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月蝕詩效玉川子作 韓愈 韓退之(韓愈)詩<96-#1>Ⅱ中唐詩514 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1622


月蝕詩效玉川子作(憲宗元和五年時為河南令)
玉川先生の「月蝕の詩」の作に傚ってつくる。
#1
元和庚寅鬥插子,月十四日三更中。
憲宗皇帝の元和は庚寅の年、北斗七星の柄の部分の「招揺」が子(ね)の方向真北をさした。810年11月14日の丑三時のことであった。
森森萬木夜僵立,寒氣屭奰頑無風。
万木がシンシンとした中倒れた木もすっくと立った夜の事である。寒気は極寒は天まで抜け、ひしひしとひろがる、そして頑固なまでに風も吹かないのである。
月形如白盤,完完上天東。
月はもう成長して白盤の形のようになっている。完全な満月が天の東方から上ってゆく。
忽然有物來啖之,不知是何蟲。
忽然として起こった万物があるのであるがよって来て これをパクリ食ったのである。この喰ったのは何の虫か認知できないのだ。
如何至神物,遭此狼狽凶。
どうしたことかというと段階を進んで神聖の物にいたっているのである。この事態は進みも退きもならない状態におちいるというわざわいに遭うということだ。
星如撒沙出,攢集爭強雄。
星々は砂まくように輝きはじめ出しゃばりはじめる。寄り集まっては勢力あらそいはどこやらの争いのようである。
#2
油燈不照席,是夕吐焰如長虹。
玉川子,涕泗下,中庭獨行。
念此日月者,為天之眼睛。
此猶不自保,吾道何由行。
嘗聞古老言,疑是蝦蟆精。
徑圓千里納女腹,何處養女百醜形。
#3
杷沙腳手鈍,誰使女解緣青冥。
黃帝有四目,帝舜重其明。
今天只兩目,何故許食使偏盲。
堯呼大水浸十日,不惜萬國赤子魚頭生。
女於此時若食日,雖食八九無嚵名。
#4
赤龍黑鳥燒口熱,翎鬣倒側相搪撐。
婪酣大肚遭一飽,饑腸徹死無由鳴。
後時食月罪當死,天羅磕匝何處逃汝刑。
玉川子立於庭而言曰:地行賤臣仝,再拜敢告上天公。
臣有一寸刃,可刳凶蟆腸。
無梯可上天,天階無由有臣蹤。
#5
寄箋東南風,天門西北祈風通。
丁甯附耳莫漏泄,薄命正值飛廉慵。
東方青色龍,牙角何呀呀。
從官百餘座,嚼啜煩官家。
月蝕汝不知,安用為龍窟天河。
赤鳥司南方,尾禿翅觰沙。
#6
月蝕於汝頭,汝口開呀呀。
蝦蟆掠汝兩吻過,忍學省事不以汝觜啄蝦蟆。
於菟蹲於西,旗旄衛毿?.
既從白帝祠,又食於蠟禮有加。
忍令月被惡物食,枉於汝口插齒牙。
#7
烏龜怯奸,怕寒縮頸,以殼自遮。
終令誇蛾抉汝出,卜師燒錐鑽灼滿板如星羅。
此外內外官,瑣細不足科。
臣請悉掃除,慎勿許語令啾嘩。
並光全耀歸我月,盲眼鏡淨無纖瑕。
弊蛙拘送主府官,帝箸下腹嘗其皤。
#8
依前使兔操杵臼,玉階桂樹閑婆娑。
姮娥還宮室,太陽有室家。
天雖高,耳屬地。
感臣赤心,使臣知意。雖無明言,潛喻厥旨。
有氣有形,皆吾赤子。雖忿大傷,忍殺孩稚。
還汝月明,安行於次。盡釋眾罪,以蛙磔死。


