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剝啄行
剝剝啄啄,有客至門。
こつこつ、とんとん、誰か客が来て戸を叩く。
我不出應,客去而嗔。
私はそれに門に出ないで応じないのである、すると客はぷんぷんしながら帰ってしまう。
從者語我,子胡為然。
すると従者が私に語りかけてくる。「あなたはどうしてそんなことをするのですか」と。
我不厭客,困於語言。
「私はその客がいやなのではない、(私が注目されてきて)何かと噂をたてられて、それでひどい目にあっているのだ。」
欲不出納,以堙其源。
そして、「だから客の出入りを避け、その源を断ちたいと思っているのだ。」
空堂幽幽,有秸有莞。
「奥座敷はひっそりと薄暗くして空けているし、私は座る藁の敷物があるし、客用のイ草によるむしろまで備えている。」
剝剝【はくはく】啄啄【たくたく】,客有りて門に至る。
我出でて應えず,客去りて嗔【いか】る。
從者 我に語る,子 胡為【なんすれ】ぞ然【しか】る。
我 客を厭【いと】わず,語言に困【くる】しめり。
出納せずして,以って其の源を堙【ふさ】がんと欲す。
空堂 幽幽とし,秸【かつ】有りて莞有る。
門以兩板,叢書於間。窅窅深塹,其墉甚完。
彼寧可隳,此不可幹。從者語我,嗟子誠難。
子雖雲爾,其口益蕃。我為子謀,有萬其全。
凡今之人,急名與官。子不引去,與為波瀾。
雖不開口,雖不開關。變化咀嚼,有鬼有神。
今去不勇,其如後艱。我謝再拜,汝無複雲。
往追不及,來不有年。
現代語訳と訳註
(本文) 剝啄行
剝剝啄啄,有客至門。我不出應,客去而嗔。
從者語我,子胡為然。我不厭客,困於語言。
欲不出納,以堙其源。空堂幽幽,有秸有莞。
(下し文) 剝啄行
剝剝【はくはく】啄啄【たくたく】,客有りて門に至る。
我出でて應えず,客去りて嗔【いか】る。
從者 我に語る,子 胡為【なんすれ】ぞ然【しか】る。
我 客を厭【いと】わず,語言に困【くる】しめり。
出納せずして,以って其の源を堙【ふさ】がんと欲す。
空堂 幽幽とし,秸【かつ】有りて莞有る。
(現代語訳)
こつこつ、とんとん、誰か客が来て戸を叩く。
私はそれに門に出ないで応じないのである、すると客はぷんぷんしながら帰ってしまう。
すると従者が私に語りかけてくる。「あなたはどうしてそんなことをするのですか」と。
「私はその客がいやなのではない、(私が注目されてきて)何かと噂をたてられて、それでひどい目にあっているのだ。」
そして、「だから客の出入りを避け、その源を断ちたいと思っているのだ。」
「奥座敷はひっそりと薄暗くして空けているし、私は座る藁の敷物があるし、客用のイ草によるむしろまで備えている。」
(訳注)
剝啄行
此の詩は架空の対話である。「従者」という架空人物と、韓愈とのものがたりである。都へもどってまた出世街道を歩きはじめた彼を、中傷が再び取り巻きだした。また儒者の韓愈は、とかくじ禍を招きやすいところがあったように見える。韓門の若い連中が相手ならそれでもすんだであろうが、官僚社会のなかでは容赦してもらえない。
韓愈はついに、地位を去ることまで考えたことを楽府にしたものである。
807年元和二年長安の作。この後、洛陽勤務となる。
剝剝啄啄,有客至門。
こつこつ、とんとん、誰か客が来て戸を叩く。
・剝剝 【はがす】. 表面に付着している物やおおっている物を、めくりとる。はぎとる。 【はぐ】. おおっているものを、めくるようにして取り除く。身につけているものを取り去る。脱がす。 奪い取る。取り上げる。
・啄啄 鳥が物をついばむ音。戸をたたく音
我不出應,客去而嗔。
私はそれに門に出ないで応じないのである、すると客はぷんぷんしながら帰ってしまう。
・出應 家門に出て対応しない。客は中にいるとわかっていてもどうしようもない。
・嗔 1 怒ること。いきどおること。2 仏語。三毒・十悪の一。自分の心に逆らうものを怒り恨むこと。
從者語我,子胡為然。
すると従者が私に語りかけてくる。「あなたはどうしてそんなことをするのですか」と。
我不厭客,困於語言。
「私はその客がいやなのではない、(私が注目されてきて)何かと噂をたてられて、それでひどい目にあっているのだ。」
欲不出納,以堙其源。
そして、「だから客の出入りを避け、その源を断ちたいと思っているのだ。」
空堂幽幽,有秸有莞。
「奥座敷はひっそりと薄暗くして空けているし、私は座る藁の敷物があるし、客用のイ草によるむしろまで備えている。」
・秸 脱穀した後の作物の茎秸秆同前.麦秸麦わら.豆秸豆がら.
・莞 1 植物の名。フトイ。また、イで織ったむしろ。「莞席」 2 にこやかに笑うさま。