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第三部
#9
孟郊) 寶唾拾未盡,
韓愈) 玉啼墮猶槍。窗綃疑閟艷,
孟郊) 妝燭已銷檠。綠發抽瑉甃,
韓愈) 青膚聳瑤楨。白蛾飛舞地,
孟郊) 幽蠹落書棚。惟昔集嘉詠,
韓愈) 吐芳類鳴嚶。

*上記聯句を韻により変更して読む

寶唾拾未盡,玉啼墮猶槍。
宝石のような美しい唾、宝玉は、拾い尽くせない、珠玉のような涙は落ちるたびに玉のなる音を鳴らしている。
窗綃疑閟艷,妝燭已銷檠。
窓の絹のとばりは美女をとじこめかくしているのだろうか、ぼんぼりのあかりがきえて化粧ができないのでまたつける。
綠發抽瑉甃,青膚聳瑤楨。
みどりの髪のような草があり、その草の中で玉の敷石めだっている。あおいこけがいっぱいに生えている中に玉樹がそびえている。
白蛾飛舞地,幽蠹落書棚。
そういう景色は白蛾が飛びまわってひと舞する舞台をつくったようなものだ。こちら見目を遣れば本に着く紙むしは書棚から落ちている。
惟昔集嘉詠,吐芳類鳴嚶。

寶唾【ほうだ】未だ盡さざるを拾わん,玉啼【ぎょくてい】猶お槍【そう】たることく墮ちん。
窗綃【そうしょう】は艷【えん】を閟【と】づるかを疑い,妝燭【しょうしょく】は已に檠【けい】を銷【き】ゆ。
綠發【りょくはつ】瑉甃【びんしゅう】より抽【ぬき】んでて,青膚【せいふ】は瑤楨【ようてい】を聳【そびえ】かす。
白蛾【はくが】舞地【ぶち】に飛び,幽蠹【ゆうと】書棚【しょほう】より落つ。
惟【こ】れ昔嘉詠【かえい】を集め,芳を吐いて鳴嚶【めいおう】に類す。


#10
韓愈) 窺奇摘海異,
孟郊) 恣韻激天鯨。腸胃繞萬象,
韓愈) 精神驅五兵。蜀雄李杜拔,
孟郊) 嶽力雷車轟。大句斡玄造,
韓愈) 高言軋霄崢。芒端轉寒燠,
孟郊) 神助溢杯觥。

*上記聯句を韻により変更して読む

窺奇摘海異,恣韻激天鯨。

奇を窺いて海異【かいい】を摘み,韻を恣【ほしいまま】にして天鯨【てんげい】を激す。
腸胃【ちょうい】萬象【ばんしょう】を繞り,精神は五兵を驅【か】る。
蜀雄【しょくゆう】李杜【りと】拔きんで,嶽力【がくりょく】雷車轟く。
大句は玄造【げんぞう】を斡【あつ】,高言は霄崢【しょうそう】を軋【きし】る。
芒端【ぼうたん】 寒燠【かんいく】を.じ,神助【しんじょ】 杯觥【はいこう】に溢る。


#11
孟郊) 巨細各乘運,
韓愈) 湍潿亦騰聲。淩花咀粉蕊,
孟郊) 削縷穿珠櫻。綺語洗晴雪,
韓愈) 嬌辭哢雛鶯。酣歡雜弁珥,
孟郊) 繁價流金瓊。菡萏寫江調,
韓愈) 萎蕤綴藍瑛。

*上記聯句を韻により変更して読む

巨細各乘運,湍潿亦騰聲。

巨細【きょ・さい】は各【おのお】の運に乘じ,湍潿【たんい】も亦た聲を騰げる。
花を淩いで粉蕊【ふんずい】を咀【くら】い,縷【る】を削って珠櫻【しゅおう】を穿【うが】つ。
綺語【きご】は晴雪を洗【そそ】ぎ,嬌辭【きょうじ】は雛鶯【すうおう】を哢【ささや】く。
酣歡【かんかん】弁珥【べんじょ】を雜【まじ】へ,繁價【はんか】金瓊【きんけい】を流【ついや】す。
菡萏【かたん】江調【こうちょう】を寫す,萎蕤【いずい】藍瑛【らんえい】を綴る。