月蝕の詩 玉川子の作に傚ふ
#1
元和庚寅 斗 子を揺す、月の十四日三更の中。
森森たる寓木夜僅立し、寒気屁桑として頑にして夙無し。
月形 自盤の如く、完完として天東に上る。
忽然物有り凍って之を囁ふ、知らず走れ 何の轟ぞ。
如何なれば 至神の物の、此の狼狽の凶に遭ふや。
星は沙を撒けるが如くに出で、樺集して 強雄を学ふ。
#2
油燈席を照らさざるに、是の夕は該を吐くこと長虹の如し。
玉川子、涕泗下って中庭に獨行す。
念ふに 此の日月なる者は、天の眼晴たり。
此すら猶は自らを保たずんは、吾が道何に由ってか行はれむ。
嘗て古老の言を聞けり、疑ふらくは是れ蝦幕の精か と。
徑圓千里なるを女の腹に嗣め、何れの虞にか女が首醜の形を義はむ。
#3
把沙として脚手の鈍なるに、誰か女をして青冥に練るを解せしめしや。
黄帝は四日を有てり、帝舜は其の明を重ねたり。
今 天は 稗だ両目のみなるに、何が故に食ふを許して偏旨ならしむる。
堯は大水を呼びて 十日を浸し、高閲の赤子に魚一頭の生ずるをも惜まざりき。
女 此の時に於て若し日を食はば、八、九を食ふと経も囁なりとの名は無けむ。
#4
赤龍と黒鳥との口を焼くはかり熱きを、細も藍も倒倒して相塘摸し。
埜離せば大牡も一たび飽くに遭ひ、飢腸も死に徹るまで鳴くに由無けむ。
時に後れて月を食ふ 罪は死に憤る、天羅は薩而重り 何れの虞にか女の刑を逃れしめむ。
玉川子 庭に立ちて 言ひて日く、出石の餞臣なる仝、再拝して敢て上なる天公に告ぐ。
臣一寸の刀を有てり、凶蟆の腸を刳く可し。
梯の天に上る可き無く、天階 臣の躍有るに由無し。
#5
欄を東南風に寄せ。天門の西北 風の通ぜんことを所る
丁甯に耳に附し漏泄する莫れ,薄命なるかな正に飛廉の慵きに值えり。
東方は青色の龍、牙と角と 何ぞ冴呼たる。
徒官 有除塵、囁喧 官家を煩はすに。
月蝕を汝の知らずんは、安を用ってか龍と為って天河に窟する。
赤鳥は南方を司る、尾は禿するも 麹は鮪沙たり。
#6
月蝕 汝の頭に於てするに、汝 口開いて呼呼たるのみ。
蝦蟆 汝の両吻を掠めて過ぐるに、忍んで事を省するを学び 汝の紫を以て蝦毒を啄まず。
於菟ほ西に縛まり、旗施 衛って窮塗たり。
既に自帝に従って両られ、又 蛤に食んで 鮭の加ふる有るに。
忍んで月をして悪物に食はしめ、柾に汝の口に歯牙を括めり。
#7
烏亀は姦に怯え、寒さを伯れて頸を縮め、殻を以て自ら遮る。
終に李蛾をして女を決って出さしむるも、ト師の焼錐もて蹟灼して板に満たして星累の加からしめむのみ。
比の外の内外の官は、賓姫にして絆するに足らず。
臣請ふ 悉く掃除し、償みて語を許して琳辞せしむる勿らしめむ。
光を併せ 輝を全うして 我が月に辞し、盲眼 鏡浄らかにして 織暇も無からしむ。
弊蛙は王府の官に拘迭せん、帝の箸を腹に下して其の暗たるを嘗めたまへ。
#8
前の依く 兎滋して杵と日とを操らしめは、玉階の桂樹は閑にして婆娑たらむ。
姮娥は宮室に還り,太陽は室家有らむ。
天は高しと雉も、耳は地に属せり。
臣が赤心に感じ、臣をして意を知らしむ。
明言する無しと雖も、潜に灰の旨を喩せり。
気有り 形有り、皆 吾が赤子なり。
大いに傷つきしを怠ると雄も、窃椎を殺すに忍びむや。
女に月明を還し、次に安行せしめむ。
轟く衆罪を辞し、蛙を以て礫死せしめむと。


『月蝕詩效玉川子作』 韓愈 現代語訳と訳註
(本文)
月蝕詩效玉川子作(憲宗元和五年時為河南令)
#1
元和庚寅鬥插子,月十四日三更中。
森森萬木夜僵立,寒氣屭奰頑無風。
月形如白盤,完完上天東。
忽然有物來啖之,不知是何蟲。
如何至神物,遭此狼狽凶。
星如撒沙出,攢集爭強雄。


(下し文)
月蝕の詩 玉川子の作に傚ふ
#1
元和庚寅 斗 子を揺す、月の十四日三更の中。
森森たる寓木夜僅立し、寒気屁桑として頑にして夙無し。
月形 自盤の如く、完完として天東に上る。
忽然物有り凍って之を囁ふ、知らず走れ 何の轟ぞ。
如何なれば 至神の物の、此の狼狽の凶に遭ふや。
星は沙を撒けるが如くに出で、樺集して 強雄を学ふ。


(現代語訳)
玉川先生の「月蝕の詩」の作に傚ってつくる。
憲宗皇帝の元和は庚寅の年、北斗七星の柄の部分の「招揺」が子(ね)の方向真北をさした。810年11月14日の丑三時のことであった。
万木がシンシンとした中倒れた木もすっくと立った夜の事である。寒気は極寒は天まで抜け、ひしひしとひろがる、そして頑固なまでに風も吹かないのである。
月はもう成長して白盤の形のようになっている。完全な満月が天の東方から上ってゆく。
忽然として起こった万物があるのであるがよって来て これをパクリ食ったのである。この喰ったのは何の虫か認知できないのだ。
どうしたことかというと段階を進んで神聖の物にいたっているのである。この事態は進みも退きもならない状態におちいるというわざわいに遭うということだ。
星々は砂まくように輝きはじめ出しゃばりはじめる。寄り集まっては勢力あらそいはどこやらの争いのようである。


