尚挐楹。
#8

*上記聯句を韻により変更して読む


暮堂蝙蝠沸,破竈伊威盈。
追此迅前主,答雲皆冢卿。
敗壁剝寒月,折篁嘯遺笙。
袿熏霏霏在,綦跡微微呈。
劍石猶竦檻,獸材尚挐楹。


(下し文) #8
暮堂に蝙蝠【へんぷく】沸き,破竈【はさく】に伊威【いい】盈【み】つ。
此を追いて前主を迅【たず】ねるに,答えて雲う皆冢卿【ちょけい】と。
敗壁【はいへき】寒月を剝【けず】り,折篁【せつこう】遺笙【いしょう】を嘯【うそぶ】く。
袿熏【けいたん】は霏霏【ひひ】として在り,綦跡【いせき】は微微【ひひ】として呈す。
劍石 猶お 檻【かん】に竦【そび】え,獸材【じゅうざい】尚お 楹【はしら】を挐【つか】まんとす。


(現代語訳)
夕暮れになり屋敷には蝙蝠が湧くように飛び出してくる、壊れかけたかまどにはワラジムシが這って居る。
ここに追いかけて来てみたがこの屋敷の前の持ち主を尋ねてみる。それに答えていったのは皆大臣様だと。
崩れた壁がありその上には剥げ落ちて三日月になった月が上がっているし、折れたりしてあれた竹藪に風が吹き、まるで笙の笛を吹いているかのようだ。
燻衣香や煙がただよっているとばりの囲いの中にいる、そして床には埃と塵に足跡を残している。
剣のようにとがった庭石が垣根になお聳えるようにあり、獣の彫刻がなお、まるく太い柱がそばだっている。


(訳注) #8
暮堂蝙蝠沸,破竈伊威盈。

夕暮れになり屋敷には蝙蝠が湧くように飛び出してくる、壊れかけたかまどにはワラジムシが這って居る。
暮堂 夕暮れのやしき。・蝙蝠 こうもり。・破竈 やぶれかまど。・伊威 わらじ虫。


追此迅前主,答雲皆冢卿。
ここに追いかけて来てみたがこの屋敷の前の持ち主を尋ねてみる。それに答えていったのは皆大臣様だと。
前主 やしきの前のもちぬし.・冢卿 大臣。


敗壁剝寒月,折篁嘯遺笙。
崩れた壁がありその上には剥げ落ちて三日月になった月が上がっているし、折れたりしてあれた竹藪に風が吹き、まるで笙の笛を吹いているかのようだ。
敗壁 やぶれた壁。・折篁 折れた竹。・遺笙 のこされた笙のふえ。


袿熏霏霏在,綦跡微微呈。
燻衣香や煙がただよっているとばりの囲いの中にいる、そして床には埃と塵に足跡を残している。
袿熏 衣にたきしめる香。・霏霏 煙や香のただようさま。・綦跡 くつのあと。


劍石猶竦檻,獸材尚挐楹。
剣のようにとがった庭石が垣根になお聳えるようにあり、獣の彫刻がなお、まるく太い柱がそばだっている。
劍石 剣のようにとがった庭石。・ てすり。・獸材 獣の形を彫刻した桂。・ ささえている。・ まるく太い柱。