#12
韓愈) 庖霜膾玄鯽,
孟郊) 浙玉炊香粳。朝饌已百態,
韓愈) 春醪又千名。哀匏蹙駛景,
孟郊) 冽唱凝余晶。解魄不自主,
韓愈) 痺肌坐空瞠。扳援賤蹊絕,
孟郊) 炫曜仙選更。
#12

*上記聯句を韻により変更して読む

庖霜膾玄鯽,浙玉炊香粳。
黒フナの肉片を霜柱のように細く包丁を入れ、それをなますにする、宝玉をすすぐように上等のうるち米をとぎ炊飯する。
朝饌已百態,春醪又千名。
朝食は並べられすでに百種類もあろうか、その上この春の一番搾りの千の銘柄の濁り酒がある。
哀匏蹙駛景,冽唱凝余晶。
かなしい笛の音が聞こえて消えるように光陰は矢のように過ぎ去る。清らかな歌声は名残の光と疑うばかりである。
解魄不自主,痺肌坐空瞠。
快楽に心が解けるようなことには自ら主役になることはないし、ましてや座り続けて痺れを切らして見上げるということもない。
扳援賤蹊絕,炫曜仙選更。
ひとを採り立てることはしても賤しいひとの進み通うみちを遮断することはない。まばゆいこととおもうのはえりぬきの仙女をさらに選び出すことであろうか。

霜を庖【ほう】して玄鯽【げんせい】を膾【なます】にし,玉を浙【あら】って炊香粳【こうこう】を【かし】ぐ。
朝饌【ちょうせん】已に百態【ひゃくたい】,春醪【しゅんろう】又 千名。
哀匏【あいほう】は駛景【しけい】を蹙【お】い,冽唱【れつしょう】は余晶【よしょう】を凝【こ】らす。
解魄【かいはく】して自ら主ならず,痺肌【ひき】して坐し空しく瞠【みは】る。
扳援【はんえん】賤蹊【せんけい】絕【た】え,炫曜【げんよう】仙選【せんせん】更【かわ】る。


現代語訳と訳註
(本文)
#12
韓愈) 庖霜膾玄鯽,
孟郊) 浙玉炊香粳。朝饌已百態,
韓愈) 春醪又千名。哀匏蹙駛景,
孟郊) 冽唱凝余晶。解魄不自主,
韓愈) 痺肌坐空瞠。扳援賤蹊絕,
孟郊) 炫曜仙選更。
#12

*上記聯句を韻により変更して読む

庖霜膾玄鯽,浙玉炊香粳。
朝饌已百態,春醪又千名。
哀匏蹙駛景,冽唱凝余晶。
解魄不自主,痺肌坐空瞠。
扳援賤蹊絕,炫曜仙選更。


(下し文) #12
霜を庖【ほう】して玄鯽【げんせい】を膾【なます】にし,玉を浙【あら】って炊香粳【こうこう】を【かし】ぐ。
朝饌【ちょうせん】已に百態【ひゃくたい】,春醪【しゅんろう】又 千名。
哀匏【あいほう】は駛景【しけい】を蹙【お】い,冽唱【れつしょう】は余晶【よしょう】を凝【こ】らす。
解魄【かいはく】して自ら主ならず,痺肌【ひき】して坐し空しく瞠【みは】る。
扳援【はんえん】賤蹊【せんけい】絕【た】え,炫曜【げんよう】仙選【せんせん】更【かわ】る。


(現代語訳)
黒フナの肉片を霜柱のように細く包丁を入れ、それをなますにする、宝玉をすすぐように上等のうるち米をとぎ炊飯する。
朝食は並べられすでに百種類もあろうか、その上この春の一番搾りの千の銘柄の濁り酒がある。
かなしい笛の音が聞こえて消えるように光陰は矢のように過ぎ去る。清らかな歌声は名残の光と疑うばかりである。
快楽に心が解けるようなことには自ら主役になることはないし、ましてや座り続けて痺れを切らして見上げるということもない。
ひとを採り立てることはしても賤しいひとの進み通うみちを遮断することはない。まばゆいこととおもうのはえりぬきの仙女をさらに選び出すことであろうか。