(訳注) #1
月蝕詩效玉川子作(憲宗元和五年時為河南令)
玉川先生の「月蝕の詩」の作に傚ってつくる。
韓愈の友人の慮全が長篇の「月蝕詩」を作った。奇抜な作品だが、冗漫だったので、そのほぼ半分を削って修飾したのが、これである。效は模倣すること。玉川子は慮全の号である。この詩の場合は添削とか刑削とかの文字を使ったほうが実際には即するが、原作者産全への遠慮から「效」の文字を用いたのである。虞全は済源の人。博学で詩にたくみであり、茶を愛して、有名な「茶歌」がある.文学史家は、韓忽り弟子のうちにひっくるめてtまぅけれども、のちに引Y「盧仝に寄す」 る詩からもても、友人とちるべきであろう。洛陽に近い少室山に隈思していたが、「甘露の変」とよはれる事件にまきこまれ、おのれにかかわりのない罪をかぶって殺された。



元和庚寅鬥插子,月十四日三更中。
憲宗皇帝の元和は庚寅の年、北斗七星の柄の部分の「招揺」が子(ね)の方向真北をさした。810年11月14日の丑三時のことであった。
元和庚寅 810年11月14日
元和五年庚寅の歳、十一月十四日に月蝕があった。
・鬥插子 斗は北斗星。子は十二支の最初のもので、ここでは方角にあてはめていうので、北にあたる。北斗星が北をさすのほ仲冬の十一月で『淮南子』時則訓に「仲冬の月には、招揺、子を指す」という。招揺は北斗の第七星である。第一星は天枢、第二星は旋、第三星は、第四星は権、第五星は玉衡、第六星は開陽、第七星は招揺(揺光)と呼ばれた。第七星が柄の端っこの部分である。
・三更 いまの時間でいうと、午後八時から十時までが初更、十時から十二時までが二更、十二時から午前二時までが三更。丑三つ時にあたる。



森森萬木夜僵立,寒氣屭奰頑無風。
万木がシンシンとした中倒れた木もすっくと立った夜の事である。寒気は極寒は天まで抜け、ひしひしとひろがる、そして頑固なまでに風も吹かないのである。
・森森 木のしげるさま。菅の滞岳の「懐旧拭」 に「相は森森として以て相棒すしの語がみえる。ここでは夜中のシソとしているさまをもあわせて表現しているのである。
僵立 たおれているのが、立ちあがる。『漢書』の五行志に「哀帝の建平三年、零陵に樹あって地に偏る。三月、樹、つひに自らもとの処に立つ」とみえる。
屭奰 さかんで大いなるさま。酔わずに怒るさま、ともいう。この二字は奰屭が正しくて、つとめる、力を出す、というほどの意だ、とする説もある。



月形如白盤,完完上天東。
月はもう成長して白盤の形のようになっている。完全な満月が天の東方から上ってゆく。
・白盤 白い玉でつくった皿。李白の詩に「少時、月を識らず。呼びて白玉盤となす」という有名な句がある。
完完 完全無欠のかたち。見兎とする本があり、それが正しいとする説もあるが、完完で通らないことはない。



忽然有物來啖之,不知是何蟲。
忽然として起こった万物があるのであるがよって来て これをパクリ食うのである。この喰ったのは何の虫か認知できないのだ。
・忽然有物來啖之 突然、月がかけはじめたこと、何物がやって来てこれを食いはじめたのかといっているのである。



如何至神物,遭此狼狽凶。
どうしたことかというと段階を進んで神聖の物にいたっているのである。この事態は進みも退きもならない状態におちいるというわざわいに遭うということだ。
至神物 至って神聖な物。月をさす。『易経』に「天下の至神に非ずんは、孰れか能く此に与らむや」の語がみえる。
狼狽 進みも退きもならない状態におちいること。



星如撒沙出,攢集爭強雄。
星々は砂まくように輝きはじめ出しゃばりはじめる。寄り集まっては勢力あらそいはどこやらの争いのようである。
・賛集争強雄 月がかくれると星のかがやきがはっきりして、いままで見えなかった小さな星までが見えるから、一度にどっと攢集、よりあつまるように感ぜられるのを、こういっている。この詩は、月蝕にかこつけて、当時の政界を諷刺したもので、星についても、一々の人物をあてることも韓愈グループの中にはあったことだろう。