(訳注) #12
庖霜膾玄鯽,浙玉炊香粳。
黒フナの肉片を霜柱のように細く包丁を入れ、それをなますにする、宝玉をすすぐように上等のうるち米をとぎ炊飯する。
庖霜 魚の肉片を霜柱のように細く包丁を入れること。・玄鯽 黒いふな。・香粳 上等のうるち米。


朝饌已百態,春醪又千名。
朝食は並べられすでに百種類もあろうか、その上この春の一番搾りの千の銘柄の濁り酒がある。
朝饌 朝食。・百態 百種類。・春醪 春つくった濁り酒。・千名 千の銘柄。


匏蹙駛景,冽唱凝余晶。
かなしい笛の音が聞こえて消えるように光陰は矢のように過ぎ去る。清らかな歌声は名残の光と疑うばかりである。
哀匏 かなしい笛のこえ。・ 追いすがる。・駛景 走る日かげ。経過する時間をさす。・冽唱 きよらかなうたごえ。・余晶 なごりのひかり。


解魄不自主,痺肌坐空瞠。
快楽に心が解けるようなことには自ら主役になることはないし、ましてや座り続けて痺れを切らして見上げるということもない。
・解 こころがとろける。


扳援賤蹊絕,炫曜仙選更。
ひとを採り立てることはしても賤しいひとの進み通うみちを遮断することはない。まばゆいこととおもうのはえりぬきの仙女をさらに選び出すことであろうか。
扳援 とりたてる。・賤蹊 賤しいひとの進み通うみち。・炫曜 まばゆいこと。・仙選 えりぬきの仙女。
 さらに選び出す。

細石であり、巨岩であり、それぞれみな乗せられているし、早瀬と淀はまた大声をあげ驚くのである。
淩花咀粉蕊,削縷穿珠櫻。
花でいえば花ビラを砕いたり、花粉の付いた花の蕊を 食べてしまうということである。そしてサトザクラの宝石の穴をあけ糸で繋いで首飾りにするようだ。
綺語洗晴雪,嬌辭哢雛鶯。
きらびやかな言葉は空を洗い晴れ雪を照らす。艶めかしい言葉は、ひなのうぐいすがさえずるようである。
酣歡雜弁珥,繁價流金瓊。
艶歌は男女の性交を詠い、歓喜もさいこうちょうになる。そうしておびただしい費用となり、黄金と美玉が消費されることになる。
菡萏寫江調,萎蕤綴藍瑛。
蓮の花は江南の採蓮歌として世に広がったし、そしてそれは、あまどころのようであり、藍田の水晶玉をぶらさげたようだ。

大海の珍しいものがないかと探し出し海では異なったものを摘み取るような句であり、縦横に押韻するということで大鯨が大暴れする様な詩歌が詠われる。
腸胃繞萬象,精神驅五兵。
胸中にある万物のすがたをむねにめぐらせる巧さがあり、こころに思うことは五種類の道具を駆使して存分にする。 
蜀雄李杜拔,嶽力雷車轟。
蜀の国のすぐれた人は李白・杜甫を抜くほどのものだ。そして、雲や雷を生み出す力を内蔵している大岩のように雷や戦車の車輪の轟をさせる句をつくる。
大句斡玄造,高言軋霄崢。
大いなる句は幽玄な造化をめぐらせ、高士の言葉は高い空をきしませてひろがる。
芒端轉寒燠,神助溢杯觥。
筆の穂先ひとつで暑さ、寒さ変幻自在であるし、神の助けを授けられた直観力は大盃にあふれるほどである。

あわれなるかな、昔はここでりっぱな詩歌を詠んで集ったものだが、花の香しさを出すように美しい句の歌を吟じることはうぐいすが鳴いているようなのだ。